班長のてびき

7.班のキャンピング

 少年たちはハイキングが好きである。しかし彼らがスカウトになったその日から、いちばん待ちこがれるのはキャンプである。

 キャンプ----それはあらゆる純真な少年たちにとって、スリルに満ちた言葉である。それは、自由、楽しみ、そして冒険を意味する。

 班長として君ができる最大の仕事のひとつは、君の班や各班員をりっぱに訓練してキャンプの上手な班に仕立て上げることである。それには時間がかかる。また、ねばり強い根気を要する。しかし、それは実現できるのだ。君が班員たちをりっぱなハイカーに仕立て上げたその日に、すでにその仕事は相当に進んでいるのである。

 キャンピングはハイキングの一歩進んだものに過ぎない。それはハイキングよりも多くの計画と用具を必要とする。野営という点で手は込むが、だいたいの計画はそうは変わらない。実際、班のハイキングはすべて次のいっそう大きい冒険活動、つまり班のキャンピングに備える、いわば予備訓練なのだ。ハイキングでは自分のことは自分でやる。すなわち独立独行の心構えを学びとり、同時に火のたき方、炊事、おのの使い方その他のキャンプ技術をおぼえる。問題はこれらの技術を1泊の遠征で使用することである。はじめは隊全体と共に、後では班だけで遠征に出かけるのである。

 班のキャンプを始める前に、考えなければならない事柄がある。

 第1に、必要な用具を持たなければならないということ。

 第2には、君は班長として必要な訓練を受けていなければならないということである。


●用具について

 経験を積んだキャンパーの場合、用具は非常に少なくてすむ。彼は大自然の中に入りこんで、自然の資材を使って仮小屋を作り、鍋、釜なしに食物を調理して、一夜を安楽に過ごすことができる。

 この種の冒険に、初心者の一群を連れて行くのは、あまりよい考えではない。彼らには、ある程度の用具が必要である。

 つまり身の回り品、炊事用具、テントなどである。これらの用具の大部分は家から持ってくることができる。しかしテントは難問題である。

 ある新任の班長が班員のひとりから「ぼくたちはいつキャンプに行くのですか?」という質問を受けた。「ぼくたちの力で隊のテントを買う資金ができた日に行くさ」と彼は答えた。彼の答えは正しい。

 君は、他の班が作ったものか、または他の班に割り当てられたテントを借りることができるかもしれない。あるいはまた、君の隊が少しは持っているかもしれない。しかし君たちが自分でテントを作れば、班全員が誇るに足る秘蔵品になるだろう。

 キャンプの準備は早日に始める必要がある。班の結成と同時にそれを始めれば、班員がキャンプに出られるようになる日には、用具がそろっていることになるだろう。

 もし君の隊がテントの資金作りをやっているなら、班員各自が自分たちの仕事や班のハンドクラフトその他資金作りになる方法で、自分たちの分担を果たすように激励する。


●キャンプ訓諌

 班全体がキャンプ用具を作り、または購入しようとしている間に、あるいはまた後には班のものとなるテントの資金獲得に隊と協力している間に、キャンプのための必要な訓練を受けるために、できるだけのことをしなければならない。

 隊長が君に君の班のキャンプを許可する前に、君が到達していなければならない、ある種の標準と、持ち合わせていなければならない、最低限のスカウティングの経験とがある。
 それは次のとおりである。
  1. 1級章を獲得していること。
  2. 隊の1泊キャンプに最小限2回、グリーンバーの1泊キャンプに1回参加した経験があること。
  3. 隊長の満足のいくような、班のデイハイクを少なくとも5回指揮したことがあること。

そして、さらにそのうえに、1泊キャンプの前に整えておかなければならないこと。
  1. 班員たちの両親の許可書をとらねばならない。
  2. キャンプ地域の事情と、キャンプ場所について、かなり詳しいこと。
  3. キャンプ地の所有者から、設営し、火を起こして炊事する許可を得ること。
  4. 事前に隊長の承認を得ること。
注意:もし君が上記の条件を満たしていなかったら、班員の父親または他の大人が、必ず班に同行しなければならない。

 上記のリストと、ハイキングの指導に必要な経験を述べたリストを比較してみると、あるものは同じであり、またあるものはハイキングの場合よりもむずかしいことがわかるだろう。

 初期の班ハイクの場合と同じように、君の隊長または副長が同行して、君の班の最初のキャンピングに力を貸すことだろう。君は、はじめのうち大人がついていると大助かりすることを知るだろう。仮に何か困難なことが起こったとしても、彼の助言によって切り抜けることができるのだ。


●キャンプの種類

 班キャンプの詳しい説明に入る前に、キャンプの種類に目を通すことにしよう。

 1泊キャンプは、ハイキングとキャンピングをいっしょにしたものである。ある適当なキャンプサイトまでハイクしていき、テントを張り、食事を作り、予定の活動をし、1晩か2晩をキャンパスの下で寝て、上首尾のうちに町にハイクして帰る。

 キャンポリーは、君の班のキャンプ技術が試されるキャンピングである。キャンポリーは、団、地区、または連盟単位で行われる。

 長期キャンプは、1ヶ所で1週間またはそれ以上過ごすキャンピングである。夏季キャンプがその代表的な例である。完全な設営をし、あらゆる改善をしながら、キャンプ活動のプログラムを毎日実施する。

 旅行キャンプは移動キャンプである。毎朝あるいは1日おきに、朝キャンプを撤収して新しいキャンプサイトヘ移動する。ここで再び設営し、1日か2日間、ほんとうのキャンプ生活を送り、再び新しい地点に移動していく。この種のキャンピングがいちばんむずかしい。班員もリーダーも十分訓練を積んでいなければならない。旅行キャンプは、徒歩でも、自転車でも、船あるいはカヌーでやってもよい。


●1泊キャンプ

 キャンプを成功のうちに終わらせるには、その全体の3分の1を計画と準備に費やすことだ。この計画と準備は班集会で行い、あらゆる点にわたって、細かく慎重な検討が加えられる。

 そこでわれわれは、再びとっておきの古い公式、つまり何を、どこで、いつ、どのようにして----を持ち出すことになるわけだ。

(何を)
 これを決めるのは簡単である。答えは、戸外に住み、夜を野外で過ごす“キャンピング’である。信号法、追跡その他のスカウト技能が、日中のプログラムの一部になる。しかしこれらのものは、二次的の重要性しかない。キャンピングは、何よりもまず訓練である。

(どこで)
 もちろん、理想的なキャンプサイトである。それを調べる簡単な方法がある。

 しゃへい物、水、薪、この3つをまず第1に考えなければならない。もろろん、選択にあたって考慮しなければならない事柄は、他にもある。

(理想的なキャンプサイト)
 理想的なキャンプサイトとは、かなり広い空地で、仮に付近の低地から朝霧がわき上がることがあっても、視界をさえぎられないような高台になっているところである。平坦であってもよいが、自然に排水できるように軽いこう配がつき、砂質の土で草におおわれていればなおよい。粘土質のところは避けなければならない。その上に生えている草はしだきやすく、雨が降るとどろんこになるからである。また砂地も避けなければならない。砂がところきらわず入ってきて、食物や衣服をだめにしてしまうからである。そして、草が密生しているところも避けなければならない。それは、地面が湿っていることと、蚊がたくさんいることを示しているからである。

 風からよくさえぎられたところが理想的である。西と北側に木があり、午前中はキャンプに日が当たるような場所を選ぶこと。樹木の真下にテントを張ってはならない。木は雨をよけてくれると思うだろうが、雨が止んだ後もずっとしずくが落ちて、テントが乾くまで相当に時間がかかる。木の下にテントを張る場合のもうひとつの不利な点は、枯れ枝が不意にテントの上に落ちてくるかもしれないことである。

 水はそう遠くないところになければならない。飲み水ばかりでなく、できれば水浴用のものまではほしい。水については安全策一を心がけること。ハイキングの章に書いてある飲料水の項を読み返すこと。水浴のためには、よく場所を調べること。ここでもまた、安全第一である。

 燃料とキャンプ地の整備に使う木は、十分になければならない。薪を遠くから運ばなければならないようだったら、理想的なキャンプサイトとはいえない。

 キャンプサイトについてはこれくらいにして、次にその環境に移ろう。

 キャンプ地は、四方が美しく、しかも君たちの自由な楽しみをじゃまされることのないような、人里離れたところを選ぶべきである。ひっきりなしに訪問客があるようでは、ほんとうのキャンピングなど望むべきものもない。また、君のキャンプ地は、往復に多くの時間と費用をかけなくてすむように、君の住んでいる町の近くに探すことだ。

(どうして場所を見つけるか?)
 理想的な場所を探すことは、なかなかむずかしいことである。そんなものは、われわれの想像の産物でしかないと主張する人もいる。しかし君は探しさえすればそれを発見でき、それを使用する許可を得ることができるはずだ。ひょっとすると、何から何まで満足という場所は見つからないかもしれない。そのときは、できるだけ理想に近い場所を選ぶことである。

 君が班のキャンプに出かけるようになるころまでには、少なくとも6ケ所くらいのキャンプサイト候補地は、見つけてあるはずである。班のハイキングのとき、君はそれを見つけたはずだし、君のハイク係が、その場所やその他を注意深く記録しておいたはずである。


●いつ?

 それは班員たちの都合次第である。土曜日の夜から日曜日の夕方まで、土曜日はできるだけ早く出発することにして出かけてもよい。ただこの場合困ることは、明るいうちにキャンプ地まで到着できないことであり、班員がキャンプに慣れていないときは特に困る。このようなときには、2〜3名だけ先に出発して夕方までにキャンプ地に到着し、テントを張り、かまどを作り、夜皆が到着するまでには、万端の準備を整えておくようにすればよい。

 いずれにしても、出発の時間と帰る時間をきちんと決めて、それを守ることである。何でもきちんとプログラムを守ることは、両親にスカウティンクを信頼させるひとつの要件である。


●どのようにして?

 班キャンプの計画は、班集会でやる。

 主な点は自分たちで決めることになるが、こまごました事柄については、第4章に述べた班組織を参考にしたほうが運びやすい。事実キャンプの準備をする場合、君の班の組織はもっとも厳しいテストを受けるわけであり、そこからその組織が実際うまく働くかどうかを知る手がかりをつかめるのだ。

 それで、どういうことをやらなければならないか見てみよう。

 キャンプの前にやらなければならない、4つのことがある。
  1. 両親から承諾書をもらうこと。
  2. 用具を整備すること。
  3. 輸送費と食糧費を集めること。
  4. 食糧を購入すること。

 キャンプ中に、次の2つの事実があれば、そのキャンピングは成功まちがいない。
  1. 正しい方法で張ったテントでよく寝る。
  2. よくできた食事を十分に食べる。

(班をキャンプのために組織する)
 今、ある班の組織を使って、もっとも効果的にこの仕事をやる方法を考えてみよう。もしまだ組織ができていなかったら、さっそく組織作りをする理由になる。

 第4章に述べた班の組織によると、班員を次のように分けたはずである。
班長次長会計係記録係
備品係ハイク係食糧係演技係

 今やることは、班員たちに各自の仕事をいそがしくやらせることである。

 最初にやるべきことを最初にやるにあたって、すなわちキャンプの前にやらなければならない4つの事柄をやるにあたっては、次のように仕事を分担することになるだろう。
1.両親の承諾
班長としての君が、班員たち全部の両親といちばん密接につながっている。
したがって、班員たちの両親から承諾書をもらう役目は、当然君がやるべきだ。そのときに、班員たちが持っていく用具について、両親に説明することができる。記録係の手を借りること。書類を保管するのは彼である。だから承諾書をもらったら彼に渡すこと。
2.班の用具
班の備品係は、すでにその仕事をやっている。演技係に手助けさせる。
3.お金
班の会計係がこの世話をする。しかしお金を集める前に、経費はどのくらいかを知らなければならない。輸送費についてはハイク係と相談し、食糧費については食糧係と相談する。ハイク係といっしょにして2人でお金のことを相談させればなおよい。
4.食糧
これは今さらいうまでもなく、食糧係の仕事である。キャンプが成功するかどうかは、食糧にかかっているところが大きいので、彼はできるだけ最上の援助を必要とする。次長に彼の手伝いをさせる。彼らはその仕事を満足のいくように取り扱うことができるはずである。食糧品購入代金を彼らに渡す会計係と、緊密に協力して働かなければならない。

 キャンプの前にやらなければならないことのための組織作りについては、このくらいにして、今度はその組織がキャンプ中にやる必要のある事柄をやる上でも、うまく役立つかどうかを見てみよう。それは見事に役立つのだ。

1と2はみんなをキャンプに来させて、そこにいる間愉快に過ごさせることに関するものだということがわかる。3と4は、すでに密接な関係がある。つまり考えたり仕事をしたりすることには、お金が関係してくるのである。

 全部のことを総合すると、次のようになる。
Aグループ・・・以後「設営班」と呼ぶ。
キャンプ前に 同意…班長、記録係
用具…備品係、演技係
キャンプ中に 設営…テントを張り、キャンプサイトを住めるようにする。
Bグループ…以後「炊事班」と呼ぶ
キャンプ前に お金と旅行・‥会計係、ハイク係
食糧…食糧係、次長
キャンプ中に 炊事・‥かまどを作り、薪を集め、炊事をする

 すべての準備は完了しただろうか。では、各人にそれぞれの任務にとりかからせよう。

 その任務のうちのあるもの、たとえば両親の同意を得たり、お金を集めたり、用具をそろえたりすることは、前もってすることができる。しかし、食糧品の購入や旅行のための切符の購入(予約を要しないもの)は、キャンプ開始直前に行う。

(両親の同意)
 班員たちに、キャンプに行ってもよいという両親の署名入りの許可書を、キャンプ直前の班集会に持参するように言う。この許可書は、班のハイキング(第6章)のときに必要とされるものと似たようなものであるが、外泊許可も含めるようにしなければならない。
 記録係にこれらの許可書を集めさせ、書類つづりにとじさせる。

(キャンプの費用)
 必要な金額は会計係、ハイク係、食種係それに次長の相談で計算して出す。彼らは買い入れる必要があるものを決め、運賃を計算し、合計額を出して、これを班員の頭割りにする。もちろん彼らは割当て額ができるだけ少なくてすむように最善をつくす。

 各班員がキャンプのために支出する費用は、前もって時間的に十分余裕をおいて発表する。彼らはそれをキャンプの前の集会に持参し、会計係に渡しておく。そうすれば会計係は現金がそろい、必要なものは何でも購入することができる。


●キャンプ用具

 キャンプ用具は、慎重に考慮しなければならない。ハイクしてキャンプすることを計画する場合には、特にそうである。

 テント、炊事用具、食糧および戸外で1晩を過ごすための個人装備----それらはすべて実に重いものである! 班装備のコツは、ちょうど十分なだけ持っていくということにあり、----1個たりとも余分なものを持っていかないということにあるのだ!

 次に、個人と班装備品で検査に合格した用具の表をあげる。実際にやってみると、この表にあげているものの中で、君のキャンプではいらないものが、いくらかあるかもしれない。そんな用具は、次回からは家に置いてくることだ。一方では君の住んでいる地方の天候の状態から、そのリストにある種の用具をつけ加える必要のあることがわかるかもしれない。そのときはそういう用具をつけ加える。しかも忘れてはならないことは、長時間持ち運ぶときは、100グラムの軽い物でも1キログラムの重さに重たく感ずるということである。

 このような用具を、たった1日で、全部そろえることはできることではない。1ヶ月でも無理だろう。もし君たちが用具を入手することを目指して努力すれば、つまり各班員がそのために働き、貯蓄することによって、徐々に用具をそろえることができるのだ。それは君たち仲間の者が努力を傾ける目標となり、その過程で班精神と団結心を養うのに役立つ。

 自分たちの班備品を買うために、できるだけ君自身多くのお金を得るようにし、そして自分で作れるものはできるだけ自分で作る。必要な実際的な設計図は、第9章班の工作のところであげる。

 君が個人装備品を作ったり買ったりするときは、班員にも同じものを買うようにすすめることを忘れないことだ。班員の装具を一様にすれば、単に便利で、体裁がいいだけでなく、班の伝統を築くうえにも効果があり、この意味でたいへん望ましいことである。班でパックやそのつめ方をそろえることは、世間一般にいうように、「ぼくはオオカミ班員である」と宣言しているのと同じで、君の班の名前が何であろうと、その班に所属していることを世間に知らせることになるのだ。


●個人装備品

 まずはじめに1泊キャンプのための用具の参考例をあげておこう。ここではスカウトの個人用具を列記してある。このほか各班員は、後で述べる「班」用具のうち自分に割り当てられた分も運ぶことになる。

 
個人装備品
基本 完全な制版ひとそろい、 毛布または寝袋、 マットレス、 防水布、 リュックサック、ポンチョまたはレインコート
衣類袋 下着の着替え、パジャマ、セーターまたはジャンバー、水泳パンツ、予備の靴下、ハンカチ
食器袋 皿、ナイフ、スプーン、スープボウル、フォーク、ティースプーン、コップ
洗面袋 容器に入った石験、容器に入った歯フラシ、ねり歯みがきまたは粉、金属製の鏡、くし、タオル
靴袋 予備靴または野営靴
次のものの入った修理袋 針、糸、安全ピン、ボタン
ザックのポケット
制服のポケットなど
携帯用救急箱または滅菌包帯、ノート、防水容器に入れたマッチ、鉛筆、強い細ひもまたは細い針金 スカウトナイフ
その他希望により持つもの スカウト工作用品、楽器、ハンドブック類、双眼鏡、毛布ピン、方位コンパス、地図、カメラとフィルム、水筒、おの・なた
 

(キャンプ用ザック)
 すべてのザックがキャンピングに役立つとは限らない。ある一定の条件があって、君のザックはその条件を満たしていなければならない。

 何よりもまずそれは、君の装備品を入れるのに十分な大きさのものでなければならない。小さなザックはキャンピングには役に立たない。前もってその適当なサイズを決めるもっとも簡単な方法は、ザックに詰めるべきすべてのキャンプ用具を集め、それからそれをザックに詰めるのと同じように整える。ひもでそれらを全部縛り、それから容積を測る。ザックの適当なサイズがわかったら、買う必要のある班員全員に、同じ種類のものを買うように薦める。

 しかしサイズがすべてではない。その他にも、ザックのよしあしを検査する条件がある。

 それは軽くなければならないということだ。残りの装備品の重さだけでもたいへんなのだから、当然ザックがあまりにも重すぎることは好ましくないわけである。さらに、それは丈夫で防水性のものでなければならない。材料はもっとも激しい暴風雨でも防げるほど厚手のもので、十分に細かく織られているものでなければならない。

 もうひとつの条件が加わると、それはよいザックである。それは背負い心地がよいということである。歩くときにあっちこっちにすれるザックは、あまり上等ではない。また背中の上部にかかって、猫背にさせるものもいけない。負いひものためにザックの重みはいくぶん肩にかかってくるが、お尻の後ろに余計にかかるようにザックをその低さまで下げることが必要である。ザックはお尻と肩だけに触れるようにし、他の部分には触れないようにする。負いひもの幅が十分広いものであることもまた確かめる。そうでないと、肩に食い込むだろうから。

 要約:ザックは(1)十分なサイズのもので (2)軽く (3)丈夫で (4)防水のもので (5)肩とお尻でよく平均がとれて背負えるものでなければならない。

 需品部で扱っているリュックサックや各種のザツク類は、これらの条件に沿っている。

 班のキャンピングのためのザックを選ぶことは簡単なことではない。人によって好きずきがあり、その好みを満足させる前に、少々試してみなければならないかもしれない。自分で自分のザックを作りたいときは、第9章に掲げる説明を見るとよい。

(ザックを詰める----パッキング)
 ザックの詰め方をのみこむのは簡単にはいかないように思えるものだ。時々人がやっているのを見ていると、であるが。しかし、他の場合と同じく、そのコツさえわかってしまえば、後はさっさとできるようになる。

 正しい詰め方の法則を次に掲げよう。
  1. 背中にあたるザックの部分には、柔らかい当てものを入れる。
  2. 品物は各々それを入れる一定の場所を決めておく。
  3. 同じようなものはひとまとめにしておく。 (例えば、フォーク、ナイフ、スプーン、皿、あるいは石験、手ぬぐい、タオルなどのように)
  4. 小さい品物をばらばらにしてザックの中に入れてはならない。
  5. 雨具類は、他の品物をぬらすことなく簡単に取り出せるようにして入れる。
  6. ザックを動かしたときに、がたがた音がしないようにする。

 これらの問題のすべては、「袋の中の袋」式を用いることで解決することができる。この方式はザックをひとつの大きな袋と考え、その中に様々な品物を詰めたいくつかの小さい袋をぴったり詰めることである。

 これらの小さい袋は薄い木綿地なので、ほとんど場所をとらない。班員たちはそれらを容易に作ることができる。(第9章で作り方を示す)またはスカウトの母親たちに作ってもらう。そしてそれらは費用が安い。というのは、不要な布切れを用いることができるからである。袋詰め方式は多くの利点を持っている。

 ます第1に、ひとつの大きな場所に何もかもぴったり詰め込むよりは、小さい袋に別々にして詰めることのほうが、はるかに簡単である。

 第2に、例えば洗面用具を取り出すのに、石鹸をとるために片方に手をつっこみ、歯ブラシを取るためにもう一方に手をつっこむというふうにやる必要がない。やる必要のあるただひとつのことは、それらの品物のすべてが入っている洗面袋を取り出すことだけである。

 第3に、そのザックはいつも完全に整理されていることになる。

(パッキングの順序)
 パッキングの際には、まずそれぞれの品物を、それを入れるべき袋に入れ、それからザックの正面を起こして床かテーブルの上に置く。毛布と防水布を適当にたたみ、背中に当たる側にできるだけ平たくして入れる。毛布の上から衣類袋を入れる。食器袋を衣類袋の上に置き、それから靴袋を一方の側に、修繕袋と洗面袋をもう−方の側に立てて置く。コップはザックの上のほうに置く。ポンチョまたはレインコートを平たく巻いて、いちばん上の、ふたのすぐ下に詰める。これでザックは、個人装備品に関する限り、準備完了である。

 班の準備の分担品といっしょに詰める場合は、詰め方をちょっと変えなければならない。多くの班用品を中に入れなければならないので、毛布は馬蹄形にして、ザックの外側につけて持つようにする。毛布はきつく巻いて、防水布で包む。それは、ザックのどこにくくりつける場合でも、一方の例の下の端から始まり、上部を回ってもう一方の例の下の端にくるような長さに巻く。ひもかロープでそれをくくりつける。


●班の装備品

 われわれはすでに、班員を設営班と炊事班に分けたので、班の装備品もこれに応じて2つに分けよう。「設営班」のものの中には、テントとテントを張る資材を含める。「炊事班」のものの中には、班の炊事に関係のある物品を含める。

(テント)
 テントは主要な問題であることがわかる。

 君は1泊用として十分な、そして1〜2週間の夏季キャンプ用としても十分なテントが欲しいと思うだろう。そんな種類のテントは、次のような共通点を持っている。すなわち、かなり軽い材料で、張ったときの広さがキャンパーに対して十分であり、普通の少年が、かがまずに立つことができるだけの十分な高さがある。

 一般に、2人用テントがもっとも人気がある。いわゆるエクスプローラーテント(屋根型テントの一種)がよい。軽重のウォールテント(家型)もそうである。小型テントは1泊用に向いており、ウォールをつけた場合だけ、長期のキャンピングに向く。

 これらのテント----そして多くのその他のテント----は市飯されている。しかし君は自分で自分のものを作りたいと思うかもしれない。そのときは、第9章の班工作に掲げるデザインと作り方を参考にするとよい。

(その他の設営用具)
 各自の寝床の下に敷くグランドシートが必要である。それは布製でも、ビニール製でも、プラスチック製でもよい。キャンパー各自が自分用のものを持ってもよいし、テントの床全部こ敷ける大きさのものを手に入れてもよい。
杭と支柱
ある地方では、それらを持っていく必要はない。----現地で手に入れることができる。
キャンプサイトでそれらを手に入れることができるかどうか、はっきりわからないときは準備して持っていく。アルミ製の杭は、キャンプ用品を置いている店で売っている。----それらは非常に軽いが、値段が高くつく。支柱は完全な長さのものを用意し、スカウト杖あるいは旗ざおとして持って行ってもよい。組み立て式の支柱ならばなおよい。テントにくるんで入れることができる長さのものを準備する。
スコップとおの
完全な班装備品の中には、スコップ2丁(みぞ掘りショベル)と、おの(またはなた)2丁が含まれる。2つの係がそれぞれ1丁ずつ取る。「設営班」は座り場所を作り、便所と汚水穴を掘り、そしてテントの周囲にみぞを掘るためにそのスコップを必要とし、そして、テントの支柱や杭を作ってテントを立て、キャンプのこまごました小物を作るために、そのおのを必要とする。「炊事班」は、かまどを作るためにスコップを必要とし、それから自在かぎを作ったり、薪を切るために、おのを必要とする。
需品部には、それらの目的に合ったおのやなたと、携帯用ショベルが同意されている。
炊具
折りたたみ式のランタンは効果的である。あるいは君自身で空き缶を利用して作ってもよい。 掃除袋と修繕袋については説明を要しない。救急キット2つ 各係にひとつずつ、需品にあるベルトにつける形のものならちょうどよい。

(炊事係の装備品)
炊飯セット
班の炊事用として、いくつかの深鍋と、浅鍋が必要である。いちばんよい方法は、需品部こあるボーイスカウト用炊飯セットを買うことである。これには、2、4、6リットル用の深鍋3つ(釣り手、ふた、おたま付)と、ふた兼用の浅鍋を兼ねたフライパン(取っ手付)が含まれている。その他に、4つ組食器(大、小)などもある。
このセットを買う資金がたまるまでは、家から借りた深鍋や浅鍋で間に合わせる。2つの浅鍋と、10号缶詰の空き缶に針金で柄をつけて作った、手製の深鍋でもどうにかしのげるものだ。
布バケツ
これは、水をくむためにだけ用いるものである。適当な作り方のものなら、火の近くに置いておくことができ、そうすれば炊事の目的のために、いつも炊事係の手の届くところにあるということになる。
洗い用の水は、2つの布製洗いおけ(需品部では布洗面器として売っている)に入れて、彼のそばに置いておかなければならない。そのひとつは石鹸を使い、もうひとつにはすすぎ水を入れておくのである。
調理用品袋
これについては説明を要しない。ほこりよけの食種品袋と防水、防脂の食品袋の用途は明らかである。(それらの作り方は第9章にある)
バターやマーマレード、ジャムの容器としては、広口のビンで、ねじふたのついたものを用意する。(ふたが密閉できるプラスチック容器でもよい)

(班の食糧計画)
 「いつ食事をするか?」これはキャンプで1日に数回ぶつかる重要な質問である。

 一方、「何を食べるか?」という質問には、旅行を始める前にすでに回答を出していなければならない。

 食糧係の務めが重要なのはこのためである。

 おいしく食べてよく眠るということは、何にもましてキャンプを成功させる2つの事柄である。睡眠については考えなくても、多かれ少なかれうまくいくのであるが、食事はそうはいかない。それについては前もって注意深く計画を立てなければならないのである。つまリメニューを作り、食糧品目を決める必要がある。

 手の込んだ料理は班キャンプには向かない。ぜいたくではなくても栄養がバランスよくとれ、おいしく食べられる料理なら、より満足すべきものであるだけでなく、準備にもまた、あまり手間がかからない。バランスのとれた食事とは、体を作り、エネルギーを生み出し、健康を維持するために必要であることがわかっている成分を含んでいるものである。正確にバランスをとることは、1泊のキャンプでは決してそんなに重要な問題ではないが、長期のキャンプ生活の場合は重要である。

 もっともよい方法は、国も推薦している「4つの基本食品群」に基づいて、班のメニューを作ることである。これに勝る方法はない!

(基本食品群)
 この食品群では、日本人の食生活に一般的に不足がちな栄養素を補って、完全な食事にするための工夫がほどこされており、この基本食品の組み合わせによれば、栄養所要量に相当するメニューを簡単に作れる分量が決められている。日本食品標準成分表もできれば参考にしながら、よいメニューを作ることを大いに期待したい。

(メニューを作る)
 メニューを作る際には、次の点を念頭におくようにする。
  1. メニューは、すべての基本食品を適量に含んでいるものでなければならない。
  2. それらは、薪の火で、しろうとの料理人でも、簡単に調理できるものでなければならない。
  3. それらは、料理にあまり時間がかかりすぎるものであってはならない。適当な時間は、朝食30分、昼食45分、夕食90分以内であるが、特別な場合は別である。
  4. それらは、手ごろな値段のものでなければならない。

 1日の主要な食事は、晩に出すのがよい。夕食は食物をもっとも消化しやすい時間である。それには、肉か魚と野菜、適当なデザートと飲み物が含まれるようにする。

 朝食は量も多く考える必要がある。それは、夕食から朝食の時間まで10数時間あることが多いからだ。だから、主食の他に果物、穀類、湿かい飲み物などを朝食にはうんと食べること。

 昼食はどちらかというと軽いものである。真昼は暑いし、量が多いと腹にもたれる。サンドイッチとサラダとその他の軽い料理に、簡単なデザート、ミルク、または果汁飲料を添えて食べる程度にすること。その日が寒いときは、暖かいスープを用いる。

(メニューの準備をする)
 メニューが決まるとすぐに、食糧係は品目表を作り、買出しを始める。肉、パン、バター、卵および新鮮な野菜は、最後に買うようにするが、砂糖、小麦粉、塩などのような保存のきくものはかなり前に買っておいてもいい。次長が手伝って食糧を買い入れ、班の食糧袋に入れて班のスカウトたちに配る。


「7.班のキャンピング」その2 に続く