班長のてびき

7.班のキャンピング(2)


●1泊キャンプの最終計画

 ついにすべての用意が整った。班の組織図作りは成功した。万事は計画どおりに申し分なく運んだ。すべての両親たちの許可書は手元にあり、お金も集めてある。食糧も買い入れ、用具は配分済みである。あとはただひとつのことをやればいいだけだ。つまり、計画表を作るのである。

 次に参考までに1泊キャンプの計画表を掲げてみる。2泊のキャンピングの場合は、中1日は、班の長期キャンプ(後の項で述べる)のときと同じような時間割に従って過ごす。
第1日
14:00班の本拠で集合 班員たちに班の装備品と食糧品を配る。個人装備品を点検する。
14:45キャンプ地への旅行開始。徒歩、自転車、バス、電車などで。
15:45キャンプ地到着.テントやかまどなどの位置を決める。
16:00設営。設営係も炊事係もてきばきと働く。
16:45炊事開始。
18:00夕食。後かたづけ。
19:00休憩、またはゲーム。
20:30キャンプファイア。おしゃべりや歌、物語などで過ごす楽しいささやかな集い。
21:30消灯合図。火を消す。寝る準備。
22:00消灯。沈黙。
第2日
6:30起床。洗面。朝食準備。毛布やスリーピングパックを空気にさらし、テント内外を清掃する。
7:15鍋食。後かたづけ。
8:00テントの形を整える。キャンプサイトの手入れ。
8:30キャンプ地からの探検ハイク。自然研究とスカウトクラフト。
11:00キャンプ地に戻る。昼食準備。
12:00昼食。後かたづけ。
13:00休憩
14:00キャンプ引掲げ準備(撒営)開始。炊事場から始め、それから個人装備品をリュックサックにつめる。最後にテントをたたむ。
15:00キャンプの跡が実際にきれいになったか点検して確かめる。
15:30お世話になった人にお礼を言い、帰還につく。
16:00班の本拠に到着。班の装備品を点検し格納する。
17:00解散
18:00班員たちは時間どおりに帰宅。


●1泊キャンプで
 午後2時が近づく。班員たちが到着し始める。備品係はスカウトたちにすばやく配分するために班装備品をひと山ずつ積み重ねて並べながら、しばらく前からそこにいる。食糧係と次長は、食糧品について同じようなことをしている。

 しばら<すると全員が集まる。君は指揮をとり、各班員が必要な装備品を持っているかどうか点検する。みんな持っている!



(班装備品を配分する)
 すべてリュックサックをあけて床に置く。各スカウトは自分の受け持つ班装備品と食権品をもらい、適当にリュックサックにつめる。備品係と食糧係は、班員たちが班のキャンプ組織にどのように溶け込んでいくか考慮に入れながら、緊密に協力して、班の全スカウトに公平にすべてのものを配分する。そしてリュックサックにつめ柊わったときに、その中には次のページに列記してある物品が入っているのである。

 この表では、各スカウトがほぼ同じ重さのものを運ぶように、異なった品物を配分するように試みた。君はこれを自分自身の場合に当てはまるように調整しなければならない。テント、炊事用具、食糧品の重さはそこに掲げてある計画とは異なるかもしれない。

 何事も中途半端にやらないこと。班の装備品の正しい配分方法を発見するまでやめないこと。キャンプに行く最初の1,2回は、どこからか浴室用の体重計を借りてきて、実際に重さを計って配分して調べてみる。

 一方、班に大柄で頑丈なスカウト何人かと、小さい少年が1、2名いるときは、彼らに同じ重さのものをかつがせはしないだろう。班員たちの力と、彼らが運ぶものの重さの間にはある比重を設けなければならない。君の判断力を用いて、それに応じて荷造りする。

 ひょっとして、計量してみてリュックサックの平均の重さが10kgをこえるときは、確かに君の装備品には、何か間違っていることがあるだろう。調べて、不必要なものを取り除き、荷軽にしよう。



(キャンプ地への旅行)
 キャンプの旅行は、普通のハイクと同じ調子で始まる。利用できるどのような交通手段を用いてでも、町から出なければならない。それから実際のハイキングだ。できるだけ大通りを避けて、バイパスづたいに行く。

 今では君の班員は、ハイキングのやり方を知っている、ほんとうのハイカーたちだ。彼らは自分たちのハイキングが好きだ。しかし今日は、彼らはキャンプのことを考えている。
 「もう、あまり遠くはないぞ!」
 「もうついていたらなぁ!」
 「楽しくやろう!」

 道の最後の角を曲がると、キャンプ地だ!みんな足並みをちょっと早める。到着だ。



キャンプ地に到著する
 そのハイキングは骨の折れるものだったかもしれない。班員たちは全員ひと休みしたがっているかもしれない。しかし、これは休憩する時間ではない。まだである。その前にしなければならない仕事があるのだ!

 何かをやる前に、ます班員たちにそのザックをきちんと一列に並べて置かせ、全員をひとつの方向に向かせ、整列させる。「キャンパーの整列」である。

 それから全員いっしょにキャンプサイトを歩き回って、キャンプをどうしたらもっとも効果的に設営できるか話し合う----テントを風からかばうように、炊事場の火からの煙がキャンプの反対側に流れていくように、地面にでこぼこがなくて寝床にすることができるように、等々。

 これはあまり長い時間はかからないはずであるが、かかったとしても無駄にはならない。配置を決めるまでには、絶対に設営を始めてはならない。さもなければ、多くの余分の仕事を後でやらなければならないかもしれないのである。
A.設営係
A1.班長個人装備品、テント1張、支柱と杭、おの(なた)1、救急箱1
A2.記録係個人装備品、テント1張、支柱と杭、スコップ1、ロープ1、掃除袋1
A3.備品係個人装備品、テント1張、支柱と杭、ロープ1
A4.歓呼係個人装備品、テント1張、支柱と杭、修繕袋1
B.炊事係
B1.次長個人装備品、深なベ2、浅なベ1、肉入れ袋1〜2、食糧袋2、救急箱1、防水テーブルカバー1
B2.食糧係個人鼓備品、深なベ2、浅なベ1、調理用具セット1、肉入れ袋1、食糧袋3
B3.会計係個人装備品、おの(なた)1、ねじふた付容器2、パン袋1、布バケツ1
B4.ハイク係個人装備品、スコップ1、布バケツ1、布洗面器2、パン袋1、食糧袋3



(仕事にとりかかる)
 配置が決まったらすぐに仕事を始める。全員がそれぞれ次の方針にそった特別な仕事に全力を打ち込む。



キャンプ設営組織(役割分担)
A.テント設営係
A1.班長テント2張を立てるそれぞれのテントの寝床を準備する便所を掘るキャンプファイアのための薪を集め、その準備をする
A2.記録係
A3.備品係テント2張を立てるゴミ捨て場を掘る
A4.歓呼係
B.炊事係
B1.次長火をおこす場所を作る炊事
B2.食糧係食器と食糧品を取り出す
B3.会計係水をくむ更に薪を集める
火を燃やし続ける
炊事場を整える
B4.ハイク係薪を集める

 これでわかるように、上記の作業案は班員8人の班を標準として立ててある。班員が少ないときは、仕事のうちいくらかは兼ねて行わなければならない。もし多人数のときは、仕事の中のあるものは2人の班員に分けてやってもらってもよい。

 重要なことは、各々の班員が何か仕事を分担しているということである。つまり、誰もぶらぶらしている者がいないようにすることだ。



(どのように行われるか)
 さて、この組織がどのような働きぶりを示すかを見るために、作業中のある班を観察してみよう。T班長の指揮のもとにあるイーグル班を例にとってみる。

 これが彼らの組織である。
A.テント設営係A1、A2、A3、A4
B.炊事係B1、B2、B3、B4

 全班員がキャンプサイトを点検した。「さあ、仕事にとりかかろう!」とT班長が言う。それから、班はその有名な働きぶりで、一所賢明働き出す。

 テント設営係全員は、T班長自ら指揮をとって、各自のザックをテントを張る位置に持って行き、炊事係は、E次長の指揮のもとで、各自のザックを炊事場の位置に持っていく。ザックをあけて、班の装備品だけを取り出し、個人用品はザックに残しておく。



(テント設営係の仕事)
 テント設営係の班員は、テント、支柱および杭を広げて、それから最初の2つのテントを張る仕事にとりかかる。A1とA2がひとつのテントを受け持ち、A3とA4の班員がもうひとつのテントにとりかかる。

 彼らはうまい方法を知っている。まずテントの四隅に杭を打ち込む。その後で1人は前側の支柱を垂直に立て、もう1人は前の張り綱を杭でとめる。それから支柱を立てる役の者は、うしろの支柱を立て、その相棒は後部の張り綱を杭で止める。最初の班員は次にテントの中に入って、ソドクロスをきれいに伸ばし、もう1人はテントの周囲を杭で止め、それを正しい位置に整える。

 すべてのテントを張り終わるとすぐに、4人の班員たちは寝床の準備をする。彼らはテントの内部の地面から、石ころを取り除き、でこぼこをならし、木の枝を取り去って、座る場所を整える。そして防水グランドシートを所定の場所に広げ、毛布(またはスリーピングバック)をその持ち主が寝る位置に広げ、最後にザックを中に入れて各々の枕もとのほうに置く。

 これで野営の準備は完了した!

 次の仕事は便所作りである。A1とA2の班員がひまな時間にする。彼らはりっぱな便所は作らない。そんなものは、班キャンプには必要ないのだ。縦約60センチ、横約25センチ、深さ30〜60センチの簡単な野営便所を掘る。それはテントサイトから十分離れていて、しかもあまり遠すぎない場所にする。そして水くみ場から少なくも60メートル以上離れていて、低い所である。
 自然の繁みでしゃへいされるようにしてあるので、この場合、便所作りのスカウトたちは、その周囲に何も囲いをする必要はない。掘った土を一方の側に積んでおき、木で作ったスコップのようなものを置いておいて、それで、いつでも便所を使用した後に、土をかけるようにする。トイレットペーパーは、切り開いた空き缶に入れて、雨にぬれないようにして手近なところにぶら下げる。そして、便所の位置を全班員に知らせる。

 一方、A3とA4の班員は、炊事係のスコップを用いて空き缶捨て場を作る。この場合それは炊事をする者たちに便利なように、炊事場に十分近くなければならない。ゴミ捨て穴は、30センチ×30センチ、深さ60〜90センチのものが必要である。掘り出した土を一方に積んでおいて、穴の中にあるごみに簡単にスコップでかけられるようにする。(注:空き缶や空き瓶は埋めてはいけない。燃えるごみや生ごみはできるだけ燃やし、残ったくずだけを埋めるようにする)

 便所とごみ捨て場の準備ができたら、テント設営係は全員集まって、晩のキャンプファイアの場所を決める。地面を清掃し、十分な量の薪を集め、いつでも点火できるようにしておく。



(炊事係の仕事)
 一方、炊事係は、4つの異なった仕事にとりかかっていたのである。B1のE次長は、すべての炊事用具を取り出す。彼は地面に防水のテーブルカバーを広げ、その上に食器袋を置く。これをすますと、夕食の材料を取り出し始める。

 B2の班員は、自分の好きな種類のかまどを作るのに一所懸命だ。高床式のかまど(立ちかまど)でも、石のかまどでも、溝掘式のかまどでも、あるいは簡単な自在かぎを付けた丸太のかまどでもかまわない。それはテントのほうに煙や火の粉が流れていかないような場所に作ってある。かまどの準備ができるころには、B3の班員はB2が炊事をする火を起こすのに十分な薪を持ってきてある。

 B4の班員は、布バケツで炊事用の水を汲んでくる。実際に使う分だけでなく、2つの洗いおけ(布洗面器はおけにも使える)を満たす分もくんでくるのである。

 これらの4つの仕事が終わったら、班員たちは2人の一組になって集まる。B1とB2は手を洗い炊事にとりかかる。彼らの仕事は、家族的な食事を作り、適当な順序でその料理を給仕することである。肉は半時間前にではなく、野菜と同時料理する。そしてスープは真っ先に出せるように用意し、デザートの一部として出すべきではない。

 やがてテント設営班のメンバーの何人かが、その仕事を終える。

 彼らは班の協力を効果的にするためのルールを思い出す。「自分の仕事をやり終えても、何か仕事が残っていれば、それはみなの仕事である」
 「さあ、食卓の準備をしよう」
と班長(A1)が提案する。班員たちはザックから食器の入った袋を取り出し、小さい輪になるようにそれらを地面に置き、それから開いて、食器を袋の上に並べる。これで食事の用意はできた。いよいよこれから食事にかかるのだ。全班員が「食卓」につく。

そして班長は[感謝の祈り]をささげる。『スカウトのキャンプでは、食事の始まる前に、班はちょっと待ってお祈りをささげる。よい班はキャンプでのすべての食事の前に、食事のお祈りをする----各々のスカウトが心の中で、それぞれのやり方でお祈りをするか、あるいは各自がその信仰に従って、かわりばんこにお祈りの言葉を言う』 B1とB2の班員は、食物の入っている鍋頻を持ってきて、皆に給仕する。

 う一ん、これはうまい!

 食後の皿洗いは簡単だ。深鍋1ぱいの水が火にかけてある。それは食事が終わるころまでには、沸騰しているはずだ!そしてごみはもう焼いてしまった。

 まあ、これがわがイーグル班のやり方である。訓練を受けているのだから、君の班でもそのようにうまくいかないという理由はない。



(晩のプログラム)
 キャンプは整頓され、夕食は終わり、後かたづけもすませた。晩のプログラムの時間が来たのである。

 真っ暗になるまでは、まだ1時間くらいは明るいかもしれない。この時間を利用してゲームをする。

 さらに寝るためのベッドの準備ができているかどうか、最後の点検をする。ついでに、積んである薪から、いくらか炊きつけ用の薪を、テントのひとつの中に入れておく。夜の間に雨が降るかもしれないし、朝食の炊事の火を起こすために、薪を乾いた状態にしておく最良の準備となる。

 だんだん暗くなってくる。星が輝き始める。木々は黒いシルエットとなって、おおいかぶさってくる。キャンプファイアの時間が来たのだ。もし寒いときは、テントから毛布を持ってきて体に巻きつけるか、セーターを着る。

 皆、火床を囲んで円陣を作って集まる。班員の1人(ファイア・キーパー(火もり)と呼ぶことにしよう)が点火する.小さい炎が薪の間からおどりあがる。あたたかい炎の光が班員たちの顔の上に広がる。

 キャンプファイア! そのことばには魔術的な響きがある! 後々に、キャンプそのものの記憶は消え去った後でも、班員たちは赤々と燃える火の周りで、友と輪になって、だまったままじっと残り火を見つめたり、あるいは上機嫌で語り合って過ごしたひとときを思い出すことだろう。

 繰り返して言うが、すべてのことは班長である君にかかっているのである。もし君自身が正しいスカウト精神を持っているなら、その正しい精神は、君のすべてのキャンプファイアで、君の班員と共にあるだろう。

 たくさんの人が参加する団や地区などのキャンプファイアでは、スタンツや演劇、コンテストや大きなセレモニーが行われる。班のキャンプファイアは違う。ここでは、プログラムは即興的である。つまり決まった出し物ではなく、各自がその場で思い思いにやればよいのである。もちろんそれでも君はプログラムの基礎を作るために、2、3のことを考えておいてある。班員が好んで歌う歌、物語、討論の題目などである。しかしそれを絶対に守らなければならないような、むずかしい融通のきかないものにしてはならない。むしろ君の班員たちのムードにしたがうようにする。

 君のキャンプファイアで、あまりやることがなくても気にすることはない。キャンプファイアさえあれば、たとえ“プログラム”どおりに時間を埋めることができなくても、十二分に過ごせるからである。



(火を囲んで)
 次がキャンプファイアの様子である。

 はじめにその日のことについて、そして翌日は何をするかについて話をする。----実際に翌日の計画を立てるのである。そうすると班員たちはスカウティングー般について話し始めるかもしれないし、あるいは学校、またはスポーツ、さもなければ、いつかの晩、彼らのうちの1人が見た映画について、話し始めるかもしれない。
 「歌を歌おう!」それまでは、スカウトたちがよくやるように、キャンプファイアを囲んで小休止しており、その間班員たちは、真赤に燃える炭火に見入りながら、夢うつつに座っている。しばらくはそのままほっておいて夢を見させ、それから“地上”へ引き戻し、彼らが最も好きな歌を歌い始める。歌のうまい者は独唱を、ハーモニカの得意な者は独奏や伴奏を、とにかくみんなが全体の楽しみのために、何かをやるべきである。

 それから、キャンプファイアを囲んでやるのに適している、いろいろなゲームがある。

 歌をもうひとつ、さらに物語をもう1回----そしてその晩は過ぎていく。

 君の合図で皆立ちあがり、火に向かって立つ。腕を炎の上にかざし、それから君たち皆で「タップス」を静かに静かに歌いながら、手をゆっくり下げる。「よるのとばり うみにおかにそらに…」そして就寝。

 設営係の2人が、残りの者が寝る準備をしている間に火を消す。火消し係は、燃えている木切れを広げ、それらに水をまき、全部の残り火が消えているのを確かめる。黒く燃えつきた炭を残して立ち去りながら、彼らはテントの明かりがぼーっと浮かんでいるのを見る。中にともっているランタンの光には、何かしら神秘的な感じがただよう。



(床につく)
 みんな就寝準備にいそがしい。

 君たちの中で、昼間着ていた制服のまま床に入るのは、新米のキャンパーだけだということを、君たちはよく知っているはずだ。全員パジャマ、その他の寝間着に着替える。制服はきちんとたたむ。それらは枕代わりに使う。靴はテントの入り口に並べる。

 やがて班員たちは自分の寝袋にくるまる。彼らの中のある者は、ちゃんとした寝袋を持っているが、他の者は、自分で毛布の両端を毛布ピンでとめて、寝袋に変える術を知っている。

 そのころになると、みんなのおしゃべりもいちばんにぎやかになる。ようやく皆は寝袋にもぐって、寝心地のいい姿勢で横になる。ただし班長は別である。君はまだ果たさなければならない、いくつかの貴任がある。君はテントからテントヘと巡回する。皆がくつろいで不満はないかどうか調べる。テントの入り□の扉がきちんとしまっているかどうか注意する。

 すべてはOKだ。君は空を見上げる。雨の降る気配はなさそうだ。だが万−ということもあるから、テントロ−プをちょっとゆるめておくのがいい。それで君は、入り□の支柱を少し土に押し込むか、あるいはその支柱の根元のわきにあらかじめ作らせた、5cmほどの漂さの小さな穴に、支柱をずらして差し込むかする。これはうまい方法だ。

 そしてようやく君は床につく。

 班員たちのおしゃべりはまだ終わらない。君は、君の時計が10時かっきりになるまで、または消灯時間がくるまでは、何時まででも、皆といっしょになっておしゃべりをする。そして君は言う。
「10時だ!お休み!ぐっすり寝たまえ!」
他のテントからかすかに「お休み!」が返ってくる。それから沈黙。そして2、3分後には、ぐっすり眠っている健康な班員たちの寝息が聞こえるだけである。

 つまり、もし君が班をこのように訓練したらである!



(キャンプで寝る)
 もしこれが君の仲間たちといっしょのキャンプの最初の夜であるなら、君は彼らと君自身を十分に休めるように導かなければならない。

 不慣れな環境、夜の物音、固い寝床、昼間の興奮で、皆はなかなか寝つかない。

 その時こそ、皆を本物のキャンパーに仕立てる仕事が始まるのだ。さもなければ、彼らを新米クラスの生徒にしてしまって、彼らはそこから絶対に卒業できないだろう。

 もし君が彼らのキャンプ第1夜に、遅くまでおしゃべりするままにさせたら、彼らは次の日も、その次にもそうするだろう。しかし君が最初から「われわれの班では、テントに入ったら寝るのだ」と、固く言いつけると、君は皆の名誉になるひとつの基準を設けることになるのである。

 彼らに君の「お休みなさい!」を、晩の最後の言葉として認めさせ、翌朝の君の「おはよう!」をキャンプの1日の始まりとして認めさせる。班員たちの忠誠心に訴えること。彼らに、自分自身が眠れないときでも、眠れる人々のためを考えてやらなければならないことを理解させる。

 それは最初はちょっとむずかしいように思えるかもしれない。班員たちは寝袋の中で落ち着かないで寝返りをうち、何かを言いたがり、多分ささやきたいかもしれない。「シーッ」と言ってすぐやめさせる。もし君が決めたとおりのことを言っていることがわかれば、彼らは静かになるだろう。そして突然眠りにおちいる。



(翌朝)
 キャンプで初めて迎える朝には、誰かが早起きすることだろう。特に新入隊員はそうである。眠れなくても、起床時間までは床についているように、きつく言っておく。いったん起きたら、もうどうしても眠れないからだ。皆に、夜が明けないうちに起きなければならないときは、できるだけ音をたてないように動き、すぐに床に戻らなければならないことを、理解させる。

 君は班員たちの健康の保護者だ。十分な睡眠は健康の素であるだけでなく、翌日のキャンプ生活を楽しく過こすための要件である。もし君の班員たちが十分な睡眠をとらなかったら、その日の夕方には、皆不機嫌な顔を並べ、怒りっぽくなることだろう。そこで、繰り返して言うが、皆には床の中でじっとしているように言いつけることだ。

 朝の「おはよう」という威勢のいいあいさつとともに、キャンプは再び活気を呈する。

 皆は動き出し、上半身裸になって洗面し、歯を廉き、服を着る。一日は始まった。仕事は進んでいる。

 炊事係は、火を燃やして朝食の準備をする。テントは扉やウォールを広く開けて、風通しをよくする。

 朝食が出され、皆食べる。炊具や食器の後かたづけがすみ、炊事場を掃除し、火を消す。

 寝具は、1時間以上風を通してから、君の班で決めたやり方にしたがって、巻くかたたんで、テントの中に戻す。テントは整頓され、キャンプはきちんと整っている。



(午前中のプログラム)
 整頓が全部終わったら、真のスカウティンクの午前中のプログラムにとりかかる。

 この時間中は、誰もキャンプにとどまるな。付近のハイキングに出かけよう。探検に行こう。この機会を利用して、スカウトの必修科目の中のいくつかの訓練をする。その活動種日は、「班のハイキング」のところで述べたものとほとんど同じである。つまり、自然研究、追跡、信号法、オリエンテーリングである。

 近くに水泳施設があれば、班員たちは泳ぎたいと思うかもしれない。そうなるとことは面倒だ。君は班員たちに対して責任がある。彼らが皆泳ぎ上手であるにしても、彼らの健康状態がすぐれていることが明らかでも、どこかに思わぬ間違いがあるかもしれない。この間違いは、班員に災難をもたらすかもしれないのだ!そしてもし、それが起こったら、責任と非難は君にかかってくるのである!

 「すべての必要な安全処置をとらない限り、どんな水泳でも許してはならない。班ハイクや班キャンプでは、君の地区や県連盟が認めている成人の水上安全法救助員の監督指導の下でない限り水泳は絶対にやってはいけない。」 救助員は、最小限の安全要件を知っており、それらを確実に君たちに守らせるだろう。

 泳げるだけ泳いだあとは、ちょっとだけ日光浴をする。長時間はやらないこと。もし班たちがそまでに日焼けしていなかったら、半時間ほどでたくさんだ。寝そべって真っ黒に日煩けするようなことは、誰にもさせないこと。日光浴の間は、皆を動き回らせるようにする。君は彼らを、ゆでたてのえびのような格好で、あるいは、ひどい日焼けをさせて家に帰したくないはずだ。

 服を着て再びハイキングを続ける。あるいは昼食を食べにキャンプに戻ることを考える時間かもしれない。ハイクするということは、なんとおなかがすくことか!



(昼食)
 1泊キャンプの昼食は、手軽にできる簡単な食事でなければならない。班員たちは、夕方は家で夕食をとることになっており、キャンプでの食事は、彼らが帰宅するまでへこたれないようにするためのものである。

 サンドイッチ、缶詰のスープを温めたもの、デザートとして果物かクッキー----まあそんな程度でいい。(注:にぎりめしは、不衛生になりがちだからさける)

 食事がすんだら、炊事係はすぐに食器のあとかたづけをする。この仕事が終わった後で、皆に短い休憩時間を与える。

 時間のたつのは早いものだ。撒営の時がきた。



(撒営)
 班のキャンプをたたむとき、まずやるべきことは、すべての個人装備品の始末をすることである。 君が「さあ、始めよう」と言うと、班員たちは自分の持ち物を集め、それぞれの品物を入れるべき袋に入れ、いつでもザックに詰められるようにする。

 個人装備品のかたつけが終わったとたんに、班は忙しくなる。

 設営係の連中は、テントからグランドシートを引き出してたたみ、それを入れるザックの上に置く。それから2人ずつ組んで、テントをたたみ始める。

 手っ取り早い方法は、テントを立てたときの方法を逆にすることである。親綱用以外の杭をすべて引き抜き、土をよく落としてから杭袋の中に入れる。1人はテントの正面に行き、もう1人は後ろに行く。同時に前と後ろの親綱を杭からはずし、テントをペしゃんこにする。杭を引き抜いて袋に入れ、テントの支柱をはずして分解する。1人はテントの上部(むね)の前のほうをつかみ、もう1人は後ろのほうをつかんで、いっしょにテントを高く持ち上げて、風に向かってすばやく動かし、そこからすばやくテントを地上に置く。こういうふうにすれば、テントは下におろしたときに、しわがなくなって簡単にたたむことができ、支柱や杭袋をくるむことができる。

 テントの荷造りを終えるとすぐに、便所とゴミ捨て穴に土をかぶせて埋める。

 一方、炊事係は炊事場を片付けるのに一所懸命だ。2人が食器と食品袋をそれぞれ入れなければならないザックに分け、他のスカウトたちは炊事場をきれいにかたづけた。彼らは、最後のぎりぎりの時間まで消さずに残しておいた火で、ゴミを焼いたり、空缶をつぶして処理したりした。また、使い残りの薪をしまったり、林の中へ散らしたりした。

 この班の仕事をすべて果たし終えるとすぐに、班員たちはそれぞれザックを詰めて口を閉める。

 君は合図をして、皆をキャンプサイトいっぱいに一列に並ばせる。そして列を組んだままでサイトをねり歩き、キャンプの跡を残すようなものはひとつ残らず拾い上げる。たとえ紙切れひとつでも、またどんな小さい木っ端でも残してはならない。

 君の最後の仕事は、火を消すことである。火の粉が全部なくなるように(完全に確実に)その上に水をまく。次に、燃えがらの上に土をかけて踏み固める。最後に芝生をもとに戻す。以前かまどだったところが、今は地面がほんのろょっと盛り上がっているだけで、その周辺とほとんど見分けがつかなくなる。

 雨の中でテントをたたまなければならないときは、仕事はいくらか違った手順で始める。そのときはテントはいちばん最後まで残し、その他の用具やザックを雨にぬらさないようにそこに置く。便所やコミ穴も埋め、火も消し、その他のことを全部終わったら、テントを倒して荷造りする。

 君はキャンプサイトの最終的点検をする。----完全だ!----「用意はいいか? さあ出発だ!」そして班は家路につくのである。



(用具をしまう)
 町にもどると、その足で班の本拠へ行き、班の装備品をしまう。

 備品係が引き継ぎ、直ちに全部そろっているかどうかを点検する。それから彼は品物全部をそれぞれの場所へしまう。テントが雨のためにぬれているときは、しまう前に乾かさなければならない。そうしないと、そのテント地はカビでだめになってしまい、テントの寿命が短くなる。同じことは布バケツや布洗面器にもいえる。

 食糧係は食糧袋の始末をする。腐敗しやすい食物が残っているときは、班員たちの中の誰かに家に持ち帰らせて使用することによって処分する。肉袋その他同じようなものは、しまう前に注意深く乾かさなければならない。



(何を学んだか)
 1泊キャンプは終わったが、班に対するその影響は続く。特にキャンプをしたことによって、君が学んだ教訓を身につけた場合はそうである。

 次の班集会で、その経験について話し合う。その席上で皆に次の質問をする。
  1. われわれは何を学んだか
  2. 何がよかったか
  3. そんなによくなかったことは何か

 これら3つの問題を率直に話し合うことによって、君たちの将来のキャンピングを向上させ、初回よりも好結果を生むことさえできるのだ。

 たとえば、組織には改善の余地があり、装備品は適切でなく、ある食糧品はあまりにも多く、あるものはとても少なすぎたことがわかるかもしれない。班全員の意見を聞いてこそ、次のキャンプでは細かい点まで改善を図ることができるのである。

 もちろん君は、最初のキャンプで万事が正確に行なわれるとは思わないだろう。それは期待のしすぎというものだ。

 しかし、君が最初のキャンプで期待することは、班員たちに、真にキャンパーになりたいという望みを呼び起こさせることである----その望みとは、皆が毎週未ごとに野外に出て、ほんとうのスカウト活動の一部として行なわれているような、野外生活を送りたいと思うようになることである。その望みを班員たちに植えつけることによって、君は君の班を、ほんとうの班になるように仕向けるだけでなく、そのスカウトたちが、より強い、よリ健康な、そしてより幸福な少年になるように助けていることにもなる。


「7.班のキャンピング」その3 に続く