刃物類(ナイフを含む)の取り扱いについて

総コミッショナー 杉原  正
日連発第886号(総)平成10年2月8日



 さて、最近中学生によるナイフを使用しての殺傷事件が引き続いて起こっておりますことはご承知のとおりです。
 政府は、少年によるナイフを使用しての凶悪犯罪が連続して起こっていることを重視し、再発防止に向けての取り組みを強化する考えを橋本首相が表明されました。また、閣僚懇談会で、ナイフの販売や携帯の規制を強化使用と協議されている中で、「自分は、ボーイスカウト時代、ナイフを使ったがそういうナイフはどうなのか。正しく使用する自覚が必要だ。」更にその後記者団に、「この問題は、ナイフの使用を禁止するか、それともきちんと使えるように指導するかだ。」と強調され、「果たして禁止という手法で済むのか。単純に結論は出せない。」と、橋本首相は“ナイフ性悪説”に流れがちな議論に一線を画されています。
 1954年頃から、飛び出しナイフ等を使った殺人や強盗の凶悪犯罪が多発し、60年代に入って政治家をターゲットとした刃物を使ったテロ事件が相次ぎ、刃物に対する規制強化の世論が高まりました。その中で飛び出しナイフは、刃の長さにかかわらず所持禁止となりました。その後、“ナイフを使わせない”“ナイフを持たせない”との風潮の中で、ボーイスカウトでは、ナイフを含めた刃物について“正しく使う”“取り扱いの安全に気をつける”“野外活動等で必要な時以外は携帯しない”“携帯するときはリュックサックなどに入れる”等の教育的配慮と指導を続けながら対応して今日に至っております。
 最近の一連の少年の事件は、この種の凶悪犯罪が今後誘発される危険をはらんでいると思われます。この状況のもと刃物などの販売や所持、携帯の規制が強化され「銃砲刀剣類所持等取締法」た「軽犯罪法」または都道府県単位での「青少年の保護育成に関する条例」等の「有害がん具」の指定や罰則規定が一層厳しくなることが予測され、法律による取り締まりが強化されるでしょう。
 スカウト運動では、野外におけるプログラムなどで用途に即した刃物類(ナイフを含む)を道具として使用することが多いのが現実であります。この現実を踏まえて改めてスカウト活動における刃物類の取り扱い、特に所持と携帯についての確認事項を、次のとおりご通知申し上げますので、県連盟各指導者を通してスカウト、指導者、保護者各位に周知下さるようお願い申し上げます。
 貴連盟におかれましては、今後ともあらゆる機会、特に日本ジャンボリー等の行事を活用して繰り返し刃物類の所持と携帯並びに安全使用や管理の指導に万全の措置を貴職を通して講じられるよう重ねてお願いいたします。
 なお、今後法律の運用強化などで更なる対応が生じたときは、改めてご通知させていただくことになりますのでよろしくお願い申しあげます。敬具
               記
<安全上(使用上)の注意>
  1. 刃物は用途に適合した安全な使い方をする。
  2. カブスカウトの工作等で使用する小刀等についても同様と取り扱いとする。
  3. 使用上の諸注意については、スカウトのハンドブックやリーダーハンドブックを十分参考にして行う。
  4. 自分以上に他の人への安全について十分な気配りをする。
  5. 刃物の受け渡しについては、安全上の確認を行う。
  6. 使用後は、サヤやケースのあるものは、その中に収納し、保管する。
  7. 個人の物は、各人が責任を持って保管・管理し、班の備品となるものは班長のもと備品管理担当者を決め、保管 または管理する。
  8. 指導者訓練などの機会を通して、その指導の徹底をはかる。
<刃物の購入及び販売>
  1. スカウト活動に必要な刃物(ナイフ・オノ・ナタ等)は、需品部(スカウトショップ)で購入することを原則とする。
  2. 本人の技術・技能・能力を越えた機能があるものは購入しない(機能、刃の長さ等)。
  3. 購入にあたっては、保護者及び指導者が関与する。
  4. 販売にあたっては、加盟登録証の提示及び、団(隊)、氏名、住所などを記録として保管することとする。
  5. その際、保護者、指導者の承認を確認する。
<刃物の所持>
  1. 銃刀法、軽犯罪法、青少年の保護育成条例等に基づく基準を越える物は所持しない。
  2. 今後、上記の法律による規則や改正については指導者は十分な知識を持ち、スカウトや保護者に対して指導を行う。
  3. 指導者訓練などの機会を通して、主旨を徹底する。
<刃物の携帯>
  1. スカウト活動のため(刃物を必要とする活動のみ)であれば、県連盟需品部(スカウトショップ)等で販売されているナイフ・ナタ・オノは携帯することができるが、スカウト活動以外のときは携帯しない。
  2. 個人で所有している刃物は、学校等へは携帯しない。
  3. スカウト活動で刃物を携帯するときは、リュックサックまたはハバザックなどに安全を確認して納める(飛行機を利用するときは、機内への持ち込みとはせず、預ける荷物に入れる)。
<その他>
  1. 刃物の所持と携帯等については、別紙:ボーイスカウト大阪連盟発行「野外活動の安全Q&A」の<刃物の携帯と銃刀法>を参照して適切な対応に心掛けて下さい。
  2. 都道府県単位での「青少年保護育成条例」「青少年健全育成条例」等は、その条例内容に差異があり、特に今回は「有害がん具」としての取り扱いに相異が生じますので、各都道府県連盟において十分な対応をお願いします。
(添付文)
ボーイスカウト大阪連盟発行「野外活動の安全Q&A」、6.刃物・ロープ、46、刃物携帯と銃刀法



刃物類(ナイフを含む)の取り扱いについてその2)

総コミッショナー 杉原  正
日連発第908号(総)平成10年2月10日



 このことにつきましては、すでに平成10年2月8日付、日連発第866号(総)の文書によりお願いいたしました。
 併せて、先に開催された平成9年度第2回県コミッショナー研究集会の席上、小職より標記の件についてご出席の県コミッショナー各位にスカウト活動における刃物類の正い取り扱いについてお願いを申し上げましたが、この程、この件について文部省より依頼状が送達されて参りましたので関係文書を添えてご通知いたします。
 文部省からの文中には、わが国の青少年の現況を総括的にとらえた見地から、子どもたちがナイフ等の刃物を携帯することは法律で禁止されている旨の記載があります。そのことは必然でのことでありますが、スカウト活動では刃物類の使用はプログラム上必要なものであります。従前からスカウトには正しく安全に使用することを徹底するため、進歩課目等の履修を通じてカブスカウト年代から、「正しく、安全に使用する」「刃物の怖さを知る」など、必要な方策が講じられていることも又既にご高承のとおりであります。
 どうぞこの機会に、スカウト活動で使用するときの刃物の正しい取り扱いと携帯について更に徹底いたすべく、先に第一報としてお示し申し上げました内容も踏まえ特段のお取りはからいをお願い申し上げます。
 なお、沖縄県連盟では、アメリカ連盟のもとでスカウト活動を展開してきた当時から、また、日本連盟復帰後も「ナイフとオノ所持許可証」を発行している旨の報告がありましたので、ご参考までにその「写し」を添付いたします。