班長のてびき

12.班の活動

 このようにして班の活動は続く。

 そのうち数週間がたち、数ヶ月が過ぎる。そして、そのうちに君は、班を、かつてないほど強くまとまった単位組織に築き上げることになるのだ。君たちスカウトは、がっちりした絆で結びつけられるのである。班の伝統は育まれ、班精神はますます高揚される。君たちひとりひとりのスカウト技能はますます磨きがかかり、君たちの行動はいっそうスカウトの理想に近ついていく。

 こうして、君の班はしだいに向上していく。

 では、いったいどれくらい伸びているのだろうか。「もちろん、世界一さ!」と君は言う。だが君はほんとうに確信があって言っているのだろうか。あるいは、ただ、そうではないかな、と思っている程度に過ぎないのではないか。また君は、何を尺度として自分の班を評価しているのだろうか。たぶん、君の班は、隊の他の班に比べればいい方かもしれない。つまり、君の属する連盟の役に立っているということになろう。しかし、国内のほかの班、つまり他の隊や県連盟の班と優劣を競った場合はどうだろうか。遜色はないと言えるだろうか。それとも、そんなにまで抜群ではない、ということになるかもしれない。

 では、なぜそうなるのか。その答を見つける方法があるはずである。試みに、全国の班に当てはまる基準を立ててみよう。それから、その基準によって君の班を評価すれば、君の班の水準が、現在どこまできているかがほんとうにわかるだろう。そして、君の班は優秀か、可もなく不可もなしというところか、あるいは全然話にならないのか、を知るのである。それだけではない。君も班員も、トップにおどりあがるにはどうすればよいかということまで知るのだ。


●班を全国的水準に引き上げるにはどうすればよいか

 優秀な班つくりに必要な、最小限の基準条件は、後に掲げてあるとおりである。君がこれらの条件にそって活動すれば、君は自分で設定した班の目標に向かって、順調に進んでいることになるのである。しかし、これは、君のひとり相撲ではどうにもならないことだ。班を全国的水準に引き上げるため、すなわち、国内の最優秀班と肩を並べさせるために、全班員をふるいたたせなければならないのである。そして、目指す水準に達したら、それからあとは、どうすれば班の面目を保ち、しかも、絶えず第一線で活躍させることができるか、ということになってくるのである。

 全国的水準の班づくりには、どのようなことが関係しているのだろうか。それには2つあるのだ。ひとつは隊全体の一部としての、君の班に関係のあるもの、もうひとつは、君が自分の班で行うことに関係のあるものである。では、それはどんなことか、いろいろある中から、ひとつひとつ取り上げていくことにしよう。


●隊の一部としての君の班

 これが、標準班づくりの第1部である。

 隊が目指す到達点に達するに際して、それが君の隊の指導者たちの満足を得るようにするために、君は自分の所属する隊に協力する。

 君の隊が目指す目標とは何だろうか。君は知っているはすだ! 君は班長会議で他の班長たちと協力して、その目標を設定してきたのだ。目標の中には、隊集会に出席することや、ハイキングやキャンピングに参加すること、地区や連盟主催の各種の行事、その他数多くの活動に参加することなどがあるだろう。

 まず隊の目標を知ること。そしてその達成のため、班としての役割を、確信を持って果たせるようになることだ。


●君たちのものとしての班

 次は、標準班づくり計画の第2部である。
 次の各種の粧活動で、1000点満点のうち750点以上を得点すること。
  1. 訓練された班リーダー
  2. プログラムの編成
  3. 班の定例集会
  4. 野外活動
  5. 特別行事
  6. 奉仕作業
  7. 進歩
  8. 最良の服装とみだしなみ
  9. 班の特色
  10. 班員数

 次のページに示す得点表を見てみよう。
「良」
の成績で基準に達するには750点は必要だ。
「優」
になるには、君は1000点近くの点数を得る必要があるのだ。とはいえ、君は1000点近くの点数を得点したところで止まってしまってはいけない。基準に合った班を作るために要求されている回数以上に、多くの集会を、君は持つことができるはずだ。ハイキングやキャンピングの回数が多ければ多いほど、それに応じてどんどん進級するのだ。君の班に関する限り、設けられている基準というものは、目指しているものの絶対最小限のものであるということ、そして君自身はその基準以上に向上することができるかどうか、つまりすべての面で最上位に立てるかどうかということを、決めてかかることだ!


●標準班のための得点の基準

 標準班を作るには、君の班は次のことをしなければならない。
A. 隊の目指す到達目日標に達するに際して、それが君の隊の指導者たちの満足を得るようにするため、隊に協力すること。
B. 次に示す班の活動で、1000点満点のうち、最小限750点を得点すること。
指導力 T 訓練された班リーダーの数 班リーダー訓練に4回参加した班長と次長(100点)
班リーダー訓練に2回参加した班長と次長(50点)
活動 U 活動を計画する 3ヶ月前に計画された普通の計画と1ヶ月前に計画された特別の活動(100点)
ほんの1ヶ月前に計画された普通の活動(50点)
V 登場の班集会 4ヶ月間に、隊集会のほかに、少なくとも毎月2回を持った(100点)
4ヶ月間に、隊集会のほかに毎月1回隊集会をもった(50点)
W 野外活動 4ヶ月間に、班ハイクまたはオーバーナイトハイク(1泊ハイク)を、少なくとも4回実施した(100点)
4ヶ月間に、班ハイクまたはオーバーナイトハイクを、少なくとも2回実施した(50点)
X 特別行事 班員のすべてが、連盟や地区や団のキャンポリーに参加した(100点)
少なくとも班員の半数が、連盟や地区や団のキャンポリーに参加した(50点)
Z 奉仕 4ヶ月間に、班善行が少なくとも2回あった(100点)
4ヶ月間に、班善行が少なくとも1回あった(50点)
Z 進級 ・4ヶ月間に、少なくとも班員2名が1ランク上に進級した(100点)
4ヶ月間に、少な<とも班員1名が進級した(50点)
[ 服装の改善 班員のうち、少なくとも75%が正しい服装をしている(100点)
班員のうち、少なくとも50%が正しい服装をしている(50点)
\ 班の特徴 班旗、班記号、班コールそれに現在まで4ヶ月間の班日誌がある(100点)
班旗、班記号、班コールそれに現在まで2ヶ月間の班日誌がある(50点)
班員数 班員が8人いる(100点)
班員が7人いる(50点)
班員が6人いる(50点)


●標準班としての名誉を得るための工夫

 得点の方法を学ぶにつれて、それが4ヶ月間にわたる活動に基づいて定められていることに、君は気がつくだろう。君は4ヶ月でその基準に到達したあとは、それ以上に向上するように努力するのだ。

 訓練を受けた班リーターが重要であることについては、別に疑問はないはずである。仮に君が君自身の仕事を知らないとしたら、君は非常に質の悪い班を持つことになるのだ! 君がすでに訓練を受けている場合には、打てばひびく式に得点することになる。だから君がまだ訓練を受けていないのだったら、班長会議で、君の隊長から必要な訓練を受けることから始めることだ。訓練を受ける方法は他にもある。君の属する地区や連盟内で、班長訓練や野外訓練行事が催されるはずである。そのときには必ず出席することだ。そして君の補佐役(次長)もいっしょに参加することだ。そうすれば君も君の補佐役も、その参加した訓練行事から利益を得ることになる。

 君自身が全体的な活動の計画をして、はじめて班の中にいろいろな行事が生まれるのである。班内で話し合いを持ち、活動の計画を練るのだ。それから君の補佐役といっしょになって、細かい点を列挙していくのだ。普通の方法で向こう3ヶ月間の活動を前もって計画するのだ。それから、月単位にしての集会やハイキングの完全な計画案に手をつけるのだ。

 通常の班集会は、少なくとも毎月2回開くことが必要である。ところで、毎月2回以上班集会を持つことくらいは、君にとっては、たやすいことであるはずだ。君はもうすでに、班の集会の章で話し合った方針に添って、毎週集会を開いていることだろう。

 毎月、何らかの形を持つ野外活動を実施して、はじめて君は君自身が向上を目指している途上にあるといえるのだ。最初の月はハイキングに行き、次の月はキャンピングということもあるだろう。班とは、たとえて言うなら子犬のようなものなのだ。つまり定期的に野外の空気に触れてはじめて成長するのである。

 キャンポリーは、君の属する地区や連盟内ではおそらく最大の年中特別行事であろう。キャンポリーに参加し、キャンポリーの名誉賞を獲得するよう最善の努力をすることだ。キャンポリーが計画されていないときには、他の大きな行事に参加することだ。歴史的な名所の見学とか、地区ラリーとか、その他同じような行事がいろいろある。

 心からの親切で奉仕する仕事ほど、君の班のスカウト精神を強く示すものはない。これが正真正銘の班善行なのだ! それを示す機会は、君の身の回りにたくさんある。まずその機会をつかみ、計画を練り、そして実行するのだ。1年のうち、いつでもよいから、クリスマスや年末助け合い運動のとき、貧しい家庭や恵まれない子供たちに贈る品物の入ったかごや、近所に住んでいる病弱な婦人のための庭の手入れ、あるいは養老院やこども病院の訪問など、君の班全体としてできることを君は考え出すのだ。

 4ヶ月の間に班員2人がそれぞれ進級する。これはさほど大きな問題ではないはずだ! 君が実際に4ヶ月間に3人の班員を進級させることができるのなら、君は同じ期間に班員を全員残らず進級させることもできるはずである。基準に追いつくのだ。そしてそれを追い越すのだ!

 服装のきちんとした班を見たまえ。すぐれた隊には優れた指導者と、すばらしい活動とを備えた班があることに君は気付くだろう。これほどはっきりしているのだ。すぐれた班にいるスカウトたちは、世間に対して、自分たちは優れた班に属しているのだと言いたいのだ。質の悪い班にいる者たち----彼らは自分たちの属する班を世間に対して知らせるのを嫌うのだが、このことで君は、彼らを責めることができるだろうか。服装をよりよくきちんとしよう。さらに進んでもっともっときちんとしよう!

 君が実際に突っ込んでやっていけるものに、班の特徴という分野がある。すでに班旗を持っているなら別だが、まだ持っていないとすれば、ほんとうにすばらしい班旗を作るために、君は班員全員にスケッチさせたり、デザインさせたりして、忙しく立ちまわらせるのだ。班日誌に使う記事も班員全体に書いてもらうのだ。班記号やコールを使う習慣を身につけさせることだ。古臭い班の士気を引き立てるには、これ以上のものはない。

 さて最後ではあるが、その重要さの点では決してひけをとらないもの、それは班員の数である! 班員の数が少ないと、ゲームやキャンプやハイクのとき、いつも損をする。班に欠員がないようにすることだ。そして古い班員が上進したり離班したりするときには、新しい班員を迎えるというふうにして、常に欠員がないようにすることだ。


●思い出となる班

 「古い班員が上進したり離班する・‥」につれ君や君の仲間たちは「自分たちの班が永遠に続いたらなあ」とキャンプファイアの炎が、よく見なれた顔に映えたことを思い出しながら、集会やハイクやキャンプなどでいっしょになったとき覚えた感動や幸福感が、これから先何年も続くことを心の中で願うことだろう。

 しかし、悲しいかな、それは現実にはできないことなのだ。日がたつにつれて、君も、また君の班員も皆、大人を目指して成長していくのである。君たちはすべて、思い出の場所から新しい生活へと知らず知らずのうちに移動していくのである。これはすべての班が直面しなければならない事実なのである。

 とはいえ、班員たちが国内あるいは世界の各地に散りぢりになっていったにしても、そこには常に彼らを結びつけるものがあるのだ。それは、彼らの共通の思い出なのだ。これら数々の思い出は、彼らをして古い根っこから芽生え成長していく、新しい班を忠実に盛り上げさせるものである。

 少年たちが成長するにつれて、それぞれの生活のために遠く離ればなれにはなっても、班そのものは消え去ることはないのである。なぜなら、ひとりの少年が班を離れると、その少年に代わって新しい少年が入ってきて、古い班の持つ伝統を受け継いでいく体制が整っているからだ。

 このことは、君や君のもとにある班員たちが、理想として胸に抱いているのだ。つまり「僕たちの班は決して死なないのだ!僕たちの班の名と伝統は、受け継いでいかなければならないのだ!」

 他のすべてのことについても同じように、班長である君の役目は、常に述べた理想を実現するために、たいへん重いのである。古い班員がお互い同志、またその班員たちが名誉をかけて働いた班との連絡を保たせるための手助けをするために、君はいろいろと力を尽くさねばならないのだ。

 班員たちが班を離れ、遠方へ去っていく場合には、必ずその彼らとの文通によるつながりを持つことだ。また、新しく入ってくる少年たちには、この文通によるつながりが、班の将来にとって重要であることを自覚させるとともに、班内での出来事を、先輩たちに知らせることに興味を持たせるようにするのだ。

 君自身もやがては班を離れ、隊の指導者になったり、あるいは大学へ進み、そして就職することになるだろう。君が移動する前に、君の後任者として班長になる班員にとって、必要な訓練を本人が受けられるようにするために、君はあらゆる手を尽くさなければならない。君の後任者になる班員は、おそらく班の古い伝統を理解しているだろう。だから、君が今までやってきたのと同じ方法で、君の後任者は続けていけるのだ。君が強力な班を作り上げている場合には、君は自分の後任者に対して、成功するための最上の手段を与えることになるのだ。


●伝統を受け継いでいく

 古い班員たちが、お互い連絡を保っていくための最上の方法のひとつは「伝統集」である。この本の名前をつけた班があった。その班員たちは、自分たちの伝統集に6人の幹部班員の頭文字を集めてつけた。この本は先輩たちや活躍している現在の班員たちの間で回覧された。この本が手元に届くたびに、先輩たちや現在の班員たちは、前にこの本が回覧されたときから含までに経験したことを、書き加えていったのである。その本にはどんな記事が載っていたのだろうか。またその本は班の精神をどの程度にまで生き生きとさせつづけるのに役立ったのだろうか。

 とはいうものの、他にも方法はあるのだ。


●古い班と新しい班

 もうひとつの班は、帰省することのできる先輩たちをも集めて、年に1回集会を開く。新しい班員たちもいっしょになって、一夜を過ごすのである。キャンプファイアを囲んで、先輩たちは思い出を新たにするとともに、昔に帰って思い出の班生活を送れば、一方では新しい班員たちは、先輩たちの話に耳を傾けるのである。

 この班は、最初の何回かは、このような寄り合い集会を、班の創立記念日つまリ9月に催した。しかし、最近になって、この一夜の集会は、クリスマスや新年を迎えるために先輩たちの多くが帰省する、1年の最後の土曜日に変更された。大地が雪におおわれたとしても、何の差し障りがあろうか。彼らはすべて寒さに耐えてきたし、今までも野外で快適に暮らす方法を心得ているのだ。

 3つ目の班は、夏季に先輩たちを集めて2日間のキャンプ生活を送った。新しい班員たちと先輩班員たちがいっしょになって、小舟(カヌー)の旅をした年もあったし、隊の夏季キャンプで、先輩たちの班が新しい班として加わった年もあった。そして、この班はいつでも両手を広げて先輩たちを迎え入れたのである。先輩たちは来るときはいつでも昔の偉大な考え方をもたらしたし、またその班が古い精神のもとに活動を続けていく力をつけるのを助けてくれもしたのである。

 ところで先輩班員たち、つまり君の先輩たちが、このような再会の場に戻ったとき、彼ら自身得るものがあるのだろうか。

 そこには、変わることなく、むしろ彼らの心境に触れる何物かが生まれるのである。以前は決して表面にあらわれることのなかった感情が、彼らの内に湧くのである。少年たちの中の少年たちとして生活したこと、また真の班員として、栄光感や絶望感を分かち合ってきたことに対する感謝の念が湧いてくるのである。

 そして、そこから彼らの心は、彼らにとって思い出となっている班の指導者----班長----つまり君に向けられることだろう。


●君の受ける報酬

 班での生活が尊いものであったことを、先輩班員たちが君に語ったことはおそらくないだろう。彼らは、このようなことを言葉では表現しないのである。けれども、君は彼らが自分の班員たちが班内の生活で、彼らを楽しませることができるかどうかは、自分自身の努力次第だと自覚したからこそ、君は根気よく働いたのである。先輩班員たちが集まってきて、班員といっしょになって楽しく過こすという、ほかならぬこの事実が君にすべて物語っているではないか。つまり君の仕事が今もなお続いているということ----班や君自身が抱いている夢が、今もなお生きているということを。

 そこで、君はたとえどこに居住しようとも、君の心は真の班の真の班長になるために、君自身に与えられたチャンスと能力に対する、感謝の念でいっぱいになるのである。

(おわり)


 1975年10月号から、37回にわたって毎号連載してきたこの「班長のてびき」も、ようやく終わりを迎えました。この33年あまりの間に、日本のスカウト運動はますます発展拡大し、君たちの「兄弟」スカウトたちや指導者の数も増加の一途をたどって、今や全国27万人を数えようとしていることは、たいへんうれしいことであり、社会の人々からの期待もまた、大きくなっています。

 この「班長のてびき」は、毎号タイトルのところに掲げたように、ボーイスカウトアメリカ連盟が発行した原著「HANDBOOK FOR PATROL READERS」をもとにして、日本のスカウティングにできるだけ合うように、一部書きかえたり、補足したりしながら続けてきました。部分的には君たちの日常のスカウト活動の上になじまないところもあったと思います。

 しかし、ボーイスカウトの「班長」としての役割や責務、あるいは楽しさや苦しさ、そして大きな夢等々、これらは世界中のスカウト班長に共通の事柄ばかりであり、君たちの場合でも例外ではありません。

 この連載読物のもとの著者は、アメリカ連盟のウイリアム・ヒルコートという有名なスカウターで、古くから「グリーン・バー・ビル」というニックネームで各国によく知られています。“グリーン・パー」つまり「班長」あるいは「班長章」のビルさんというわけです。彼のスカウト活動についての著作は数多く、中でも「ボーイズ・ライフ」誌への連載と、この「班長のてびき」は、世界中のスカウトや班長たちから愛読されてきました。

 ボーイスカウト・アメリカ連盟が、全世界の人々を結ぶ友愛のきずなとして、この本を出版して各国のスカウト組織に贈ったことは、最初の号でも述べましたが、まことに意義深いものがあると思います。ここで、あらためて同連盟に感謝するとともに、君たちが、すぐれた班長として、ますます腕をふるうために、このてびきを活用してくれることを、心から願ってやみません。

西田徹/東京連盟渋谷第6団団委員

班長のてびきを読んで

  読むだけでも1週間もかかってしまう大作であったが、はたして班制度というものをご理解頂けたであろうか。40年ほど前に書かれたものなので、ひとつひとつの事例は時代遅れのものもあるが、重要なのは、その中に隠された班制度の本質を見抜くことである。

 要点をまとめてみる。
  • スカウティンクの活動の単位は「班」である。班の活動が中心であること。
  • 班長を中心に、自分たちでやらせること。大人が手出ししてはならない。
  • すべての活動は、ちかいとおきてを実裁とグループワークを経験し、社会に役立てる能力を身につけるために行われる。
  • 結果を求めてはいけない。結果はあくまでも反省材料である。
  • 班活動を実施するためには班長訓練は必須である。それはスカウト技能よりも、リーターシップの能力のほうが重視されるべきである。
  • 班長は、班の目標を持たなくてはならない。そのためには指導者が基準を明確に示してやらなければならない。

 これですべてではないだろうが、正しい現制度を展開するためのファーストステップにはなると思う。何度も繰り返すが、班長のリーダーシップがないとか、スカウトの技能低下云々は議論する必要はない。それぞれのレベルで進歩があれば、それでいいのである。

 最近になって気がついたことがある。
 「スカウティング・フォア・ボーイズ」の冒頭に、「少年はだれでも、国のために何か役に立ちたいと思っているだろう。簡単に役に立つ方法はボーイスカウトになることだ」とはっきりと書いてある。これを読んだ少年たちが班を作ってスカウティングを始めたのである。

 しかし、今、私たちはスカウトにこの運動の目的を伝えていない。何を遠慮しているのだろうか。目的を知らなくては正しい活動はできないのは当然である。班長は、少なくともこの書に記されている程度のことは知っているべきであろう。

 スカウティングを純正に発展させるためには、もちろん日連レベルでの定期的なプログラムの改正も必要であるが、いくらプログラムがよくなっても、肝心の班制度ができていなければ無意味である。それができるのは役員やコミッショナーではなく、隊長だけなのである。

 アメリカに「BSAはBaby Siter of Americaだ」というジョークがあるそうだが、私たちはそれを笑ってはいられない。班制度をしっかりと根付かせ、「Baby Siter of Nippon」と言われないうにしたい。

 スカウトが、社会や人々に対して役に立つ活動をするとき、この運動は成功したと言える。