班長のてびき

11.班と班の関係

 君の班がひとつの単位としてどれほど強く感じようとも、君の班だけで立っていけるものではないという事実を、見失ってはならない。

 君の班は、他の人々やグループに対して、はっきりした義務を負っている。万一君の班員が自分本意の考えに流れるようになったら、正しい進路からはずれることになる。もちろん君は、君の班をそんな方向に進ませるようなことはしないだろう。真の班精神は真のスカウト精神、つまり接触するすべての人々に対して手助けとなり、友好を深め、忠実であることに最善を尽くすことである。

 君の班と隊との関係についてはすでに述べた。これからその他の重要な関係について述べよう。


●班員の家庭

 班の初期の集会を班員たちの家でやったのであれば、君は班の両親たちとの協力関係の、よい土台を築いていることになる。班員たちの両親は、班の生活とはどんなものであるかを理解する機会を持ったわけである。自分たちの息子たちが、なぜスカウトであることに喜びを感じるのかがわかっており、班の希望や野心について、班員たちと同じように関心を持っていることだろう。

 班員たちを激励して、各々の家庭でできるだけスカウトの「おきて」に即して生活するようにさせること、すなわち信頼に値し、手助けを惜しまず、快活であることなどである。自分たちの息子が、スカウト技能が進歩するばかりでなく、家庭生活においてますます責任あるメンバーになっていく(すべてスカウトのおきてに従うために)のを見ることほど、スカウティングは価値あるものだということを両親に確信させるものはない。

 スカウティングがどういうものであるかを両親が知っている場合は、隊集会や班集会に息子たちを100%出席させるのに、何の困難も感じないだろう。しかし、スカウティングが時間を取り過ぎないように注意しなければならない。両親もまた自分たちの息子を見たいのである。スカウティングは、子供とその両親との間に強い同志関係を奨励すべきであって、決してそれを妨げてはならない。

(いつも接触を保つこと)
 少年がスカウトに参加する----その瞬間から、君がほんとうに関心を払っているということを、常に親たちに感じさせること。

 新しく入団した少年が、参加の準備ができ次第彼の家に訪ねていくこと。彼の部屋でスカウトになるために必要な事柄について、彼に手を貸すこと。同時にまた両親に、彼らの息子のこれからのことを説明する。できるだけ少年の家庭の状況を学ぶこと。そうすれば少年が持っているかもしれない変わったくせや、特別な間題点を理解することができるだろう。

 班の誰かが病気のときは、彼の家を訪ねて見舞ったり、電話で病状を尋ねる。班全体としても病気している班員の心を引き立てるために、何かを考え出すこと。

(約束を守れ)
 両親の支援を失わないためには、両親との約束はどんなものでも、文字通り守ることが必要である。もし両親に対して、その子供を班集会から9時半に帰すと約束したら、彼が時間どおりに家に帰るように取り計らうこと。閉会時間が過ぎても、だらだらと集会を長引かせてはならない。そして班員たちがまっすぐに家へ帰るようにすること。

 「スカウトは誠実である」もし君が君の分を守り、正確にそれに従うならば、両親もまた、その分を守り、その子供たちを各種の集会の時間に遅らせたり、また使い走りやその他の家庭の雑事のために、班ハイクの出発予定時間までに班員たちが決められた場所に集合するのを遅らせるようなことは、決してないであろう。

家庭での集会----
 再び家庭での集会に戻るが、それは両親に接触するまたとないよい機会である。班の本拠ができあがった後でも、両親との交わりを維持するために、ときどき班員の家で集会をするように取り計らうことは必要である。その場合、両親は君が運営する集会の模様によって、君の班を評価するということを忘れてはならない。規則正しい、よい集会をもつように注意しなければならない。

スカウトの進歩に両親の興味を持たせる----
 班で何をやり何を学んでいるかを、班員たちが両親に話すように取り計らうこと。ある班員が1級章課目の料理で成功を収めたことを知れば、その母親は非常に興味を持つことだろう。彼がもし炊事場では器用であり、必要であれば家族全員のための夕食でも作れるということを、母親に実地で説明した場合はなおさらであろう。彼がまた、最初の技能章をもらうときは、彼の父親は誇りで胸がふくらむに違いない。父親が息子に手を貸した結果としての技能章であればなおさらのことだ。
 しかし、班員や両親個々の問屋を解決するだけで満足してはならない。両親たちの、自分たちの子供に対する関心を、班全体に対する関心、すなわち班が成し遂げる名誉や資金づくりのための諸活動や、班自体のキャンプ用具を調達する努力などに対する関心にまで、拡大することができる。

家庭行事----
 「両親の夜」は、隊ばかりでなく班でも行なうことができる。班が生まれて間もなくこのような行事を催すことは効果的である。きわめて友好的な行事にして、班がどのようにして発展し、またどんなことができるかを両親に示すこと。
 「父と息子のハイキング」は、班の規模でりっぱに行うことができる。ほんとうのキャンプの夕食を料理できる場所へのハイキングにする。父親たちと息子たちがいっしょにやって楽しめるスカウトゲームをいくつか準備する。夜が来たらキャンプファイアの周りで、父親たちに昔話をしてもらう。忙しく立ち働いている父親たちが、昔やったいろいろな冒険の話を聞いて、君はびっくりするに違いない。
 大事なことは、お母さんたちを忘れないことである。お母さんたちは料理をしたり皿を洗ったりする必要のない、戸外での「母親の夕食会」に招待されるのを、とても喜ぶものである。
 あるいはまた「家族全員集合」のピクニックをやり、皆が楽しむのもまたよい考えではないだろうか。


●教会と学校

 君の班の、教会と学校に対する責任は、家に対する責任と同様に重要である。

(教会に対する責任)
 どのような班の活動も、班員たちが教会へかようのを妨げるものであってはならない。

 班員たちを励まして彼らの宗教的義務を積極的に果たさせ、彼らの教会のために計画された奉仕活動には、必す参加させること。ことに教会が育成母体になっている団に君が属している場合はなおさらである。

 また、君の班員たちに他人の信仰を尊重させ、決して他の人の感情を害するようなことをやったり、言ったりしないように訓育するのに、君が最善を尽くさなければならないことは言うまでもない。

(学枚との協力)
 学校教育から最大の効果を得させるのに、君は班員たちに、静かではあるが強い影響を与えることができるだろう。

 班員たち個人またはグループに対して、君は時に応じて一言二言話をして、班の活動でも、また学枚でも、彼らが班の信用を高めることを君が期待していることを、はっきりわからせることである。

 班として君の先生たちに何か奉仕してあげられないかどうか、いつも気をつけていることが必要である。

 学校のために全体として行なう善行は、いつでも感謝されるものである。


●設立育成団体

 教会であれ、学校であれ、奉仕団体であれ、また何であれ、君の団を育成する組織や団体に対しては、君の班は特別に忠実であって、奉仕を惜しんではならないことは言うまでもない。育成団体は、団の継続的な運営の責任を負っているのであるから、君たちもまた最善を尽くしてそれに報いなければならない。

 たとえばある地域団体が、通知状配達人か、会場整理係などを探しているなら、君の班としてのサービスを提供するのにちゅうちょしてはならない。他人が頼んでくるまで待たないで、自分から進んで行なうのであればさらによい。心の目を見張って、何をすることが必要かを知り、それをやることである。

 この同じ考えを、他のあらゆる形の設立育成団体にあてはめること。もしそれが学校であれば、近くの道路の横断歩道の整理をするか、校旗の上げ下ろしをするか、または防災訓練の指揮をすることなどを申し出る。もしもそれがロ−タリークラブやライオンズクラブなどであれば、やってもらいたがっていることを見つけ、彼らが君たちや団のためにやっているすべての事柄に対する感謝のしるしとして、それをやること。

 これらのことについては、実行前に君の隊長に相談すること。育成団体のための奉仕として君の班が企てるものは、何であれ、その組織や団体に関係のある人と連絡をつける必要があるときは、必ず隊長の全面的な承認を得てやらなければならない。

 いろいろのアイデアや行動にみちあふれているのはけっこうであるが、自分の権限をこえないように注意しなければならない。

 もし君が、ほんとうは隊全体としてやるべきことを自分でやろうとした場合、たとえそれが君の善意からしたことであっても、ちょっとした行き違いから、やっかいなことになるものだ。


●班の善行

 少年たちがスカウトになったその日に誓った、「日々の善行」という義務を、まじめにしかも忠実に班員たちに受け入れさせるのが、班長としての君のつとめである。君は君自身が手本を示し、またときどき班の特別善行計画を立てたりして、班員たちをこの点で助けることができる。

 班員が8人集まればひとりではとうていできない善行をやることができる。老人や病人だけの家庭の手助け、雪かき、危険な交差点で警察官などの指導を得ながらの歩行者の安全通行、教会の会報配布、野鳥のえさ台にえさを絶やさないこと、クリスマスのプレゼントのための本やおもちゃ集め、火炎予防の呼びかけなどは、皆班にとってやる価値のある事柄である。8人が分担すれば何も困難なことではなく、スカウティングがどんなものであるかを示す絶好の機会である。

 特別スカウト善行は、いつも秩序正しく行なわれる。隊の夏季キャンプの準備として、班はキャンプ費用が払えないためにキャンプに参加できない班員のための資金づくりをするかもしれない。また、班のキャンピングの途中、班員は自ら進んで農業の収穫や手入れの作業などに手を貸すことができる。             .

 これらのことは、それ自体やりがいのある事柄であるが、また同時に、他人の助けになるために自分の最善を尽くしているという満足感を、班員の全部こ与える。お互いに仕事と犠牲を分け合い、忠実に仕事をやっていくことは、班精神と班の団結力を養い、強化するすばらしい手段である。

 班員たちをこの点でチャレンジさせるのは、班長である君なのだ。班善行のアイデアを持ってこさせること。君自身でもまた考え出す。そして十分討議した上で、やるべき善行を決定する。さらに最良の結果を得るにはどうしたらよいかを考える。各人にその分担をさせることにして、仕事にかかる。

 しかしながら、君が何をやろうとも、奉仕活動はそれが大きなものであれ小さなものであれ、心から、しかもそれを行なうことに対する満足以外に何の報酬も考えないでやらない限り、ほんとうの善行ではないということを、班員たちにしっかり悟らせることが必要である。この精神で行なわれさえすれば、班の善行は班員ひとりひとりを、よりよいスカウトに育て上げるのに大いに役立つことだろう。
班長のてびきを読んで

 日本のスカウトの多くは(指導者も含めて)、自分たちだけが楽しむことしか考えていないということは、極めて残念なことである。

 B-Pは「最後のメッセージ」で、「他の人に幸福を分け与える」ことを説いている。それがスカウティングの目的である。それを実践するためにスカウティングを展開し、第一段階として、まず家庭、学校、教会(自分が信仰する宗教)から始めるのである。

 例によって特に大切な部分を引用する。
  • 班員たちを激励して、各々の家庭でできるだけスカウトのおきてに即して生活するようにさせること。

  • 班の誰かが病気のときは、彼の家を訪ねて見舞ったり、電話で病状を尋ねる。班全体としても病気している班員の心を引き立てるために、何かを考え出すこと。

  • 班で何をやり何を学んでいるかを、班員たちが両親に話すように取り計らうこと。

  • 君の班の、教会と学校に対する責任は、家に対する責任と同様に重要である。

  • 班員たちを励まして彼らの宗教的義務を積極的に果たさせ、彼らの教会のために計画された奉仕活動には、必ず参加させること。

  • 君の班員たちに他人の信仰を尊重させ、決して他の人の感情を害するようなことをやったり、言ったりしないよう訓育するのに、君が最善を尽くさなければならないことは言うまでもない。

  • 班の活動でも、また学校でも、彼らが班の信用を高めることを君が期待していることを、はっきりわからせることである。

  • 君の団を育成する組織や団体に対しては、君の班は特別に忠実であって、奉仕を惜しんではならないことは言うまでもない。

  • 少年たちがスカウトになったその日に誓った、「日々の善行」という義務を、まじめにしかも忠実に班員たちに受け入れさせるのが、班長としての君のつとめである。

  • 君が何をやろうとも、奉仕活動はそれが大きなものであれ小さなものであれ、心から、しかもそれを行うことに対する満足以外に何の報酬も考えないでやらない限り、ほんとうの善行ではないということを、班員たちにしっかり悟らせることが必要である。

 このように、周りの人々との関わりをしっかりと認識し、助け合うことを実践することがスカウティングにおいて最も重要なプログラムである。そして、この小さな積み重ねが、VS、RSと上進するにつれて、国レベル、国際レベルで役に立てるようになるのである。

 スカウティングは、社会に役立とうとする意識を高め、それを実行することを、体験こよって学ぶ教育運動であるということを忘れてはならない。