班長のてびき

9.班のハンドクラフト

 忙しい班はよい班である。だから正規のスカウト技能のほかに、班集会やキャンプでの忙しくない間に組み入れることのできる、有意義でしかも興味のあるハンドクラフトを探さなければならない。とにかく何をやるにしても、りっぱなものを作り出すことだ。君の班でやることは何でもりっぱであるという名声を、君の班の伝統にすることだ。

 最初の大きな仕事は、おそらく班の本拠を作ることだろう。次に来るのが、班のキャンプ用具を作る仕事だろう。このような大きな仕事をいっしょにやることによって、つまり夢と努力を分かち合うことによって、班員各自がチームワークと協力の意味と重要性を知るようになる。

 班員たちが持っているかもしれない特殊な能力をうまく利用すること。もしあるひとりが木工具の使い方が上手であれば、班の本拠のために家具作りをさせる。班の美術家には、璧の装飾の仕事をさせる。木彫りや金属細工または写真に興味を持っている者には、班の本拠の装飾こそれぞれの腕を振るってもらう。なわ結びに熱心なものには、結び方の標本板を、自然研究者には自然物の展示標本をそれぞれ作らせる。

 班員全部の力を必要とするテント、その他のキャンプ用具の製作では、皆が力を合わせて仕事をやり遂げる。


●資金作りのためのハンドクラフト

 お金を作るためのハンドクラフトを選ぶとき、忘れてはならないことは、専門化することがお金になるということである。人々が何を買いたがっているかを見つけてそれを提供する。

 ある班は、クリスマスのテーブル装飾の仕事をした。班員は枯れたカバの木をいくらか切り倒す許可をもらった。それを長さ30cmずつに切り、そのひとつひとつに穴を3つあけて、赤いろうそくを立てた。それからクリスマス用の緑色の絵の具を溶かして吹きかけ、装飾を施した。この班は40以上の注文を受けて、班のためによい資金を作った。

 別の班は、鳥の巣箱作りの特技を持っていた。2種類の巣箱を設計し、その地域の愛鳥クラブや婦人会を通して注文を受け、とてもよい成績を示した。

 資金作りのあらゆる活動で、大量生産方式は非常に役立つ。簡単な設計を考え出し、それからいわゆる流れ作業方式を作り上げること。

 班のあらゆる事柄の場合と同様に、皆がこれに参加しなければならない。たとえばシルク印刷のグリーティングカードを作って売ることが決まったら、班の“美術家”にデザインを考えさせ、もうひとりにそれを原紙に写させ、そして他の班員たちに紙切りとインクつけと印刷をさせる。このようにして仕事を早く、しかも効果的にやることができる。


●その他の参考事項

 この本の限られたページで、班のハンドクラフトについて詳しく述べることは不可能である。いろいろなハンドクラフトの資料を見るとよい。各種の図は君が手技を始めるためのアイデアを提供してくれるだろう。(月間「スカウト」誌にも参考になる資料が載っているから、ぜひ活用してほしい)

 忙しい班の忙しい班長になること。手技を班の伝統にし、それを楽しみのため、訓練のため、自己表現のため、資金作りのため、そして奉仕のために利用すること。


●班の本拠

 たぶん君たちは、隊の集会室の片隅に班の仮本拠を置いているだろう。その場所がほんとうに君の班をあらわすように装飾すること。もし許されるならその装飾を永久的なものにする。もしまたその部屋が他のグループにも利用され、隊集会のないときは、装飾を取り外してどこかにしまっておかなければならないのであれば、図で示すように折りたたみ式の班のつい立を作る。そのつい立をスカウト技能作品、記録表、写真その他で飾るとよい。

 そして逆に班の本拠に作りかえることのできる部屋か小屋を手に入れることに成功したら、班員全員が集まって、どのようにしてそれを作りかえるかを決める。それを正規のスカウト技能室にすることもできるし、開拓者やインディアンの雰囲気を与えることもできる。この本に載せてある絵は、この点で参考になるだろう。



(スカウト技能的班の本拠)
 まず、大掃除から始める。それから班の好きな色で壁や天井にペンキを塗る。もしそうしたいなら壁の上方の小壁に、班生活の絵を書いてもよいし、あるいは簡単なスカウトの模様を書いてもよい。

 田舎風の素朴な家具----椅子、ベンチ、テーブル、机、本その他展示棚などを作る。荷造り用の木枠を家具作りに利用するとよい。

 それから壁に何を掛けるかを考える。

 一方の壁にわが国の国旗やスカウト運動のある国の旗、信号旗、吹流しや旗布などを掛けるのもよいだろう。あるいはまた、スカウトのちかいやおきてが書いてあるポスターや、ベーデンパウエル卿やその他スカウティングで著名や人々の写真を飾るのもよい。

 またもう一方の壁には、各スカウトのためにべニヤ板の額を掲げ、彼らの写真と、特修章や技能章、班での記録などを展示するのもよいだろう。

 あるいはまた、班キャンプの記録写真を集めて飾ってもよい。君の町の周辺地域の大きな地図を掲げておいて、それで君の班ハイクのコースを決めるのも一案である。

 また他方の壁には、ロープの結び方の標本や、注意事項や班訓練に用いる黒板を掲げるスペースもあるかもしれない。それからもちろん班の文庫のための棚もつけなければならない。

 片隅には、班のキャンプ用具を入れる箱かロッカーを置き、もう一方にはいろいろな自然の展示物やキャンプファイアやテントや橋の模型を置くのもよい。

 最後に、班旗のためのスタンドを作り、旗がいちばんよくその効果を発揮するように、その上にのせる。



(開拓者風の班の本拠)
 開拓者風の本拠にするには、壁を木の板で覆い、丸太小屋の中にいるような気分を出す。家具には荒削りの木を使用し、壁には動物の皮や雪靴やおの、角製の火薬入れなどを掛ける。シャンデリアは古い荷車の車輪で作る。



(インディアン風の班の本拠)
 壁にインディアンの毛布や髪飾り、盾やトーテムポールなどを節りつけて、インディアン風の本拠にすることができる。部屋の中央に人工の電気式キャンプファイアを置き、その周囲に会議用の丸太の席を作る。

 部屋の大きさが十分なら、キャンパスで小さなティピー(インディアン式テント小屋)を建て、その中にもぐりこんで特別な会合をすることができる。

 班の本拠を作る方法には限りがない。要は創意を働かせることである。しかし、その結果はほんとうに班の個性と精神をあらわすものでなければならないことはいうまでもない。


●班のキャンプ用具



(テント)
 テントのデザイン、大きさ、値段は千差万別だ。しかしいちばんよいテントというものは、買ったものではなく、自分たちで作ったものである。自分で作ると、ほんとうに自分がほしいテントを獲得できるわけである。そのうえ自分の手を下して作ったテントに寝ることには、特別な喜びがあるものだ。

 テント作りを始める前に、先のことを考えなければならない。班の1、2泊キャンプに1年中使えるだけでなく、隊といっしょにやる夏の長いキャンプにも使えるようなテントを作ることを考えよう。このためには、這って出入りするような種類のテントではなく、手広く、しかも軽いテントでなければならない。2人用のテントとしては、2.4m×2.4m、高さ2m程度のものがよい。スカウトで用いられるテントのデザインはいろいろあるが、指導者ともよく相談して、実用的なテントを作ってほしい。



(班のキャンプ用具袋)
 君自身が作れる班のキャンプ用具を、いくつか挙げてみよう。

 キャンバスの水おけ(布バケツ)は、防水グッズで作れる。まず布を切り取り、長い布の横の縁を縫い合わせる。もう一方の縁を縫いつけ、内側をひっくり返し、もういちど縫い目に沿って縫う。はと目を2つずつ布の上方につけて、持ち運び用のひもをそれに通す。出来あがったおけが、縫い日のところから水が漏るならば、パラフィンを塗ってアイロンを当てて溶かし込む。

 キャンパスのたらい(洗面器)を作るには、布の両端を縫いつけ、それから底をつける。内側を外へひっくり返して、もういちど縫い目に沿って縫う。上方をへり縫いする。必要なら前記のおけと同じようなパラフィンを溶かし込む。

 乾燥した食料を入れる塵除け食料袋は、固く織られている木綿生地などで作る。

 防水肉入れ袋は、厚い生地かあるいは軽いズックで作る。生地が防水でなかったら、パラフィンの固まりを十分に塗りこんで、温かい(熱くてはいけない)アイロンを当てる。熱がパラフィンを溶かし、生地の繊維がパラフィンを吸い込む。

 パン入れ袋を、乾燥食料袋と同じ要領で、パンの大きさに合わせて作る。

 君自身の用具入れ袋を作る前に、商店などに、おあつらえ向きのプラスチック製の袋がないかどうかを調べる。


●個人のキャンプ用品



(パック、ザック)
 テントの種類と同じように、パックの種類はたくさんある。買ったり自分で作ったりする前に、必ず君の目的にかなうだけの大きさのものを入手するように気をつけること。第7章班のキャンピングの個人装備品のところで挙げた、提案事項を参考にしてほしい。

 自分で作るときは、ます使用する材料を決めることから始める。おそらく防水の厚いズック生地がいちばんいいだろう。90cm幅のズックかキャンバスを2m45cm。ほかに9番銅リベット4箱、25mm型Dリング24個、50mm幅帯ひも1m、25mm幅帯ひも170cm、縞めつけ用ひも5mがいる。

 材料の上に型をとる。もし君の材料の幅が指示した幅と違っているときは、まず紙で型をとり、それを生地の上にのせて生地を経済的に使うようにするとよい。

 生地を型のとおりに切り取り、リベットで継ぎ合わせる。パックの胴体は、45cm×45cmの大きさの木箱またはタンボール箱に、生地をかぶせて作る。リベットで止めたあと、内側を外側にひっくり返す。フラップ(垂れ布)をつけ、パックができあがったら、帯金にリベットを打って仕上げる。



(個人用具袋)
 キャンプの専門家がよく用いる「袋の中に袋を入れる」方式については、リュックサックの詰め方の章で触れた。

 次の袋が必要である。すなわち、衣類袋、洗面具袋、靴袋、食器袋、補修用具袋などである。 ほとんどどんな種類の木綿生地でも、これらの袋を作るのに使える。防水材料を使って洗面具袋を作れば、他の品物を濡らす心配なしに、濡れたタオルをそこに入れることができる。

 衣類袋は、生地の周囲を全部縁取りすることから始める。次に点線に沿って折り曲げ、端に沿って縫い、ポケットを2つ作る。それから内側を外へひっくり返す。

 袋の片側は予備の衣類用、片側はパジャマ用である。

 食器袋は、衣類袋と同様こ縁取りから始める。それから小さな布を袋の前面につけ、3つの仕切りを作って、それぞれナイフ、フォーク、スプーンを詰める。最後に側を縫い上げ、閉めるためのボタンかファスナーをつける。


●自然物利用のハンドクラフト



(自然物コレクション)
課業木、岩石、昆虫、押し花、鳥の羽などの標本を作る。
材料どの標本を選ぶかによって決まる。
順序
  • 木の標本を件るには、木目がどういうふうに走っているかを示すために、木の目に沿って横または斜めに切る。仕上げをするとどうなるかを示すために、切リロの半分を磨く。そして標本を板の上に並べる。
  • 岩石の標本は、板を2枚重ねてその上に置くことができる。上の板に丸い穴をあけ、2枚を釘付けする。穴に溶いた石膏を詰め、その中にサンプルを置き、石膏を固まらせる。
  • 昆虫の標本は、ライカー式の箱に並べる。これは綿を詰めた浅い箱で、昆虫をそれぞれの位置に置き、ガラスを張って、テープでガラスを固定する。
  • 押し花、押し葉、烏の羽根は薄いボール紙か、植物標本紙にプラスチックテープなどで固定する。

(リ一フプリント)
課業木の葉の標本を集める。
材料プリントの方式による。
順序
油煙印刷
1枚の紙に少量のグリスを一様に塗る。ろうそくに火をつけ、その上に紙をかざしてグリスの塗ってある部分を黒く汚す。木の葉を、裏面を下にしてすすけた部分に置く。新聞紙をその上に置き、指で静かにこする。木の葉をきれいな紙の上に移し、もう1枚の紙をその上に置き、実の中心部から外側に向かってもう一度静かにこする。上の紙と木の葉を取り除く。

はねかけ印刷
木の葉を紙の上にピンで止めるく歯ブラシを墨に浸し、小さな棒か釘で毛をひっぱってから放す。こうすると祇の上に墨がきれいにはねかけられる。木の葉の周囲に墨が一様にはねかけられるまでこれを続けてから乾かす。

印刷用インクでの印刷
印刷用インクか、謄写版用のチューブ入りインクを手に入れる。ガラス板の上にゴムローラーで少量のインクを一様に伸ばす。木の葉の裏面を上にして新聞紙の上に置く。ローラーでそれにインクをつける。インクのついた面を下にして、木の葉をきれいな紙の上に置き、油煙印刷のときと同じようにこする。

青写真印刷
やわらかな光の中で、木の葉を青写真紙(感光紙)の上に置き、ガラスをのせて紙が灰色になるまで、明るい太陽の光線に当てる。2〜3分間木の葉の模様がきれいな青色になるまで水道の水で洗う。紙にはさみ、押しつけて乾かす。

(原形作り)
課業木の葉、木の枝、動物や鳥の足跡の原形を取る。
材料布料 焼き石膏、細工用粘土
順序
  • 木の葉か枝の原形をとるには、まず粘土を丸いビンで薄く引き伸ばす。木の葉を裏面を下にしてその粘土の上に置き、はっきり木の葉の形が粘土にうつるまで、ビンを木の葉の上で転がす。木の葉を取り除き、型に取るために木の葉の形の周りに、粘土で2〜3cmの高さの璧を作る。
  • 少量の水に、焼き石膏を水の中央にその石膏が島の形に積み重なるまで入れてから、十分にかき回す。その混合液は溶けたアイスクリームくらいの濃度でなければならない。
  • その液を囲いの中に注ぎ、1時間くらいそのままにしておく。固まったら粘土の璧を取り除き、石膏型を取り出す。ナイフで縁を削り、乾かしてから普通の宇野具を塗る。
  • 足跡の型は、地面に残っている動物や鳥の足跡から直接作る。はっきりした足跡を選ぶ。2〜3cm幅の原紙かボール紙で作った帯を、ピンかクリップで止めて輪を作り、足跡の周りに置く。その輪の中に繋いた石膏を注ぎ、石膏が固まるまで放置する。完成した型を流れ水で洗って汚れを落とす。

(鳥の巣箱)
課業ミソサザイ、ツグミ、キツツキ、コマドリその他の野鳥の巣箱を作る
材料杉、松、ポプラなどの木、製材所の切りくず(皮のついているもの)は、安価でよい材料になる。にぶい色の塗料、たとえば茶色、緑色、灰色など。
順序選んだ巣箱の形によって異なる。屋根は雨水を流すために十分な傾斜をつけ、鳥の出入リロに雨が吹き込まないように、ひさしを5cmくらい長くする。巣箱の大きさと出入リロの直径は、目的とする鳥の大きさに合わせて作る。シジュウカラやミソサザイには、間口と奥行きが12〜13cmで高さは15〜20cm、出入り□の直径は3〜4cmが適当であり、また、キツツキ用には高さ20〜35cm、出入り□の直径4〜6cmの円柱状のものでもよい。


●いろいろなハンドクラフト

(レザークラフト)
課業おのやナイフのさや、カメラケース、救急箱、書類かばん、二つ折り財布、本のカバー、ベルト、かばん、小銭入れなどを作る。
材料皮革(作る品物による)、皮ひも、皮の穴あけ、ナイフ、スタンプ道具など。
順序自分でデザインするか、あるいは参考資料の中からデザインを選ぶ、皮を切り、穴をあけ、皮ひもで縛り合わせる。品物の上にいろいろな模様をつけようと思うなら、各部分を組みたてる前にそれをすること。

(皮ひも編み)
課業ネッカチーフスライド、呼子のひも、ループタイなどを作る。
材料円形の皮、鋭利なナイフ、切り台、あるいは本物の皮の代わりに手芸用の厚い布。
順序円形の皮材から皮ひもを切り取る。皮ひもを編むには、図に示すように2本のひもを並べる。左手で交差した2本のひもの中央をつかむ。白いひもの間から手を入れ、黒いひもの左のほうに引き出す。黒いひもを交差したひもの後ろに回し、白いひもの間を通して引き上げ、左手の上を通して下のほうの白いひもの上にもってくる。以下同じようなやり方を繰り返すが、図に示すように、左手を右手にかえなければならない。これでひと段落ついたわけで、これを繰り返していく。

(リノリューム版印刷)
課業挨拶状、クリスマスカード、班のレターヘッドなどを作る。
材料厚さ6mm程度のリノリユーム版、小さいナイフ、またはステンシルナイフ、木版用彫刻刀2本(∨字型と∪字型)、リノリユーム印刷用インク1本、ゴムローラー、ガラス板、できれば洗濯用のしぽり機1台。
順序
  • 黒と白がはっきり対照的になっているデザインを選ぶ。透明な製図用紙に輪郭をとる。リノリュームの上にカーボンペーパーを置き、その上にデザイン(模様)が反対になるように表を下にして製図用紙の輪郭を置いて、デザインの背面を通して輪郭をとる。ステンシルナイフの刃を輪郭の線から少し離して輪郭を切り取る。または∨型彫刻刀を用いる。
  • 輪郭を切り取ったあとで、印刷で白く見える部分を∪字型彫刻刀で削り取る。ガラス板に少量の印刷インクを伸ばし、ローラーを前後左右に回して、インクが一様に広がるようにする。ローラーでリノリューム版にインクをつける。その上に印刷紙をのせ、スプーンのうしろでこするか、用紙と版をしぼり機こ通す。

(ネッカチーフスライド)
課業ネッカチーフスライドを作る。
材料木、牛の角、皮革、皮ひも、.小羊の背骨、カバの木の皮、電線、竹、亀の甲等々。
順序使用する材料によるが、創意を働かせること。

(金属細工(メタルワーク))
課業皿、おわん、ランプ、ろうそく立て、ランタン、デスクセット、宝石細工など。
材料銅、真鍮、アルミニウム、銀、しろめ(すずと鉛、真鍮、銅などの合金)
順序作るものによって異なる。

(模型製作)
課業橋、信号塔、キャンプファイア、道標、キャンプ備品、丸太小屋、キャンプサイト、テントなどの模型を作る。
材料棒、石、火のための人工火花、ひも、立木の模型を作るために、棒にスポンジをつけたものや乾いた木の幹、草の模型を作るための乾燥粉末コケまたは色つけしたのこぎりくず。湖をあらわす鏡、据えつけ台を作る板など。
順序作る品物によって異なる。

(ブリキ缶細工)
課業料理鍋、ランタン、ろうそく立て、小物入れ、コッフ、スコップなどを作る。
材料いろいろ大きさのブリキ缶、針金、釘、ブリキの切れ端。
順序図に示したものを参考に、各自でよく考えて作ること。

(木工)
課業木工の仕事には限りがない。小さな彫刻品から複雑な家具や小屋作りまである。
材料何を作るかによって決まる。
順序何を作るかによって決まる。

 ハンドクラフト関係の参考書は、色とりどりのものが市販されているし、ときどきこのスカウト誌にも載ることがある。また、君の住んでいる地方の図書館にも、おそらく数多くの資料が所蔵されているだろうから、ぜひ訪ねてみるとよい。創意と工夫と班員の協力によって、すばらしい作品ができあがることを期待する。
班長のてびきを読んで

 この章を読んで気がついたのは、ハンドクラフトはグループワークのひとつである、ということであった。班の本拠を作るのも、資金を作るのも、備品を作るのも、すべて班精神を高揚させ、グループワークを経験させるためだったのである。また、それが奉仕活動に結びつけばすばらしいことでもある。

 しかし、今までクラフトという作業は、指導者主導・個人参加のプログラムになってしまっていた。そこには班長の出る幕はないし、グループワークのかけらも見当たらない。それはもはやスカウティングではなかったのである。クラフトだけでなく、ハイキングもキャンプもその他の活動もみな同じである。「目的」が見失われて、意味のない活動をしていた。私の理解不足が班制度を崩壊させてしまっていたのである。

 物を作るのがクラフトの目的ではない。知らず知らずのうちにグループワークの能力を高め、社会に貢献できる人となるための訓練手法である。