- 班集会を何回か重ねると、そのうちに班の誰かが「ハイキングをやることにしては?」と言い出すことは確実である。すると間髪を入れすに皆が「それはいい。いついくことにしよう?」「何を持っていくんだい?」と応じてくる。君もまた行きたいと思うことだろう。その少年たちの一団をほんとうの班に仕上げるのが君の願いであり、ハイキングの上手な班こそほんとうの班である。しかし、班集会を運営することと、ハイキングをすることには大きな相違がある。
- ●班ハイクにともなう責任
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- 集会とハイキングとのもっとも大きな相違点は、ハイキングには集会よりも大きな責任が伴うということである。屋内でおこなう集会には、あまり危険はない。屋外の場合でも家のまわりでやる場合には危険はない。
- しかし、グループを野外に連れ出す場合には、めんどうなことに出会う可能性も出てくる。まず交通の危検があり、通ってはならないがけや沼地がある。野外で炊事するために火を起こし、その扱い方を誤って山火事に発展させたりする恐れもある。
- 予期しない出来事がいろいろと起こって、君の指導力が試されることになったりする。もちろんどんな状態が発生しても、それを処理し得るという十分な確信がなければ、君は自分の班をハイキングに連れ出したいとは思わないだろう。単に物は試しという軽い考えで最初のハイキングをすることは許されない。
- 事がうまく運ぶように、すべてに計画を立て、その計画に従って実行しなければならない。これはあらゆるスカウトハイキング技能の訓練を受けてはじめて、確実を期すことができることである。
- 物事をスムーズにおし進めるためには、すべてどのようにやればよいか、そのコツを隊のハイキングで見せてもらえることはいうまでもない。
- しかし、君が参加したリーダーのハイキングはもっと役に立つことだろう。このようなハイキングは、少年幹部に班長の訓練を施すのに非常に重要なものである。
- ちょうど班長会議をおこなうために隊長や副長、上級班長や班長たちが集まるように、その同じメンバーがあらゆるハイク技能を修得するために、ハイキングに時たま出かける。君はこのリーダーの班で、いろいろと楽しい思いをするであろうが、同時にまた、ほかのリーダーたちから君自身の班に用いることのできる、いろいろな事柄を学ぶことになるのだ。
- ●ハイキングとは?
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- 元来ハイキングとは、歩いて長い旅をする意味だったが、現在では実際にはほとんど歩かなくても、野外に出て行きさえすれば何でもハイキングとみなされる。
- それで、これから説明するハイキングは、長距離、短距離にかかわらす、またまる1日、あるいは数時間であれ、班を屋内から自然の中に連れ出し、自由な感じを与え、エネルギーを発散させる待望のチャンスを与えるようなものを意味する。
- ●2種類のハイキング
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- 便宜上、ハイキングを2種類に分けてみよう。
- サンドイッチハイクとチョップハイクの2つである。
- サンドイッチハイクとは、火を起こして料理をする時間を省くものである。特別な訓練、たとえば信号、通信、追跡、自然界に関する知識の開拓などの目的を持っていて、1分でも余計にその目的のために時間を費やしたいときに向く。あるいは火をたくことが許されない地域にハイキングする場合、または何かほかに理由があって、食事時間を短くしなければならないときなどに適する。
- とにかく、サンドイッチハイクでは、すばやく食べることができて、しかも、後片付けにもあまり時間がかからないような食物を持っていくのである。もろろん持っていくものをサンドイッチにしなければならないということはない。創意に富んだ、特に頭のいい食糧係のいる班では、何かもっと心のおどるものを考え出す。つまり、簡単で時間のかからない食事を計画することである。
- チョップハイクとは、火を起こすことと料理をすることが主な位置をしめるようなハイキングをいう。火を使用するために、リーダーとしての君の責任がより重くなり、料理をするためには、出発前に、より多くの計画と準備をしなければならなくなるということは、容易に理解できる。この場合“チョップ”(厚切りの肉)は必ずしもチョップにする必要はなく、好みどおりの混ぜ方で、肉と野菜を炊き合わせてもよい。
- 最初の数回にわたるチョップハイクでは、班員たちに各自、自分の食事を準備させる。そうすると彼らは、2級スカウトの必修課目をやるための訓練を受けることになる。後日、君の班は、キャンピングのための班の料理法取得を本格的にやり、班員たちに、順番に、班全体の食事を料理させるようにしなければならない。
- ●班ハイキングのための指導力
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- 班のハイキングに関連して、まず君がしなければならないことは、君自身の準備はどうかを確かめることである。「もし、班員たちをハイキングに連れ出したとき、どんな困難に出会っても冷静に対処し、それを乗り切るだけの知識を、果たして自分は持っているだろうか」という重要な問題を自分自身に投げかけてみることである。
- 君が隊長に、君の班員を初めてハイキングに連れ出す許可を求めるとき、その隊長は、ちょうど同じような質問を彼自身にすることだろう。つまり「この班長はハイキングに取り組んで、うまくそれをやる能力を持っているだろうか?」と。結局隊内で起こる事柄に対し、もっぱら責任を持つのは隊長である。君が十分やれるという確信を隊長が持てなかったら、むしろ君自身のために彼はハイキングを許可しないだろう。もし隊長が君はまだ班員をハイキングに連れ出す準備ができていないと決めたら、その目的にかなうように自分を慣らすまで、いっそう努力することが君の務めだ。
- ●班長に必要な条件
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- 君の隊長は、不合理な決定は下さないはずである。君の能力を試すために、隊長が試みるテストがある。君が班員をハイキングに連れ出すのに同意する前に、隊長は必ず次の諸点を考慮し、最小限、君がその条件を満たしていなければならないことを強調するだろう。
- 君は1級スカウト章を獲得していなければならない。
- 君は少なくとも1回は隊のハイキングに加わった経験がなければならない。
- 君は少なくとも1ヶ月間、班長としてりっぱにその仕事をやり遂げたという経験を持っていなければならない。
- 君がハイキングに出発する前に、隊長はまた次のに項ついても、念を入れることだろう。
- 君は各班員の両親の承諾書を持っていなければならない。(その季節中を通じて有効な承諾書をもらうこともできるだろう)
- 君はハイキングに出かける地域を十分知っていなければならない。
- もし調理ハイクをするのなら、火起こしや料理をする許可を、行先地の所有主などからもらわなければならない。
- 以上の条件を読み返してみれば、その条件のひとつひとつの意義と重要さがわかるはずである。
- ●最初のハイキングへの援助
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- 普通は、班の最初のうちのハイキングには、隊長(または副長あるいほ上級班長など)が2、3回同行する。これらのリーダーは、いっしょに行くからといって、別にやることがあるわけではない。君が班を指揮していくのに干渉しないし、たぶん助言すらしないかもしれない。ただ彼はそこにいるだけである。
- ●ハイキングの計画
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- それでは、班のハイキングにとって必要な計画をいっしょにやってみよう。
- 定例集会でハイキングの問題を君の班員たちに持ち出す。ハイキング以外の行事の期間は終わって、君はそれらをたっぷり楽しんだはずである。さあ今度は、ハイキングの計画にとりかかるのだ。 そこでひとつの方式をもとう。
- 班集会をしたときの「いつ、どこで、なにを、どのようにして」を思い出してもらいたい。順序は違うにしても、同じ原則がハイキングの場合にもあてはまる。つまり「なにを、どこで、いつ、どのようにして」の順序である。
- 今からこのポイントをひとつひとつ検討していこう。
- (なにを?)
- ハイキングは、どれでもはっきりした目的をもたなければならない。「われわれは何をやりたいか、また何をやらなければならないか。スカウト技能、たとえば救急法、信号法、追跡、地図作製、料理などの訓練がわれわれにとって必要か? 自然観察ハイクとすべきか? あるいは歴史ハイクとすべきか?」などを考えて決めなければならない。君の班員の何人かにまだ初級の者がいるなら、君は彼らが2級課目をやりとげるための作業ができるように、おそらくスカウト技能ハイクに決めることだろう。
- 2級スカウトである班員たちは、同時に1級スカウト課目に挑戦するために自分を訓練することができる。君の班員たちがスカウティングで進級するにつれて、その他の種類のハイキングをやっていけばよい。
- そう、君の班員たちは何をいちばん必要としているか? 信号法? そうであれば、何か長距離の作業ができるように、視野のきく広々とした地域に皆を連れ出したいと思うだろう。
- あるいは追跡? そうならば君の行くべきところは森林地帯である。
- 料理なら? そのときは許可を受けることや、薪、水などを考慮に入れなければならない。
- スカウト技能訓練は、それぞれに適した地域を必要とするのである。
- (どこで?)
- 君の班組織がすでに活動しているなら、ハイク係の助言に従えばよい。もし、ハイク係がいなければこの質問を班員全部に出して、その提案を検討し、ハイキングの目的にいちばんぴったりするコースと場所を決定する。
- 参考までにヒントを少々あげておこう。
- もし君の班が新しい班ならば、短いハイキングをすること。3〜4キロメートル出て行って、また同じ距離を帰ってくるだけで十分である。バスの便があるか、あるいは班員の父親が自家用車を提供してくれるならば、ある地点まで車で行き、そこから短いハイキングをして目的地に行くこともよい。だんだん歩く距離を増していくこと。これもまた訓練である。君の班員たちに歩くことに興味を覚えさせることができれば、だんだん遠い場所をハイキングの目的地として提案するようになるだろう。
- 守らなければならないルールは、幹線道路はさけるということである。国道などの幹線道路は危険であり、美しい場所も少なく、コンクリートの路面を歩くのは非常に疲れるものである。このような道路の代わりに脇道を行こう。まもなく気に入るようなハイキング場所にぶつかるだろう。
- しばらくはそのお気に入りの場所にだけハイキングするとよい。しかし班員たちがその場所に飽きないうちに、ほかの場所を探すことを忘れてはならない。ハイク係がその本領を発揮するのは、このときだ。
- (いつ?)
- まる1日のハイキングをするのはいつがよいかということについては、あまり問題はない。答えは日曜日か、あるいは何かの休日である。
- 半日ハイキングには、やはり日曜日などの休日をあてることになる。いずれの場合でも、もし君の班員たちが宗教の義務を果たしており、そして隊長や班員たちの両親が許すならば、その日にハイキングをやってもよい。
- 出発の時間
- 日は決まった。今度は時間である。終日ハイクの場合、午前8時は出発によい時間である。9時以降に出発してはならない。朗寝坊していてはハイキングはできない。午後のハイキングには、皆が同意する時間を決めなさい。
- コースの一部分をバスなどで行かなければならないときは、予定の時間に目的地に着くように、時間を計って出発する。
- 帰る時間
- 帰る時間は出発の時間と同様に重要である。班員たちは、帰る時間を両親に告げなければならないし、その時間は確実に守らなければならない。
- ●どのようにして?
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- この“どのようにして”の質問によって、実際の準備が始まる。両親の許可を得なければならないし、輸送方法を調べ、食物と用具について決定し、費用を計算しなければならない。
- (許可)
- 許可書、特に班の最初のハイキングではそれが必要である。両親がその子供をハイキングにやるのに完全な同意を与えたことを確かめるために、君はそれが必要なのである。それはスカウティングの中に「戸外」の要素を入れるのに、両親たちは喜んで力を貸すということの一種の証拠となる。
- 班集会を班員の家庭でもつことに慣れ、両親たちが君と君の班員たちを知っているならば、許可書をとることはそれほど難しいことではないはずである。
- 両親たちが君や班員を知らないときは、知っている場合より難しい。この場合、君がやるべきいちばんよい方法は、班員たちの家庭を訪問し、両親たちと話をし、君がやりたいことを説明することである。
- 許可書は、たとえば次のような簡単なものである。
- 「(名前)が、5月5日午前9時から午後6時まで、オオカミ班のハイキングヘ行くことを許可します。署名。」
- 班のハイキングに出発する直前に、班の記録係に命じて許可書を集めさせる。あるいは許可書を班ハイクの前の班集会のときに持って来させるように、早く計画すればさらによい。
- もちろん君の隊長はハイキングのことを知り、それを承認しなければならない。
- (輸送)
- 町から相当離れた地点から出発しようとするときは、バスや電車、あるいは鉄道の便を調べる必要がある。またもし班員の父親の協力が得られるなら、2台くらいの自家用車を都合して、班員を出発点まで運ぶようにするのは、簡単なことだ。
- (集合場所)
- もし班の本拠が便利なところにあったら、君はそこからハイキングに出発することを望むだろう。
- そうでなければスカウトのうちのひとりの家が、集合場所としてもっともよいところに位置しているかもしれない。もしバスか電車で行くのであれば、バス停留所か駅に集合するのがいちばんよい考えだろう。
- (費用)
- 輸送には金がかかる。だから交通費を含むハイキングの全般的な事柄を決定する前に、班員たち皆が、その費用をまかない得るかどうかを確かめなければならない。もちろんこれは班員たちを困らすような質問をして調べるのではない。あるハイキングが、何名かのスカウトにとって負担が多すぎると君が感じたならば、そのハイキングは取りやめることである。両親は喜んでその子供のために多くの犠牲を払うものであるが、もしスカウティングが、そんなに金がかかるものなのかと思うようになると、いきおい自分たちの息子をスカウトにするだけの余裕があるかどうかを疑うようになる。
- もしどうしても金のかかる何かすばらしいハイキングをやりたいのであれば、班全体でその費用を生み出せばよい。
- (食物)
- 班の最初のハイキングでは、スカウトは各々家から食物を持参する。サンドイッチハイクの場合は、できあいのサンドイッチを持ってきてもよい。しかし、班員たちがそれぞれ材料を持ってきて、野外で料理するならば、食欲をそそるよい食事をとることができよう。
- 食物にはあらゆる種類のものがあるが、ハイキング向きのものにもいろいろある。チョップハイクの場合は、次のことを考えてよい。つまり生の材料(パンを除く)を持っていって、器具なしであるいは器具を使って、昼食をとるところで料理をする。ここでもいろいろ好みのものを選んでよい。食量係に献立表を調べさせておく。
- ●ハイキングの用具
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- (ハイキングの服装)
- 必要なもの:
- スカウトの制服、遠出に適する靴と靴下
- 必要なときに持参するもの:
- レインコートまたはポンチョ、ジャンパーまたはセーター
- 班員たちに、必ず正しい種頻の履き物を履かせるようにしなければならない。底の薄い運動靴はハイキングの場合はまったく認められない。足の合わない靴や靴下も同様である。
- 足のまめのためにびっこをひいている班員とハイクするのは、あまり楽しいことではない。「ハイキングの仲間と、ハイキング用の靴は、古くからのなじみでなければならない」ということわざがあるくらいである。内側がまっすぐで、足の親指がまっすぐ前方に伸びているような靴がいちばんよく、前方は全部の指が自由に動けるように広くなければならない。かかとは低く幅広で、革は軽くしなやかでなければならない。制式のボーイスカウトシューズは、これらの特長を皆そろえている。
- 新しい靴を履いてハイキングに行くのは、大きな間違いだ。新しい靴は、家にいるときに、履きはじめるべきである。
- 靴下は、足にぴったりしたものでなければならない。長すぎると、しわになってイライラするし、短すぎると、足指を自由に動かせなくなる。木綿でも毛でもよいが、どちらかというと、夏冬を問わず毛がいちばんよい。
- もし寒かったら、班員たちはそれ相当の身づくろいをして来なければならない。スカウトのセーターやジャンパーは、寒い天候には着心地のよいものである。制式のセーター以外のセーターは、制服の下に着るのが、スカウト式の着方である。
- こうすれば、君はどこへ行ってもスカウトであることがわかる。服装についてはこのくらいにしてほかの用具のことに移ろう。
- (個人用具)
- 必需品:
- ハイクザック、コップ、ナイフ、細ひも(ロープ)、筆記用具
- 必要に応じて持っていくもの:
- マッチ、コンパス、水筒、炊事用具、カメラとフィルムなど
- 班員たちが、各自弁当の入った紙袋などを持って歩いているのは、あまりよいかっこうではない。班員たちを激励して、食物や用具を運ぶための小さいバッグを作るか、あるいは手に入れさせなさい。(需品部で売っているハバザックは、肩から下げたり、背負い式にもなるので便利だ。)あるいは班全体で使用するために、班のキャンピングパックを2個持っていくのもよい。班の食糧をみんなそれに入れて、班員たちに交代でそれを運ばせなさい。
- 班員たちには、必ずコップを持って来させるようにしなければならない。ただし、アルミのコップから熱いものを飲むには“革のくちびるとプライヤーのような指”が必要となる。
- コップを使う度数の多いのに君は驚くことだろう。コップがあれば、ひとりの水筒から数人が口をつけて水を飲む非衛生的な習慣を止めさせることもできる。
- スカウトのナイフは、なかなか便利なものだ。それを研ぐことを忘れてはならない。
- 細ひも(ロープ)は、班員ひとりひとりのポケットに入っていなければならない。
- 小さいノートと鉛筆は、上着のポケットに入るだろう。ハイキング特修章のためのハイキングの日付と距離などから、自然保護関係の技能章のための、鳥や動物の名前、その他にいたるまで、ノートに記入する事柄はたくさんあるであろう。
- マッチは防水容器に入れなければならない。写真フィルムのケースや猟銃の空の薬きょうにコルクの栓をして使用してもよい。もうひとつの方法は、パラフィンを溶かし、それを火からおろして少し冷やし、マッチをその中につけてから取り出して乾かすことである。マッチの周囲を囲んでいるパラフィンが、マッチの湿るのを防いでくれる。もうひとつは、マッチに透明なマニュキュアを塗る簡単な方法もある。
- オリエンテーリングやクロスカントリーに、方位磁石は欠かせない。班に2個もあればよい。シルバコンパスは、制式のコンパスであり、たいへんよい。
- ハイキングのスナップ写真を撮るために、誰かカメラを持っていけば、それはすばらしいことだ。結局、君のハイキングは、ほんとうに歴史的な事柄であるから。この仕事は、班の記録係にやらせるとよいだろう。班の記録帳のために写真を必要としているのは彼である。
- ハイキング途中の水の心配があるなら、班員たちは家から水筒に水を入れて持って来させるとよい。アルミ製で、カバーのある水筒を用いる。
- 次は個人用の炊事用具である。需品部はすばらしいキットを売り出している。しかし班員は誰でも、その最初のハイキングのために、自分の家の台所から、小さななべ、ポット、皿、フォーク、ナイフ、スプーンなどを持ってくることができる。
- (班の用具)
- 必ず携行するもの:
- 救急箱、班旗、地図
- 必要に応じて持つもの:
- 班の炊事用具、信号旗、なたまたはおの、ショベル、ロープなど
- 救急箱は、起こり得る緊急事態に必要なもの、すなわち、消毒ガーゼ、包帯、テープばんそうこう、軟こうなどを持っていればよい。君の班なら、ボーイスカウトベルト救急ケースが手頃だろう。
- 班旗は、もちろん君たちがどこへ行こうと、それは君たちといっしょである。
- 君がこれから行こうとする地域の地図を持っていくこと。地図を使用することによってしか、君の班員たちは、地図が読めるようにはならない。
- 国土地理院の地形図がいちばんよい。容易に出し入れできるところ、たとえばポケットか、地図ケースに入れておくとよい。
- 火をたくつもりであれば、1〜2丁のなたあるいはおのと、ショベル(折りたたみ式がよい)を持っていくこと。ショベルはおのよりも大切である。薪を手に入れるためには、君は十中八九までは、なたやおのはいらないだろう。班の火を燃やしつづけるのに必要な枯れ枝は、普通周辺にあるものだ。もし木の枝をなたで切らなければならないとすれば、それは生すぎて、あまり薪の用をなさないだろう。
- 「ポキッと折れなければ捨てよ」ということわざを忘れないこと。一方、火をたくところと便所を準備し、後でそれを埋めるために、ショベルはどうしても必要である。
- ロープは非常に役に立つ。ボーイスカウトロープの1〜2本、5メートルから7〜8メートルの長さのものが本領を発揮する。
- 特別な活動には、特別な用具が必要だ。たとえば信号通信をやるなら手旗または単旗信号旗、追跡の訓練をするのであれば、それに必要な用具を必要とする。要するにそれが何であれ、君がやろうとするスカウト技能訓練に必要なものは、何でも持っていき、君がそれを必要とするときに、いつでも手もとにあるようにする。わずらわしいことは、備品係に任せることである。
- ●最終計画
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- ハイキングについての討議は終わった。全員がその決定に参加した。ここで同意した事柄を取りまとめ、最後に細かい点をはっきりさせるのが班長としての君の仕事である。班員たち全員が、あらゆること、すなわち、どこに、いつ集合し、何を持ってくるか、などを完全に了解するように努力しなさい。いや、それをどこかに書き取らないとすべてを覚えることはできないだろう。必ず班員たちに、用紙かノートブックに、詳細を書き取らせるようにすることである。
- もうひとつやれば準備完了ということになる。それは、出発する前に次長といっしょに、その日の活動の概略と、それに対する時間割を作り上げることである。こうすれば、ハイキングから最大の効果を引き出すことができるだろう。
- 出発と帰着の時間を書き込む。昼食の時間を決める。それから実際のハイキング、スカウト技能ゲームおよび作業などで時間を埋めていく。次にひとつの例を示そう。
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元原への班ハイク |
期日 | 9月23日(秋分の日) |
8:20 | 本拠に集合、用具の点検。 |
8:40 | 公園広場でバスに乗る。 |
9:30 | 新町ターミナル到着。ハイキング開始。
川の西岸を通ってみどり湖に至る。
自然研究:樹木、植物、鳥、動物の足跡。 |
10:40 | 乙戸原のキャンプ地到着。
長距離信号通信の訓練。
その後火をたいて食事の用意。 |
12:20 | 昼食。食事の後片づけ。パッキング。休憩。 |
13:20 | ゲーム。 |
14:00 | キャンプサイトの調査。帰路につく準備。 |
14:20 | 阿見原の新しい橋までハイキング。
そこからバス乗り場まで行く。 |
16:40 | バスで並木通りを出発。 |
17:20 | 班の本拠に到着。解散。 |
18:30 | 約束どおり班員たちは家に帰りつく。 |
- ●ハイキングヘの出発
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- ついにハイキングの日が来た。雨が降ろうが、天気がよかろうが君たちは出発する。どんな天候でも、スカウティングに悪いということはない。
- 班長である君は、皆より少し先に班の本拠に到着する。すでに何人か到着していて、ハイキングの見込みについて、いろいろと語り合っているかもしれない。
- 「原田がまだ来ないよ」「まだ時間があるさ」
- 「君、譲二は来ると思うか」「来るとも、きっと来るよ」等々。
- ついに8時20分になった。班員たちは皆到着した。皆きちんと制服を着ている。用具はきちんとパックされている。必要なものが全部そろっているか、もういちど点検してからいよいよ1日の冒険の途につく。
- 時間の余裕をもって、汽車かバスか電車の待っているところに到着する。まもなく全員乗車だ。
- (「スカウトは礼儀正しい」)
- 公共の乗り物で旅行をしているあいだ、スカウトはどういう態度をとるべきかを知らないという批判を、ときどき耳にする。車中で叫び声をあげ、かけ回り、ちょうど動物園から出てきたばかりの動物みたいにふるまう。わくわくするあまり、そうなるのだろう。しかし、多くの場合、見せびらかしたいという欲望が、彼らにこんなふるまいをさせるものである。
- スカウトヘの非難が正しい場合が多い。行儀の悪いひとつの班が、スカウト全体に非難を向けさせるものだ。バスや列車に長いこと乗っているあいだ、元気いっぱいの少年たちのグループを、静かにさせておくことはできるものではないし、そういう芸当が君にできるとは、誰も思うまい。たいていの人は、ピチピチしている少年をながめるのが好きである。かといってこのことは、少年たちが紳士らしくふるまう必要がないということにはならない。彼らはスカウトであり、「スカウトは礼儀正しい」のである。班がひとつのグループとして旅行するとき、正しいふるまいによって、これを立証しなければならないのだ。
- すなわち、いっしょに旅行している人にうるさがられないように、あまり大きな声で話しをしたり歌を歌ったり、その他雑音をたてたりしないことである。さらにきちんとすわって、あたりを走り回らないようにすること。そして乗り降りするときは一度に押しかけてはならない。もちろん言うまでもないことであるが、婦人や老人などが立っているときに、スカウトはすわっていてはならない。
- (道路上での礼儀)
- 礼儀正しさが期待されるのは、車に乗っているときだけではない。どこに行こうとも、礼儀正しさはついていかなければならない。
- コース途中の立札に、「入るな」「私有地」または「通り抜け不可」と書いてあるならば、それは文字どおり守らなければならない。同時にまた門は閉じなければならないこと。耕された土地は、公共道路ではないこと。および果物のなっている樹木は、個人財産であることを忘れてはならない。
- 自分の常識で判断して、君は世間がボーイスカウトにふさわしくないと思う行動を、避けることができる。
- (道路上で)
- 車に乗ることは終わった。君は今、道路上にいる。ほんとうのハイキングを始めることができる。
- ここでひとつのことをはっきり決めておこう。それは、われわれが話をしているのは、スカウトのハイキングについてであるということである。
- 君と君の班は、ハイキングをして小道や新鮮な空気を楽しみ、スカウティングを学ぶために戸外に出てきたのであって、友好的なモータリストに拾い上げられて、歩くのを省くために出てきたのではない。ヒッチハイクは問題外である! それは全然ハイキングではない。
- もうひとつのことを忘れてはならない。それは、スカウトのハイクは、競争ではないということである。何かの記録を破るために戸外に出てきたのではない。田舎をハイキングして楽しむため、物事を見るため、戸外の自由さを味わうために君は出てきたのである。君たちは冒険を求めてきたのであり、フルスピードで田舎の片隅をかけ抜けるために来たのではない。
- (歩くときは歩け!)
- といっても、足を引きずってでも歩けというのではない。むしろ反対で、歩くときはしっかり歩けということである。はじめからしっかりした歩調をとるべきで、ただ、だらだらと歩いていくのではない。ぶらぶら歩きは、いろばん疲れる歩き方である。1時間に約5キロの割合で、自由な気安い歩き方をするとよい。これが適当な平均速度である。その歩き方は君たちを疲れさせないし、ほんとうに、ある目的地に近づいているという感じを、君に与えるだろう。
- 歩くという技術は失われつつある。君の仲間の中でそれを保存したまえ。それは、人間のからだ全体に効果を与える。肺を訓練し、心臓を強める。
- しかし、何事もそうであるように、それを正しくやらなければ、最大の効果は得られない。正しい姿勢と正しい歩調が必要である。
- であるから、きびきびした、弾力に富んだ歩調で歩く習慣をつけたまえ。一度その習慣が身につくと、ひとりでに胸を張り、肩をあげ、まっすぐ前方を見つめて歩くようになる。足はほとんど平らに地面におろし、足のつま先はまっすぐ前方に向く、腕を振らなければならないから、手はポケットに入れない。
- (主要道路からそれること)
- 冒険が待っている脇道のところに来るまで、君たちは少し主要道路を歩かなければならないかもしれない。けれども、できるだけ早く主要道路からそれることだ。
- 主要道路沿いには、見るもの、学ぶものはあまりない。自動車は君が街で見るものと同じだし、広告板が宣伝している商品は、皆のショーウィンドウが宣伝しているものと同じである。そのうえ主要道路には危険がある。交通量が多く、君はいつも注意していなければならない。
- もし主要道路を歩かなければならないのなら、右側を歩け。それがわが国の法律である。そうすれば、走って来る車両に面することになり、危険を避けることができる。トラックなどが、いきなり飛び出してくるかもしれない横道に注意すること。十字路も同様に注意をすること。
- (冒険を始める)
- 主要道路からはずれて脇道に入るまでは、実際のハイキングが始まったとはいえない。脇道といっても、実際には道ではなく、川の岸であったり、湖岸であったり、海辺であったり、丘の稜線であったり、雑草におおわれた古い小道であったり、あるいはコンパスに従って、いろいろな障害物を乗り越えて、田舎を横切って行く冒険であるかもしれない。
- 君が正しい班長そあれば、この地点から予定の行動を開始する。脇道にそれるまでは、歩くということが主な目的であったが、今なら、あらゆる種類のスカウト技能に力を入れることができる。
- (大自然を見る)
- 今君は大自然の中にいる。班員たちに自然観察の方法を教えなさい。
- 何かを見ることと、観察することとの間には、大きな相違がある。一生涯を通じて、少ししか物を観察しないで終わる人々も多い。君の班を、ほんとうに物を観察する班に仕上げること。
- 物を観察することを学ぶ推一の方法は、時間をかけて観察することである。
- 「止まれ、よく見、よく聞け」
- これがスカウトハイカーに対するよいアドバイスである。歩いているときよりも、止まっているときのほうが、よく自然を観察できる。
- 止まって今まで知らなかった木や花を発見し、また、すでに知っている木や花との交友を深めること。何か動物の足跡を見つけたら止まって研究し、何の足跡であるかを確かめてそれに従って行け。もし鳥が飛び立ったら、そこに静止してその歌に耳を傾け、鳴き声をまねて近くに引き寄せるようにしてみたまえ。くちびるを手の甲に押し当てて息を吸い込むと、鳥の困ったときの呼び声をまねることができる。
- いちど班員たちの興味を大自然の発見ということにむけることに成功したら、班ハイクの喜びを増す何百もの事柄を君は発見するであろうし、それだけまた班員たちの生活を豊かにすることができる。
- 「少年たちは美というものを知らない」
- という人々がいるが、彼らがどんなに間違っているかを君は知っている。少年たちは、美しいものを鑑賞できる。ただそれを口に出して言わないだけである。さざめいている小川のそばの静かな場所、風に打ちひしがれた木々、日没、幻想的な形の雲、星空などは、少年たちに深い影響を与えるだろう。
- ハイキングの途中で、これらのものに班員たちの注意を向けるのを恐れてはならない。しかし、静かにそれを行うこと。君が突然「全く美しいじゃないか!」と言ったら、班員たちはどう受けとるか想像できるだろう。
- (スカウト技能訓練)
- ハイキングと進歩は一体である。ハイキングを頻繁にやれば、班員たちは2級スカウトの技能や1級章課目、特修章や技能章の多くを覚えざるを得ないわけである。もちろんこれは、君がこれらの技能を使うチャンスを彼らに与えることを条件としてである。
- ほんとうのハイキングでは、コンパス使用と地図の読み方が、最高の技能であることは明らかである。コンパスと地図を十分に使用すること。各人に、班全体の山野横断を先導するチャンスを与えること。または、班をいくつかのチームに分けて、オリエンテーリングのコンテストをやってもよい。
- 信号法もハイキングで実行すること。班を2つのグループに分け、1つのグループを先に出発させ、彼らが発見したものをモールス信号でほかのグループに知らせる。
- また、遠中で「事故」を想定して、班員の応急手当の訓練をする。
- (後で出てくる「班訓練」の章を読んで、君と次長が、ハイキングに取り入れて実行できるアイデアを探し出しなさい。)
- もし君の班員たちが、特修章や技能章を取るために努力を続けているのであれば、班ハイクで彼らの手助けをすることもできる。写真や収集、スケッチ、その他の趣味を持っている班員たちは、ハイキングでその趣味を満足させることができるだろう。
- ひとつだけ重要なことがある。それは、何をするにせよ、班員ひとりひとりをそれに積極的に参加させるようにすることである。
- (途中の休憩)
- 一般的に言って、一気に歩いて長い時間休むよりは、着実に歩いて短い休息をするほうが、労が少なくて遠くへ行けるものである。
- 慣れないハイカーは、1キロごとに休まなければならないかもしれない。慣れればハイカーは、疲れを感じずもっと長く歩ける。
- 疲れている様子が見えないうちに小休止を命ずることが大切である。
- 30分歩くごとに短い休憩をとるのがよいとされている。ただしこの場合の休憩は、短いものであること。3分から5分がよく、決してそれ以上休んではならない。足の筋肉は歩いている間に柔軟になってくるので、あまり長い時間休むと硬化して、再び歩き出すことがむずかしくなる。
- また暑い天気で汗をかいているときは、長く休むと涼しくなりすぎて寒気をもよおすこともある。皆が寒気を感じる前に出発することだ。
- ほんとうに休むためには横になること。あお向けに寝て、足を木か木の株、あるいは垣根その他に上げる姿勢がいちばんよい。
- (飲み水)
- もし休憩場所付近に水があれば、班員たちがそれに飛びついていくのはほとんど間違いない。特に、彼らがスカウトになって間もないのなら、なおさらである。班員たちをあせらないように押さえなければならない。それには、2つの理由がある。
- 第1の理由は、思い切って飲むとすくにのどがかわき、すっとその状態が続くということである。
- 水を飲む代わりに、小石(あやまっても飲み下せないくらいの大きさの小石)をロに含んでいたほうがずっとよい。その小石はだ液せんを刺激して□の中を絶えず湿らせてくれるからである。
- もうひとつの理由は、これは他の理由よりも重要であるが、水が腐った物あるいは細菌で汚染されているかもしれないということである。水の外観は問題ではない。たとえ水晶のように澄みきっていたとしても、有毒な場合がある。試験すみであるということ、飲料水として適当であるという確証がない限り、水に触れてはいけない。
- 疑いがあれば、水を浄化すること。10分間煮沸させることは、そのひとつの方法である。さめた後は、飲料水として安全である----煮沸のためにその新鮮味は大部分失われるかもしれないが‥。
- もうひとつの方法、これは簡単な方法であるが、殺菌力をもった化学製品で水を処理することである。いろいろな品名で薬局などで市飯されているから、携帯用救急キットに常備しておくとよい。
- 水についてあまり知らないなら、君の住んでいる街の水道から、2個ぐらいの水筒に水を入れて持って行けばよい。目的地に着いて、料理や飲み水用として、もっと水が必要であれば、水を煮沸させる。
- とにかくハイキングにおける水の飲み方は、一度に少量すつ、できるだけゆっくりと飲むことだ。ハイキングのエキスパートの多くは、最初のひと口の水を□に満たし、頭を動かして□の隅々までぬらすためにだけ使用する。その後二□三□飲んで、ずっと最後までそのまま通す。
- それから、コーラやアイスクリームを買うために、班員たちが道端の店にかけ込んでいくことだけは、ぜひやめさせること。ハイキングでこんなことをしたら、彼らはいつでも乾いている状態におかれるだけである。
- (昼食をとる場所に到着する)
- 道沿いであれクロスカントリーであれ、今君は皆が同意した昼食の場所にいる。
- そこに到着したら、ます第一に、装具や器具を一列に地上に並べる。『整頓』という問題がそこにあり、この整頓は、君の班がやるあらゆることのルールでなければならない。
- 何の秩序もなくやると、後で掃除をするときの仕事を多くするだけである。
- (食事の準備をする)
- サンドイッチ・ハイクであれば、食物をとり出して皆いっしょに食べるだけである。
- チョップ・ハイクであれば、火は許可を得た地域で起こさなければならない。
- 火を起こす適当な場所を決めること。班員たちをできるだけまとめておき、あまり広い地域にひろがらせないようにする。それは、ひとつには君が彼らを指導し手助けすることができるように、もうひとつには、あちこちに焼け跡を作らないようにして、土壌を保護するためである。
- 君はもちろん火のたき方を知っているだろう。君の班員たちは知らない。はじめての“ゲーム”であればなおさらである。だから正しい火のたき方を彼らに教えなければならない。
- 地面をきれいに掃除させ、周囲の植物を保護するため、土を掘りおこす。火事になる危険を完全に取り除き、消火用の水を手もとに用意しておく。不注意から草地や森林を焼くようなことがあってはならない。
- 次は薪である。火を起こす前に、食事全部を料理するのに十分なだけの薪を、班員たちに集めさせる。それができたら火を起こし、料理をさせる。
- 初めの2、3回のハイキングの間に、班員たちは2級章課目をやり、そして1級章の料理への訓練をはじめることになる。
- その後のハイキングで、班の炊事つまり班全体のために完全な食事を準備することをはじめる。
- これは、班のキャンピングのための練習となる。 班の炊事には、班の炊事用具と、仕事をもっとも効果的な方法でやるために、ある簡単な組織を作ることが必要になってくる。それは、コック長と助手、火たき、薪係からなる“炊事班”を作ることである。このことはキャンピングの場合に特に有意義なので、第7章(班のキャンピング)のところで、さらにくわしく述べる。
- 各自別々に料理するときは、班員たちは各々、料理が出来上がり次第食べる。しかし、班で炊事する場合は、班全員が一家族のようにいっしょになって食べる。食事をいっしょにとるということが、どれほど楽しみと友愛を深めるものであるか、容易にわかるだろう。
- (あとかたづけ)
- 食べ終わったら皆あとかたづけをする。皿やポットやなべは湯で洗う。紙やくずは焼く。空缶は洗い、押しつぶすかそのままの形で、指定場所に捨てるか持ち帰る。火消し班は、料理した跡が残らないように、掘り起こした土を元どおりに戻す。
- (食後の休憩)
- 清掃の後は休憩をする。食後にくつろぐことは、大いに消化を助けることになる。
- 休んでいる間に、午後のプログラムや、将来の計画などについて、班員たちに討議させる。----しかつめらしい討議でなく、笑いながらの軽い討議である。
- やがて班員たちの態度から、休憩時間が終わったことがわかる。ひとりが立ち上がり、他がこれにならう。いつもの出発の合図だ。
- (班のゲーム)
- 生き生きとしたゲームを2、3やりなさい。
- どんな種類の鬼ごっこでもよい。昼食場所の周りに自然の障害物があれば、なおさら好都合である。あるいは、班を2つのグループに分けて、いろいろなコンテストをやって楽しむのもよい。
- 楽しみと笑いのうちに1時間はまたたく間に過ぎ去ることだろう。いつの間にか、帰途につく時間がきている。
- (サイトの点検)
- 帰途につく前にやらなければならない大切なことがある。それは、必す昼食場所を完全に清掃することである。
- 班員を1列横隊に整列させる。各人の間隔を小さくして、隣の者との間の地面が余すところなく目に入るようにする。合図に従って全員がゆっくり前進をはじめ、各人はどんなに小さくても人間がそこにいたことを示すもの、たとえば紙切れや使ったマッチ棒、その他を拾い上げる。
- このようにしてその場所を進んだら、すべてが整然となり、出発準備完了である。
- (帰途)
- 特に何か変わったことが起こらない限り、帰途、班員たちにもういちど自然観察をやらせたり、進級課目の研究をくり返しさせることは、無理かもしれない。班員たちは、その日の楽しみの頂点を火起こしや炊事、そしてゲームなどですでに味わったのである。だから、班員たちの元気を保つには、帰りには何か興味を新たにするようなことをしなければならないだろう。
- そのためには、行ったコースと違ったコースをとるとよい。そして新しい発見や冒険を試みることだ。
- 班員たちに歌を歌わせれば、道は短く感じられるだろう。君は隊でスカウトソングを習ったはずである。それを用いることだ。それからまた、皆のよく知っている古い歌なども歌うとよい。君の演技係(またはイエ−ルマスター)が本領を発揮するのは、この時である。
- 班員たちは、正式の解散をするために、班の本拠まで帰りたがるかもしれない。班ハイクをそのようにして終わるのが、班の伝統とさえなるかもしれない。あるいはまた、街に帰り着いたらただ簡単に「じゃ、またね」のあいさつで解散してもよい。いずれにせよ、班員たちが決められた時間どおりに家に帰りつきさえすれば、どんな形で解散してもよいのである。
- 班員たちが、快い疲れとうきうきした心で、すばらしいスカウティングの経験をあたためながら帰ってきたら、その日の行事は成功したとみなしてよい。
- ●ハイキングの種類
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- 今まで述べたものは、班の典型的なデイハイク(日帰リハイク)である。それは班のりっぱな戸外活動の特性を備えている。
- しかし、もちろん君は、同じハイクプログラムを、いつまでも用いはしないだろう。班員たちの興味を持続させるためには変化が必要であり、ここで君の独創性が必要となってくる。
- 君は班長として、新しい種類のハイキングを考え出し、そのひとつひとつに新しいワザを織り込むための、あらゆる資料を深し求めなければならない。
- スカウトの月刊誌に目を通しなさい。その記事や写真などの中に、ハイキングのアイデアをたくさん見つけ出すことができるだろう。それを使うことである。
- まず手はじめに、次のようなものはどうだろう。
- (注:原書ではここで、各種のハイクについてその内容が説明されているが、紙数の関係上省略して、種類の紹介にとどめさせていただく)
- 冒険ハイク
- オリエンテーリングハイク
- 探検ハイク
- 北極ハイク
- 自然観察ハイク
- ロビンソンクルーソー(生存)ハイク
- 追跡ハイク
- 宝深しハイク
- ミステリーハイク
- 信号ハイク
- 結索ハイク
- ホットケーキハイク
- 歴史研究ハイク
- 父子(親子)ハイク
- 20kmハイク
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