班長のてびき

5.班の集会

 君はこれまで、班の指導とか、班精神だとか、あるいは班のメンバーとかについていろいろ読んできたが、いよいよ班の活動に参加して行動に移るときがきた。ということは、それらについて話をするということではなく、実際にするということを意味している。班のハイキングやキャンピングはこれからやっていく。しかし班に対する君のすべての夢を実現するためには、君は、班の定期的な集会のスケジュールを組む必要がある。

 班長としての君の主な仕事のひとつは、これらの集会で班のひとりひとりがスカウトとしての経験を積むことができるように、それらの集会を有益なものにすることである。

 スカウトとして必要な事柄について班員たちに教え、またスカウトのちかいやおきての意味を彼らが理解するのを助けるのは、班の集会においてである。君が一所懸命やりたいと思う活動を選ぶのはここであり、将来への大きな計画を立てるのもここである。そしてまた将来の仕事のため、君自身と君の班員たちを訓練するのもここにおいてである。君のスカウトたちが班精神に目覚め、ひとつのグループとして共に働きはじめるのは、班の集会においてである。これらの目的を果たすためには、班集会を正しく持つことが絶対に必要である。そして準備さえ十分整えば、集会は正しく持つことができる。

 集会を開く適当な場所を探しに出かけていき、もっともよい時間を決め、よいプログラムを作り、そして班員のひとりひとりにその役割を果たすチャンスを与えなければならない。このことは4つのポイントを考えなければならないことを意味する。つまり
   どこで?   いつ?
  何を?   どのようにして?

の4点である。この公式を君はどこかで聞いたことがあるだろう。事実これは新聞記者が記事を書き上げるときに用いる公式の一部分である。しかしそれは、班の集会にもちょうどあてはまる。


●どこで?

 班集会は屋内でやらなければならないという、おかしな考えを持っている班長が多い。なぜそんなことを考えるのだろうか。スカウティングは戸外活動である。だから暴風か雨が君たちを屋内に追い込むのでなければ、どうして皆を屋内に押し込める必要があろうか。

(戸外で集会を持つこと)
 集会を持つ場所を戸外に見つけることは、難しいことではないはずである。ある班員の家族はちょうど、この目的にかなうような場所を、庭の片隅に持っているかもしれないのだ。

 大きな都市では、運動場の一すみか公園のどこかで集会を持つことができるだろう。小さな町に住んでいるのなら、町のはずれで集会を持ち、また真の戸外訓練をやり、集会をキャンプファイアのまわりで終えることのできるような場所を、見つけることは容易であろう。

(家で集会を持つこと)
 君の班の会合のいくつかは、屋内でやらなければならないこともあるだろう。そのときは、班員たちの家でその会合をすることから始めなさい。最初の屋内集会は、皆を君の家に招待し、後の会合は次々に班員の家でやるようにしたらよいだろう。そうすれば、特にスカウトに興味を示し、班全体の後見役にすら喜んでなってくれるような父親こ出会うかもしれない。

 異なった家で会合をするということは、2つのよい理由がある。つまり、君は、君の班員たちの両親を知るようになり、両親は、君と君の班員を知るようになるからである。

 皆がお互いをよく知れば知るほど、よりよい協力ができることになる。

 班集会を、たとえばB君の家で持つことによって、君はほんとうにB君を知るようになる。それまでは、彼を班と隊の中の一少年としてしか知らなかったのが、今は、彼を家庭の一員として知るようになった。

 君は母親や父親、そして家に対する彼の態度を知るようになり、さらにスカウティングに対する彼の両親の考え方をも知るようになる。このことは君が班のハイキングやキャンピングを計画するときに、大いに役に立つことだろう。ほとんど例外なく両親は喜んで班を迎えてくれるだろう。もし君が正しい種類の班長であれば、班員の家でよい集会を持つことによって、その両親のスカウティングに対する興味を増すことができるだろう。

 しかし、この集会は、プラス、マイナス両方の働きをすることを忘れてはいけない。すなわち、班員たちが乱痴気騒ぎをし、迷惑になるようなまずい会合をやったら、二度とその家に招待されないばかりでなく、こんなまずい指導者のもとで自分の子供を引き続きスカウティングに参加させることが、果たしてよいことかどうかを、両親は疑うようになるだろう。

 集会が班員たちの家でおこなわれるとき、班員たちに軽いお菓子や飲み物、あるいはアイスクリームなどのもてなしをする母親もあることだろう。そんなとき、君はまれな待遇としてそれを受け、感激の意を表しなさい。決してそれを当然受けるべき接待であると考えてはならない。君と班全体の感激の気持ちを表わすことを、決して忘れてはならない。

(班の本拠での集会)
 班が班員の家の全部を知り、また両親が班員の全部を知るようになったら、君の屋内での集会のための恒久的な場所を考えるべき時である。れっきとした班なら、自分自身の本拠を持つように努力するものである。

 それは、場所というほどのものではなく、ガレージや倉庫の片隅、あるいは物置小屋の一部であってもよい。こんな場所を選んだら、そこで班の会合を持ち、ペンキを塗ったり、装飾をしたり、壁にロープの結び方の見本や地図やその他のものを下げたりする作業をする。こんな仕事をすることで、班精神が養われていくのである。


●いつ?

 集会の場所が決まったら、いつ集会を開いたらいちばんよいかを決定することである。

(何回くらい開くか?)
 真に活動的な班を持とうと思うなら、毎週班集会を持つべきである。それが君の班員を訓練し、班の本拠と、班の備品の整備をし、ハイキングやキャンピングの準備をするのに十分な時間を持つ最良の方法である。ある場合には、1ヶ月に2回の会合でもやっていける。2週間に1回も会合を持てないような班では、ものにならないから止めたほうがよい。

 しかし君は積極的な班長だから、隊の活動のほかに、週1回の班集会のスケジュールを、しっかりと組まなければならない。

(何日、何時に?)
 班員たちといっしょに、週のいちばんよい日といちばんよい時間を決定しなさい。

 まず第1に、隊集会とかち合わない日を選びなさい。たとえば、もし君の隊が土曜日の夜に集会を持つならば、当然班集会のためには別の日を選ばなければならない。

 火曜日の夜7時と決定したら、すっと火曜日の夜7時を守ることである。そうすれば何の混乱も起こらない。班員たちも、また彼らの両親も火曜日の夜は班集会であることを知り、皆そのように計画を立てることができる。非常に特別な場合と緊急な理由があったときだけ、集会予定を変更すべきである。このような変更は、ごくまれにするようにしなければならない。

(時間を守ること)
 どんな日であろうと、時間であろうと、時間はきちんと守ること。
「スカウトは信頼できる」

ある場所にある時間に来ると約束したら、彼は必すそこに来る。このことは、スカウトの班にとってもあてはまらなければならない。要は班員たちに時間を守るように望むことである。申し合わせた時間に会合を始め、スケジュールに従ってそれを閉じること。両親と隊から、君の班は物事を正しくやるというという評判を得ること。これが班員たちの尊敬を集める道である。


●何を?

 どこで、いつ、ということは重要であるが、班の集会をよいものにするには、その集会で何をやるかということである。

 集会には何を含めばよいか? この質問はもうひとつの「何を」にさかのぼる。

 すなわち君は、何をやり遂げようとするか?である。スカウトの知識について、隊でいちばん優れた班に君の班を推したいのであるが、それにはあらゆるスカウト技能の訓練を必要とする。あるいはまた、スカウト精神においていちばん優れた班にしたいのであるが、それには班員たちの熱意に火をつけ、彼らを鼓舞し、ただの集団を真のスカウトの班に鍛え上げる想像力を必要とする。
君は班員たちが物事をやること、つまりやる仕事があるときには、一所懸命それをやり、遊ぶときには大いに、遊ぶことを覚えるように望む。そしてさらに、班の仕事と将来への計画があることを皆といっしょに考える。

 ここに、6項目の問題をあげてみよう。
儀式(セレモニー)短く美し<。印象的な方法で会を開き、真のスカウトらしい形で閉じるためのもの。
点検(チェッキング)出席、班費納入状況、進級、制服の着用状態などの点検。
指導(コーチング)集会のいちばん重要な部分で、君と、スカウティングについて知っている者が、ほかの班員たちを、スカウトにとって必要な事柄について指導する。
作業(プロジェクト)班員たちが覚えたばかりのことを生かした作業、また班の用具作りや班の善行あるいは資金捻出の仕事など。
計画(プラン)班のハイキング、キャンピング、将来の特別活動など。
遊び(プレイ)プログラムに活を入れ、変化を与えるためのゲーム、歌、余興など。


●どのようにして?

 これらの行事は、きれいにプログラムに組み込むことができる。しかしそれでもなお、班集会はみじめな失敗に終わることがある。問題は、集会で何が行われるかではなく、物事がどういうふうに示され、集会がどういうふうに運営されるかということである。

 班集会を成功させるためには、次の点に注意を払わなければならない。
  1. 君が計画することは、班員皆にとって興味あるものでなければならない。
  2. スカウトひとりひとりが果たすべき、はっきりした責任を持たなければならない。
  3. 集会は、各スカウトが何か新しいものを覚えるように計画されなければならない。
  4. 集会の各部分は短くして、区切りをよくしなければならず、集会では、実際におこなうことができる以上のものを計画しなければならない。
 この4点をもう一度振り返ってみるとよい。そうすればその全部にとってカギとなる言葉は、「計画」であることがわかるだろう。集会を成功させるためには、よい計画を立てなければならない。ところで誰が計画するのだろうか。それは君の班の事情により、もし君の班がまったく新しいものであるなら、次長といっしょになってプログラムを作りなさい。もしまた父親のひとりを班の助言者として選んであったら、彼にも計画に参加してもらいなさい。

 また時間があるなら、君が実行することのできる2つの事柄がある。ひとつは、班を二人一組にろいろな委員会に分け、その各委員会に次の集会、あるいは部分部分を手分けさせる。委員会は重複するかもしれないが、それはたいしたことではない。

 もうひとつは、班の次の集会に皆が含んでおいてもらいたい事柄を話し合ってから、紙片に自分の希望する事柄を書いて帽子に入れ、班員ひとりに引かせる。その紙に書いてある事柄を、次の班集会で責任を持ってそれぞれやるようにする。

 班の仕事を、ほんとうに適材適所で割り当てるならば、班集会の運営はまったくやさしい仕事である。各スカウトに、それぞれの仕事のときだけその会を任せればよいのである。そして君は班長として、その集会をリードすればよい。

 指導のところでは、次長を君の助手として、君がその任に当たる。

 いろいろな作業を考え出すときには、備品係の助けを借りる。全体的な計画を取り扱うには、君は班長としてその任に当たる。班員たちが持っているあらゆる提案事項を引き出してから、ハイク係を呼んで、ハイキングのコースやキャンピングの場所について助言を受け、食糧係からは、食物やキャンプ料理についての助言を受ける。

 歓呼係は、もちろん、「遊び」の時間に責任を負う。そして閉会儀礼になって、再び班長が集会をあずかることになる。

 さあ、班集会の骨組みだけはこれでかなりよく出来上がった。ではこれから、それに肉を少しつけよう。


●開会儀礼

 君の班集会を儀式で始めなさい。儀式は士気を鼓舞するのに非常によい。君がほんとうにこれから仕事にかかるのだという気分にしてくれる。隊集会の始めで国旗儀礼になれていたら、班集会を同じような方法で始めるのが自然だろう。しかし君たちが頭をしぼって、班独自の儀式を考え出すのならさらによい。ほかの多くのものの場合もそうであるが、儀式の進め方は、班長の考え方によって異なる。儀式に威厳をもたすのは君である。
君がほんとうにまじめで、しかも自然なやり方で儀式を進めるということを班員が感じるなら、その儀式は彼らにとって重要なものとなる。

 これに反して、式の始め方がなんだか不自然だと班員たちが感じるとしたら、儀式をやめてすぐ点検の仕事にかかったほうがよい。

(儀式の例)
 (1)班の本拠の壁にかれた国旗に向かって班員を整列させ、敬礼(礼)をおこなう。
 (2)各スカウトが、スカウトのちかいとその重要性を考えて1分間沈黙を守る。
 (3)「私は名誉にかけて・‥」という言葉で始めて、班長がちかいの前文を言う。
  彼が言い終わったら、班員皆が「私は名誉にかけて…」と最初からちかいを唱和し、
  ちかいの再確認をする。
 (4)班内でいちばん新しいスカウトと古参者が、おきてを唱和する。
 (5)記録係が人員点呼する。名前を呼ばれたとき班員は返事をして、スカウトのおきてのひとつ、
  たとえば「スカウトは人の力になる」などと暗唱する。
 (6)あかりを全部消して、できるだけたくさんの懐中電灯を国旗にあてて、国家または連盟歌を歌う。
 (7)厚紙かベニヤ板で切りぬいて作ったスカウト章を、あらかじめ壁にかけるか台の上に置く。
  それに向かって「名誉にかけて」を歌う。
 (8)ろうそくを3本立ててともし、ちかいとおきてを唱和するのもよい。


●点検

 点検はあまり時間をかけてはまずい。てきぱきとかたづけていくべきである。何か調査事項のあるものは、集会が始まる前でも処理できる。班員たちが集まってくるにつれて、記録係は班記録簿に出欠を記録できるし、会計係は、班員たちが整列する前に班費を集めることができる。

 班集会で確実にやらなければならないことは、前の班集会または前の週のハイキングやキャンピングのことを書いた、班の日誌や記録を読み上げることである。この報告は記録係が読み上げ、班会体がそのまま、あるいは修正して承認する。集会のある部分を進級問題にあてようと思うなら、会を進める前に、2〜3分費やして各人の進級記録を調べるのもよい考えである。

 時々、班員たちの服装検査をしなさい。班集会を持つときには、班員は皆きろんと制服を着けていなければならない。君の基準を高く置き、それを維持しなさい。


●指導

 行動、これが指導時間中のあるべき姿である。実際におこなうことによって覚える。これがスカウトの前進の方法である。この考えで指導をするならば、スカウティングの進歩の階段をまっすぐに上っていくスカウトであふれた、活発で積極的な班を、君は持つことだろう。指導の時間が、班集会ではもっとも大事である。それは集会のほかのどんな部分よりも先に準備しておかなければならない。

 君が指導する事柄を、君自身が十分知らないでは、指導できないからである。君の助手と二人でその準備をしなさい。いっしょにやることを決め、そのやり方を決定しなさい。

 実際にやって見せてから、やらせる。これを君は指図すべきである。たとえば応急手当の場合、君の助手を実験台にして、人工呼吸の正しいやり方をやって見せる。その後で全班員に組を作らせて、お互いを実験台にしてやらせ、君と助手二人で指導する。

 このようにやって見せて、その後でやらせる方法は、その他のスカウト技能、たとえばロープ結び、信号法、旗の掲揚と降納およびしまい方、ナイフやおのの研ぎ方、その他に用いることができる。指導についての提案を、君は班訓練の章でいくらでも見つけることができる。君の班員たちが、何の指導を必要としているかを見つけてから、それに必要な要件は何であるかを深す。その条件のひとつについて、君の指導の基礎となる提案を、この本から見つけ出すことができる。


●作業

 班集会のプロジェクト(作業)の時間は、スカウト技能またはハンドクラフト(工作)で占められるかもしれない。

(スカウト技能プロジェクト)
 君がちょうど今おこなった指導の後には、当然スカウト技能の実習が従わなければならない。たとえば応急手当の訓練の場合、事故の想定をして、班員たちに効果的な応急手当を施すプロジェクト(課題)を与えなさい。2,3その例を示そう。

 隣の部屋から「助けてくれ!」という叫び声がする。全員隣の部屋へかけ込み、ひとりのスカウトが右の腕を折り曲げ、握った手のひらから血(赤チンキなど)を出しているのを発見する。
 「コップを割って手の動脈を切ったんだ」
とスカウトはうめく。またはひとりのスカウトが足を引きすりながら、班ルームに入るなりいすに倒れ込み、
 「ひざをねじったんだ。ああ痛い痛い」
という。あるいはまた、片方の腕を下にして床に横たわっているスカウトが、
 「ああ、僕に触わらないでくれ。頼む。腕が折れてしまったようだ」
とうめく。班を二組に分けて順番に手当てをさせ、ほかの者は自分たちならどうするかを考えながら、その手当てを見守る。

 班訓練の章を読んで、あらゆる種類のスカウト技能についてのプロジェクトを、いくらでも作り出すことができる。

(ハンドクラフトの作業)
 活気に満ちている班は、班集会中にやるハンドクラフトの作業を、2つ3つはいつでも準備しているものである。30分もかからない短いのもあるし、数回の集会にまたがる野心的なものもある。班の用具を作ったり、班の本拠の設備などが後者の例である。

 簡単な作業を少し示しておこう。あるものは少々計画を必要とし、ほかのものは班の集会にいきなり持ち出せるものである。(第9章班のハンドクラフト参照)
 (1)30cm×5cm×10cmの木材から、何か有用なものを作り出す。皆ナイフを持ってくること。
 (2)木の切れ端で鳥の巣箱を作る。木切れと道具を準備する。
 (3)ブリキ缶、針金やくぎでキャンプ用具を作る。空缶、ブリキの切れっぱし、針金その他を準備する。
 (4)皮革、皮ひも、つの、クルミ、竹の節、羊の骨、木の皮などで、ネッカチーフスライドを作る。
 (5)棒や糸を使って、橋や信号塔の模型を作る。
 (6)班旗のデザインをする。
 (7)石鹸に班のシンボルである動物を刻み、誰がいちばん上手にできるかを見る。
 (8)各自リノリューム(プラスチック)スタンプを作る。
 (9)厚紙を切り、ふりかけ法によって班の便箋の頭書(レターヘッド)を作る。
 (10)ベニヤ板で、各自の進級盾を自分でデザイン してペンキを塗り、班の本拠の装飾用にする。

 次に大きなハンドクラフト計画をあげてみよう。
 (1)班の本拠のための家具を作る。または本拠にペンキを塗り装飾する。
 (2)班用テントをデザインし、模様を作り、材料を切り、テントを縫う。
 (3)キャンプのバケツやたらいのような、班のキャンプ用具を作る。
 (4)各自の用具入れ、用具入れの枠、物入れかごを作らせる。
 (5)ある特別な行事で、班全体がインディアンに扮することができるように、
  インディアンのかぶり物や、その他の道具を作る。
 (6)班の好きなキャンプ地に立てる、トーテムポールを作る。

もっと提案が欲しければ、第9章班のハンドクラフトのを参照のこと。


●計画

 君の班がどんな種類の班であるべきかについて、君はかなりはっきりした考えを持っている。しかし、班員たちは君の考えを汲み取り、希望を分かち合っているだろうか。

 班の集会で計画を討議するときに、これを発見できる。ここで班員たちの熱意をあおるために、君の将来への考えを討議するチャンスを、君は持つことができる。いつも班員たちのほうを向いて、「次は何をしよう」と言わなければならないようでは、成功はおぼつかない。成功の秘訣は、君がいっぱい提案を持っていて、いつでも、「次の日曜日に乳滝へハイキングをやるのはどうだい」とか「来月、教会のバザーに手を貸すのはいい考えじゃないかね」とか「次の班集会はキャンプファイアを囲みながらするのはどうだろう」という具合に、彼らに働きかけることである。

 班員たちが考えていることをまず発表させ、それから、提案のどれが実行されるべきかを決定する。これに関連することであるが、班長会議が決定した隊全体のためのプログラムを、班員たちに公表することは大事なことである。君は、班員たちの考えを班長会議に持ち出したわけだが、今は、班長全部で決定したものを持ち帰ったわけである。もろろん、隊全体の活動の成功のために、君の班は喜んでその分担を果たすだろう。

 物事を計画する場合、君は君のグループのリーダーであって「ボス」ではないということを、決して忘れてはならない。君は班の一部分であり、ほかの少年のひとりもまたそうである。君の班は誰もが発言権をもち、多数決で行動を決める小さな民主主義の組織である。政治についてのリンカーンの有名な言葉「人民の人民による人民のための」は、国にだけあてはまるのではなく、班に対しても同様にあてはまるものである。

(計画に対する提案)
 前もって計画を立てなさい。しかしあまり先走ってはならない。来るべき2、3ヶ月の間何をするかをはっきりと決めて、その後は、何を成し遂げるかについてだいたいの考えを持つようにする。
班の「大いなる将来」についての計画と夢に君の時間を全部費やしてはならない。目前の事柄について決定を下し、記録係にその決定の記録をとらせ、それから行動に移る。

 君が考えなければならない事柄のいくつかを次に掲げておこう。
 (1)次の集会のプログラムと、誰に何をやらせるかを決める。
 (2)ハイウ係と食糧係の提案を受けて、次のハイキングまたはキャンピングを決める。
 (3)進級・・・班員全部を1級スカウトにするにはどうしたらよいか。
 (4)制服・・・班員100%の制服着用を目標にする。
 (5)班員の選定・・・誰を勧誘して班に入れようか。
 (6)ほんとうの班善行をやろう。
 (7)どのようにしてキャンポリーで最優秀賞をとるか。
 (8)次の隊集会で何か実演するのはどうだろうか。または次の隊1泊キャンプで、
  何か新しいキャンプファイアの出し物を2つ3つやったらどうだろう。
 (9)どのようにして新しいテントを手に入れるか。
 (10)班の財源を確保するために、どうしたら金を得られるだろうか。


●諸活動

 「勉強ばかりして遊ばない子供はバカになる」
といわれているが、班でも仕事ばかりしているとバカになる。これが君の集会に活を入れ、おもしろさを増すために、ゲームや歌やイエ−ルや物語をとり入れなければならない理由である。

 君の歓呼係に本領を発揮させるようにする。彼はそのために選ばれたのであり、彼が登場するときである。

(ゲーム)
 班内でやれる楽しいゲームは、スカウト技能ゲームからインディアン式腕相撲、屋内動物狩り、キムスゲームなど楽しみ本位のゲームに至るまで無数にある。

 歌のうたい方を知り、うたうことが好きにならない限り、君の班はまだほんとうの班にはなれないのだ。ハイキングのときであれ、キャンピングのときであり、キャンプファイアのまわりであれチャンスがあるときは、いつでもうたいなさい。班集会を利用して新しい歌を覚えなさい。

(イエ−ル)
 耳をつんざくような、よいイエールを6つばかり作って、元気いっぱい熱を込めて叫べるように何回も練習する。

(物語)
 「僕には話はできないよ」という班員をそのまま引っ込ませてはならない。とにかく始めさせることだ。そうすれば班を正式の話し手の集まりにすることができるだろう。

 班集会の間にやることについては、その章を参照するとよい。いろいろな班集会に必要なあらゆる提案を、君は発見することだろう。


●閉会儀礼

 ちょうど君がおごそかに班集会を始めたのと同じ調子で閉会する。、
  開会儀礼のところで述べた提案のひとつを用いるか、または次に示すものから選ぶ。
 (1)国旗に向かって−列に並ぶ。各班員は三指礼 をして順番に列から一歩進み出る。
 (2)模擬キャンプファイアの周りに集まる。 「DAY IS DONE」を歌い、“海に丘に空に‥”の
  ところへきたら、腕をゆっくり上げ、“やすらにいこわん”と結ぶときにゆっくりとおろす。
 (3)班のイエ−ルで会を閉じる。
 (4)班長が「準備はよいか」と言い、班員はいっ  しょに「準備よし」と答える。
 (5)円形を作る。スカウトひとりひとりがスカウトサインをし、左手で左側のスカウトの上げた
  手首をつかまえさせ、「ちかい」を唱えさせる。
 (6)円形を作って立つ。前で手を交差させる。右手で左側のスカウトの左手をつかみ、左手で
  右側のスカウトの右手をつかむ。「別れの歌」を歌いながら、曲に合わせて体をゆらせる。
 (7)班旗を中心において円形を作る。各スカウトは左手で班旗の棒をつかみ、班の歌を
  歌いながら、右手で敬礼する。


●班集会を運営する

 さてこれまでで班集会についてのあらゆるアイデアの整理がついたに違いない。アイデアを選定し、計画し、準備し、そして集会を遂行するのは君の仕事である。

(選定)
 君はすでにやりたい活動について、班員と討議した。またスカウト活動で進級するには、どういう訓練を彼らが必要とするかということも、君は知っている。班員全部にいちばんためになる事柄を選択することが、次の問題である。

 スカウト活動を始めたばかりの少年たち、おそらくまだ初級にも達しない少年たちをかかえるという問題に、多分ぶつかるであろう。ほかの者は1級への途上にあるかもしれない。君は皆に仕事を与え、喜ばすようにしなければならない。だからバデイ・システム(相棒方式)を採用したらよい。すでにスカウト活動について知っている者たちに、新しい少年たちを教えさせるのである。この方式をくり返し、新入班員たちを古参者たちの進んだ応急手当の実験台にしなさい。班にいる者たちと彼らが必要とするものを、いつも心にとどめていれば、これまで述べたたくさんの提案事項の中から、よいプログラムを選定するのに、さほど困難は感じないはずである。

(計画)
 いろいろな活動を選んだら、次にやることはそれらを効果的なプログラムに組み込むことである。次のページに示したような書式の用紙を前にして、君の助手----次長----といっしょに座りなさい。君がやろうと決定した活動をその紙に記入し、そして各活動に要する時間を見積もり、その活動に移る時間を記入する。このようなスケジュールは物事を進行させる助けになる。

 しかしながら、あまり厳密にこれにしたがってはならない。それは物事を推進するためであって、じゃまするものではないからだ。たとえば、ある行事をやってみて非常におもしろいと思う場合、君のスケジュールがそうなっていたからといって、わざわざ8時5分きっかりにそれをやめる必要はない。要は弾力性を持たせることだ。

(準備)
 プログラムを振り返り、どういう準備や器具が必要かを考える。たとえば信号法、送信では君はブザーを作り、通信文を書き、紙と鉛筆を準備しなければならないだろう。

 救急法のためには、包帯、副木、さらに仮想で仕組んだ事故を本当らしく見せるための、メーキャップ用材料すら必要であろう。結索法の訓練には、ロープと2、3本の丸太が必要となろう。必要な用具のリストを作り、君の助手か班の誰かに責任を持っていろいろなものを持ってこさせる。あるいは君自身その責任を負う。

(遂行)
 「プリンのおいしさは食べてみてわかる」

 同じように、班集会の計画と準備のよしあしは、集会を開いてみて初めてわかることだ。前もってあらゆるものを準備し、まっすぐにプログラムに飛び込むことだ。君の持っている材料をよく知り君がやることに確信を持ってのぞむならば、班員たちを引っ張っていくことは非常にたやすいことを知ることだろう。そしてまた、君の集会は成功せざるを得ないだろう。

 それが集会をうまく運営する技術である。そして幸いなことには、その技術は、努力する班長なら誰でも獲得することのできるものなのである。

班長のてびきを読んで
 

 まず、班の集会とは何をするところなのか、ポイントを整理しておこう。
  • スカウトとして必要な事柄について班員たちに教える。
  • スカウトのちかいやおきての意味を彼らが理解するのを助ける。
  • 君が一所懸命やりたいと思う活動を選び、将来への大きな計画を立てる。
  • 将来の仕事のため、君自身と君の班員たちを訓練する。
  • 君のスカウトたちが班精神に目覚め、ひとつのグループとして共に働き始める。

 本来、スカウティングは班において実施されるものである。そして、ときどきいくつかの班が活動の成果を披露し、競い合う場が隊である。班の活動が中心であり、その大半を占める。しかし、この大原則が崩れてきているのは極めて残念なことである。あらためて班集会の意義と重要性を見直したい。班の集会なくしてスカウティングは成り立たないのである。隊集会よりも班集会を、レベルが低くてもいいからコンスタントに実施することに全力を注ごう。

 次に、班の集会の計画に必要な事柄が具体的に説明されている。ただし、それぞれにおかれている状況によるので一概にこうすればよいというものはないが、もしも班の運営がうまくいっていないようなら、ここに述べられていることをひと通りやってみることだ。やってみて状況に合わない部分があったなら工夫すればよい。

 中には「班集会はレポートを書くものだ」と思っている方がおられるようだが、レポートや進級課目などは基本的には「個人のプログラム」であることをここで確認しておく。

 特に重要だと思われる記述をピックアップしてみよう。
  • 班集会は屋内でやらなければならないという、おかしな考えを持っている班長が多い。
  • 真に活動的な班を持とうと思うなら、毎週班集会を持つべきである。
  • 2週間に1回も会合を持てないような班では、ものにならないから止めたほうがよい。
  • 班集会を成功させるためには、次の点に注意を払わなければならない。
    1. 君が計画することは、班員皆にとって興味あるものでなければならない。
    2. スカウトひとりひとりが果たすべき、はっきりした責任を持たなければならない。
    3. 集会は、各スカウトが何か新しいものを覚えるように計画されなければならない。
    4. 集会の各部分は短くして、区切りをよくしなければならず、集会では、実際に行うことができるよリ以上のものを計画しなければならない。
  • 班集会で確実にやらなければならないことは、前の班集会または前の週のハイキングやキャンピングのことを書いた、班の日誌や記録を読み上げることである。この報告は記録係が読み上げ、班全体がそのまま、あるいは修正して承認する。集会のある部分を進級問題に当てようと思うなら、会を進める前に、2〜3分費やして各人の進級記録を調べるのもよい考えである。
  • 実際に行うことによって覚える。これがスカウトの前進の方法である。       .
  • 成功の秘訣は、君がいっぱい提案を持っていて、いつでも「次の日曜日に乳滝ヘハイキングをやるのはどうだい」とか「来月、教会のバザーに手を貸すのはいい考えじゃないかね」とか「次の班集会はキャンプファイアを囲みながらするのはどうだろう」という具合に、彼らに働きかけることである。
  • 君の班は誰もが発言権を持ち、多数決で行動を決めるデモクラシーの組織である。

 これらを見ると、今までやってきた班集会がでたらめであったことがよくわかる。スカウトたちに申し訳ない。

 この原因は班長が班運営の方法を「知らない」からであり、それは指導者の責任である。班長に対して方法を教え、インスピレーションを与え、モチベーションをかけ、そしてやらせる。それが指導者の役割である。

 正しい班制度を経験することによってスカウトたちは「社会の役に立つ人」に育つのである。それが私たちの目的である。