班長のてびき

4.班の組織(2)
●次長

 班の中で、君のポストの次にいちばん重要なのは、君の助手のポストである。そのポストのしるしとして、彼はユニフオームの袖に、1本の緑の線の入った記章をつけている。ただこの緑の線(グリーン・バー)があるから、次長はほかの班員よりえらいのだと単純に決め込む班が多いのは、困ったことだ。君の班の場合、そうでないように注意しなければならない。君の助手はただ次長章をつけているだけではいけない。はっきりと、君の助手としての仕事をしなければならない。彼の仕事の内容は、その役名からわかる。彼は、君が班内でやるあらゆる事柄について、君を助けるのである。

 これをするために、彼は君に完全に信頼されなければならないし、また君のやり方を完全に理解していなければならない。彼が君と君の特別な指導方法を理解しなければ、君の不在のときに彼は君の代わりをすることはできないし、また君と彼の2人の間に、ほんとうの意味の協力というものはありえない。だから君の助手を選ぶ際には十分に注意する必要がある。

(彼の資格)
 君の助手は、一人前の完全な班長としての、あらゆる資格を持っているべきである。立派なスカウト精神と、ある程度の指導力を持った円満なスカウトであるべきである。彼は君といっしょに立派に仕事をし、君と同じように班員から信頼されていなければならない。

 班長が自分といちばん仲のよい班員を、自分の次長にするという間違いをすることが、ときどきある。次長の選任に私情をはさんではならない。
「班にとって、誰がいちばんよい次長になれるか」
ということだけを考えて、決定することだ。
だからたとえ君の親友でも、次長として申し分がなければ、誰も君の選定にけちをつけたりはしないだろう。もしそうでなかったら、皆の悪感情をあおるだけである。誰を選ぶべきかについて君の心の中に疑問があるときは、班員会員に投票で決めさせるほうが、ずっとましだろう。

(彼に指導させる)
 君の次長は、班の仕事を計画したり、班員を訓練したりする場合に、君の手助けをする第一人者である。君の不在のときに彼は隊活動で班の指揮をとり、班の集会やハイキングを指揮し、隊幹部会議で君の代理を務める。しかし自分は何をやるべきかを知って、初めて彼は仕事をうまくやることができるのだ。だから、君が出席しているときでも、定期的に班の指揮を彼にゆだねて、彼が班を指揮することを習得するチャンスを与えなければならない。次長を全般的な助手として用いると同時に、彼に指導力を必要とする特殊な仕事、たとえばゲームの指揮などをやらせることである。班に向くようなゲーム用具を集めることに彼の興味を向けさせる。ゲームをやるときには、いつでも彼にその指揮をとらせて、自分の役務には、ほんとうの責任が伴っているのだということを感じさせることだ。同時に記録係といっしょに、班員の出欠を調べさせ、欠席した班員たちに連絡させて欠席の理由を調べさせる。

 君と班員たちの家庭をつなぐ役割を彼に果たさせるのである。さらにハイキングやキャンピングについて必要な指示を、彼に考案させる。言いかえれば、君はこまごましたたくさんの仕事を、彼に肩代わりしてもらいながら、彼に自分の能力を示す機会を与えるのである。班の指揮を彼にも十分手伝わせることだ。


●会計係

 この世の中で、お金を取り扱うときは、いつでも我々はそれを正しく使い、その使途を正しく記録しなければならない。このことは班の場合にもあてはまる。隊は予算計画を持ち、隊費は班員たちが納める。キャンピングを計画するときは現金が必要となる。お金無しにはすまされない。どうしてもお金を取り扱わなければならないことになる。だから、まず最初に誰かを任命しなければならない班の仕事のひとつは、班の会計係である。この仕事には、計算に明るく、物事をきちんと正確にやる少年が必要である。

(その仕事)
 その仕事を引き受けると、会計係はまず最初に君と相談する。君の隊は、登録や月刊誌の購読料やその他の出費にあてるために、毎月各スカウトが一定の金額の費用を払う予算制度を採用しているのが、だいたいにおいて現状であろう。会計係は、隊の予算がどのようにして編成されているか、また自分の班はどのようにしてその分担を果たすのかを、理解しなければならない。

 隊へのこれらの費用の納入を遅らせないようにするために、君の班の会計係が、班員たちから前もって隊費を集め、班の帳簿に記録した後で、隊の会計係に預けることが賢明なやり方である。こうすれば、堅実に歩むことに役立ち、自分の義務を果たしているという誇りを助長する。

(ハイキングやキャンピンクの費用)
 隊費を取り扱うほかに、班の会計係は、食糧係やハイク係といっしょになって、班のハイキングやキャンピングの準備をする。この場合、班員たちの金をまとめて班全体の食糧を一度に買い込む。
会計係は、金を集め、金を保管し、必要な支払いをし、後で完全な会計簿を作る。この会計簿は次のページの表に示すようなものにしてもよい。

(班の巣と班の備品)
 希望に燃えている班は、よく設備の整った巣を持ちたいと願うだろうし、また隊が供給することのできるもの以外にも、自分たち専用の備品を持ちたいと思うだろう。たとえば君の班員たちがパイオニアリングに興味を持てば、縛材用のロープがたくさん必要になる。

 進んだ救急法の訓練のため、包帯や三角巾など、また仮想患者を本物の負傷者らしく見せるための、いろいろな種類のメーキャップ用具などが必要になるかもしれない。

 ハイキングをするのに、特別なハイク用具を作りたいと思うかもしれないし、またキャンピングでは、テント張りをして自分の腕を試してみることに決めるかもしれない。これらはすべて金がかかるし、その金は君たち自身で作り出さなければならない。班集会で計画案を討議し、何をやるかを決定し、班の会計係と備品係を協力させて、その費用がいくらかかるかを調べさせる。それから予定を立てて隊長に持っていく。君たちの夢の実現にとりかかる前に、隊長の助言と承認を得るようにする。

(班のためにお金をかせぐ)
 精力的な班の会計係は、彼の班がお金を稼ぐ方法を考案し、隊が資金集めの行事をするときには、自分の班にその分担を果たさせる。

 ほんとうに自分で稼いでやっていこうと思う班の参考のため、いくつかの例を次に示すことにするが、同時にこのことは忘れないようにする。すなわち、何事をやるにも、その前にまず隊長の承諾を得ること。また君の活動計画が、法令に触れす、さらにそのような仕事を必要としている人々から、仕事を奪うようなことのないようにする。

 手芸品を作る 温室で働く 植樹をする ビラを配る 庭師のために苗床を作る 家畜を飼う両親の留守に子守りをする 農家や庭師の手助けをする 飼い主が留守のときに愛玩動物の世話をする 持ち主が留守のときの庭の世話をする 薪集めや薪割りと積み上げ 愛玩動物を飼育する家庭の雑事をする 事務所や店で臨時雇いの仕事をする 雪かきをする ペンキ塗りや掃徐をする 果物や野菜を取り入れる 犬を洗う 落ち葉をかき集める 魚釣りのえさを売る クルミやイチョウの実を集める 荷物配りや使い走りをする 芝生を刈る 古金属、古紙、空瓶、空缶を集めて売る 趣味の切手などの交換会をする

(仕事は山ほどある)
 班が隊と班の備品を確保するために、その分担を果たそうとする熱心な班であれば、その班の会計係がやらなければならないことはたくさんある。この仕事をすることはよい経験となり、この仕事を通して彼が受ける訓練は彼の将来にとって大きくプラスになるかもしれない。


●記録係

 班の競技で勝ったものに、この仕事を割り当てるのもよい考えではないかと思う。

 班の1ヶ月の活動記録を、いちばん上手に書き上げたものに、記録係の仕事を与えるのである。報告書は君自身が採点するか、あるいは隊長や団委員会のメンバーに採点を頼めば、さらに興味をかきたてることになる。

 競技の目的は、班の歴史をもっとも生き生きとした文体で、きちんと体裁よく書けるものを見出すことである。もし彼に、書く能力と同時に、報告書に簡単なスケッチを入れる能力があればなおよい。

(班の日誌)
 記録係の第一の仕事は、班のあらゆる活動を生き生きと記述して、班の日誌をつけ遅れのないようにすることである。「生き生き」という言葉を忘れないように。

 次のような書き方は避けよう。
 「9時50分家を出る。10時45分○○到看、△△キャンプ場まで歩く。テントを張る…」
このような書き方をせずに、報告は活気に満ちたものにし、途中で班員たちがしたこと、言ったこと、見たことなどを記述しなければならない。

 日誌にはもちろん、班の冒険、業績や成功したことなどすべて書かなければならないが、同時に失敗やしくじりも含めることを忘れてはならない。
 しくじったことなどを含めなければ、記述は完全とは言えない。賢明な記録係なら、班員全部をけつこう多忙にしてしまうことだってできるのである。カメラを持っている者には、班の活動を写真にとってもらい、班の「絵描き」には、活動中の班員たちの絵を書いてもらい、班の地図専門家には、ハイキングのルートや、キヤンプの配置図などを描いてもらう。彼はまた、工作の上手な班員に、日誌の革製のカバーとか、止めひもを作ってもらうことだってできる。こうして出来上がった日誌が、どれだけ班の精神を高揚するか想像してみることだ。

(班の記録)
 記録係のもうひとつの重要な仕事は、班員たちの出席状説や、隊費、班費の納入や、進歩の記録をつけることである。

 記録係は、君の手助けを得てスカウトたちの氏名、住所、誕生日、その他を記録することから仕事を始める。それから各集会やハイキングに参加した班員の名や、隊費、班費の納入その他を、×印(○でもよい)をつけて記録する。
 スカウトが1級または2級の要件を満たしたり技能章を獲得したら、その都度これも記録簿に記入する。
 班の記録簿は、ひとめ見ただけでスカウトひとりひとりの状況がはっきりわかるように、記録しなければならない。

(隊への月間報告)
 活発な隊は、班から毎月簡単な報告を受ける。この報告は、何か競技がおこなわれていて、班の諸活動が最終結果に大いに影響を及ぼすときなどには、特に重要である。

 もし君の班記録簿がきちんと記入されているならば、この月間報告を書き上げるのに、ほんの数分しかかからないはずである。この報告書の1枚は普通、班長がサインして隊長に送り、もう1枚は控えとして、班のファイルにとっておく。

(班のファイルを保存する)
 班のファイルは、普通紙ばさみか折りたたんだボール紙で、その中に記録係は、将来、班にとって必要となるかもしれないような資料や、手で書いたり印刷したものを保管する。隊の月報や班から発送した手紙の控え、班が受け取った手紙、地区や連盟の大会や各種行事のプログラム、団や連盟などの活動についての新聞記事の切り抜きなども、その中に含める。

(その他)
 もし君の隊が多くの隊がするように、毎月、隊ニュースを出すとすれば、編集者に班のいろいろな活動についての、簡単な記事を提供するのもまた、記録係の仕事である。

 君がまた、小さな町に住んでいるなら、町の新聞編集者は、君の班でやっている事柄、特に報告するのに値するたくさんの活動を班がやっている場合はなおさらのこと、それらの事柄についての短い記事を受け取ることを喜ぶことだろう。そして最後に、君の班員たちが書庫を作ってスカウトの手引書や自然に関する本などを保管すれば、その書庫の世話をし、本の出し入れを記録するのはまた、記録係の仕事である。記録係は、怠け者にできる仕事ではないが、よいスカウトにとっては、もっとも興味のある班の仕事のうちのひとつである。


●備品係<クォーター・マスター>

 次のリストにあがるのが備品係<クォーター・マスター>である。班の備品や本部を世話するのが彼の仕事である。古い野心的な班では、班のハイキングやキャンピングの用具の大部分は、スカウトたちが自分で作ったものを持っているものである。君の班がそこまでいけば、もうしめたものだ。

 新しい班は、班のものとして保存する物品以外に、隊の財産(テント、炊具など)と、班員たちの個人備品(おの、スコップ、救急箱、方位磁石、その他)に依存しなければならないだろう。しかし、班がその備品を所有していようと、またほかから借りようと、それは問題ではない。問題は、それらの用具を班が使用する以上、備品係はその保管場所を知り、維持する責任があるということである。

(用具の整理をする)
 まず第1に、新しい備品係は、班がその活動に必要とするあらゆる用具のリストを作り上げる必要がある。リストが出来上がったら、班がすでに持っている用具をリストから消す。次の班集会で班員たちから、彼らがどういうものを持っていて、それを班全体のために役立てようとしているかどうかを調べる。その後で備品係は用具全部を1ヶ所に集める。ここで注意深く品物を調べ、必要な修理をさせる。それから必要なときにいつでも使えるようにして、しまっておく。

 備品係は、何でも自分ひとりでやろうとしてはいけない。むしろ反対にスカウトひとりひとりに、班の用具を確保することに興味を持たせるようにしなければならない。

(備品の持ち出しと収納)
 班がハイキングかキャンピングを計画するときは、いつでも備品係は、必要な備品を取り出して、持っていくものを自分のノートに記録する。そして班が戻ってから、その用具を受け入れる。このとき、すべての用具がきちんとしまっておける状態にあるかどうかを確かめる。もしテントがまだぬれていたら、それを乾かすように手配し、またもし破損していたら修理させる。おのやスコップなどの用具は、よくこすって、さびを防ぐためにグリースをぬっておく。おのは研ぐ必要があるかもしれない。もし何か行方不明のものがあったら、直ちに調査し、もし紛失しているものがあれば、代わりを購入する手配をする。

(在庫品調査)
 一定の期間----半年くらい----ごとに備品係は、用具の在庫調査をやらなければならない。すなわち、各品目ことに見積り価格を表示し、班の財産についての完全で最新のリストを作るのである。
このリストには、単にキャンピング用具ばかりでなく、班のデン(本拠)にしまってある品目も含める。

 このリストをほんとうに役立てるには、各品目について、状態は良好であるか、修理すれば使えるようになるか、または取りかえる必要があるかどうかなどをあわせて記入すべきである。君と会計係と備品係が頭をそろえて、君たちの用具を標準に持ってくるために、班全体の資金作りと用具調達運動の計画を練るのはこのときである。

(班のデン(本拠))

 用具のほかに、備品係はまた隊本部での班コーナーを手入れすること、つまり装飾などを施して、そこをきろんとしておく責任を負っている。もし君たちが自分たちのデンを持っていたら、そこの器具類をよく修理し、室内をいつでもきろんと整頓しておくようにするのは、備品係----クォーター・マスター----の仕事である。


●ハイク係

 もし君が、君の班にハイキングやキャンピングを大いにやらせたいと思うならば、君は自分の住んでいる地方で、出かけるのによい場所をたくさん知らなければならない。そのような場所を発見するには、ハイク係を任命し、彼に場所深しを大いにやってもらうことだ。おもしろいハイキングのコースや、よいキャンプ地をいつも注意して見つけるようにするのが、ハイク係の仕事である。
彼は自分で出かけていって探したり、またほかの班の班長や隊長その他の人々と話し合ったりする。
そしてよさそうな場所のことを聞いたら、彼自身で出かけていって、ほんとうに班が行きたがるような場所であるかどうかを確かめてくる。

 このようにして彼は、本部から数キロ〜10kmの半径内で、あらゆる種類のハイキングやキャンピンクに適した場所を知るようになる。

(ハイク・キャンプ控え帳)
 いかに優秀なハイク係でも、自分が調査したハイキングのコースや、キャンプ地の詳細を1から10まで覚えておくことはできない。そこで彼はノートを持っていて、その中にそれぞれの場所について、その所在地、そこに行く方法、見るべきもの、その他を書き込むのである。

 これらのノートのほかにハイク係は、その地域の地図を入手すべきである。5万分の1または2万5千分の1、あるいは、もう少し詳しいものが欲しければ、1万分の1といった地形図を用意するとよい。

 これらの地図は、ハイキングの計画を立てるのに用いる。またハイキングがすんだ後でハイク係は、君たちが行ってきたところを示すために、コースを地図に記入するようにする。君の班がやったすべてのハイキングを示すような地図を作れば、それは君の班の伝統を築き上げるのに大いに力になるだろう。

(所有主と連絡をとること)
 もし君の班がクロスカントリー・ハイクを計画するならば、個人所有の畑や森の中を通る許可を、まず取る必要があるかもしれない。もしまた新しいキャンプ地でキャンピングをやるつもりなら、その土地の使用許可ばかりでなく、薪を集めて火を焚く許可なども得なければならない。これらの許可を取るのは、ハイク係の仕事である。それで、これらの行事をおこなう日時と場所が決まったら、ハイク係は電話または手紙で、使用しなければならない土地などの所有主と連絡をとり、必要な手配をしなければならない。ハイキングやキャンピングの間中、ハイク係は、所有主から出された土地使用についての条件を各班員に理解させ、それをみんなに守らせるようにして君に協力する。

 その行事がすんで、班が再び家に帰り着いたらすぐにハイク係は、その土地の所有主に手紙を書き、班にその土地を使わせてもらったお礼を伝える。このような行事の後で、すぐにこのような礼状を出すようにすれば、今後も君の班は心から歓迎され、その土地を使わせてもらえることは確実である。


●食糧係

 食糧、これが食糧係の責任である。班のキャンピングを成功に終わらせようと思うならば、この仕事もまた非常に重大な責務となる。この仕事には君も想像できるように、料理とよい食物を作るのに興味を持っている者を選ぶことである。彼はキヤンプ料理についても知識を持っており、品物を正しいところで、正しい値段で買い入れる才能を持っていなければならない。

(班自体のメニュー)
 いやしくも食糧係と名のつく者は誰でも、班員たちの好む料理が何であるかを発見するのに手間は取らない。それがわかると彼はすぐに、調理法の資料を集めることを始め、班全体をまかなうのに必要な食糧の分量を計算する。そして、よい食糧係はこれだけでは満足せず調理法についての資料をできるだけ多く集めて、班がキャンピングについて検討するときは、いつでも朝食、昼食および夕食のメニューを提案することができるようにしておく。

(経費を計算する)
 もし食糧係がほんとうに賢明ならば、メニューに必要な品物、つまり肉、野菜その他の値段について、かなりはっきりした知識を持っていて、1回の食事にだいたいいくらくらいかかるかということを、すぐに計算できるはずである。もしまだ値段を調べていなければ、キャンプの2、3日前に彼ら自身の食事の分担金を払い込むのに間に合わせるよう、その計算をすませておかなければならない。食糧を買い込むのに現金がいるが、お金は普通、会計係に払い込まれ、それから会計係と食糧係がいっしょになって買い物に出かける。

(食糧の購入)
 キャンピング出発の前日、この2人の買い出し係は食糧を買い入れ、それを班のデンまたはどこか班員たちが集合する場所まで運ぶ手だてを講する。肉や果物のように腐敗しやすいものは出発直前に買い入れる。牛乳や卵や野菜はキャンプ地の近くで入手できるならば、家から持って行かないで現地で入手するように手配する。すべての準備が整ったら、食糧係は、食糧をスカウトたちに分割してキヤンプ地まで運ばせる。キャンプ地に着いたら、再び全部を取りまとめて、キャンプ期間中間に合うように貯蔵する。

(料理法を調べる)
 君がちょうど班をまとめている間に、食糧係は主として班の料理の責任を受け持つ。しかし、激励と助言と積極的な援助を与えることによってできるだけ早く各スカウトを、立派な料理上手に仕立てることを、食糧係は目標にすべきである。

(残り物)
 班が家に帰るとき、食糧係は使いきれなかった食糧を集める。次のハイクやキャンプまで保存できないようなものは処分し、砂糖、小麦粉、缶詰類のように後で使えるようなものは、食糧箱に入れて班のデンに保管する。

 食糧係がしっかりしていれば、腐敗しやすいものは、残ったとしてもほんの少ししかないだろう。必要なだけしか買い入れないようにするからである。


●チアマスター<歓呼係>

 チアマスターは、その名の示すとおり歓呼係である。班の中に歓呼や喝采を持ち込み、君たちの叫び声に活気を入れ、君たちの歌に調和をもたらすのが彼である。

(歓呼や喝采をリードする)
いわゆる歓呼をリードするものとして、チアマスターは、曲芸もいくつか含めて、真のチアリーターになる技術を習得しなければならない。自分の仕事に変化を与えることができるように、いろいろな叫び声を集めておくように彼に勧める。即座に何か新しい呼び声を自分で作れるようになっていればさらによい。

(班のラッパ手)
 もし君の班にラッパ手が必要だと思うなら、チアマスターにやらせてみるとよいだろう。取が歌えて、音感とリズム感のあるものなら、たいてい容易にラッパの吹き方をのみこむことができるものだ。

(歌と演技)
 彼はまた歌の指揮者でもある。歌の種類は、ハイキングでうたう歌、おもしろい歌、まじめな歌、あらゆる気分に合う歌などたくさんある。皆がどういう歌が好きであるか彼は知るようになる。

 演技もまた彼の仕事の一部である。寸劇などをいくつか準備し、班員に練習させて、隊集会の夜やキャンプなどで、班員がいつでもそれを出せるようにしておく。

 チアマスターは、自分の妙技を披露して班のキャンプフアイアに生気を吹き込む。そして20kmハイキングの最後のところで班を元気づけるのもまた彼である。

 チアマスターは、やることはそう多くはないが熱意と興味を絶対的に必要とする。彼のアイデアに皆が喜んで同調するほど、彼は皆に好かれていなければならない。公衆の面前へ出て何かやるようなときなど、班員の生来の遠慮を彼がすることができるほど、皆に好かれるような者でなければならない。彼は魅力がある個性プラスアルファの少年でなければならないのだ。


●一心同体

 さてここで、組織体の持つ雑多な仕事にもういちど目を通してみよう。そうすればひとつひとつが、あたかも時計の歯車のようにかみ合っていることがわかるだろう。君はいろいろ複雑に分かれている仕事を動かす、いわば時計の大きなぜんまいのような存在なのである。そして君がひとつの歯車を回転させると、同時にほかの歯車もいっせいに回り出すのだ。たとえば、班の会計係は次長と記録係といっしょに働き、2人に相談なしでは決して勝手なことはしない。ハイク係と食糧係は、二人三脚の関係にある。また歓呼係は、記録係に頼んで歌を作ったり、妙技をひねり出すのを手伝ってもらう。こんな具合に、お互いが関係づけられていくのである。

 こんなたぐいの組織の上に立つ班なら、いろいろなことが達成できる。2つの目よりは16の目で見たほうが、より多くのものが見え、8つの頭を合わせたほうが、君ひとりの知恵で絞り出すよりは、もっと多くの名案を生むことができるものである。

 こうして、皆が一体となって働き、ひとりひとりがその務めを果たすようになれば、いきおい、誰もが班の行事のすべてに、強い責任感を自覚するようになるものである。

 君が、班員のひとりひとりに信頼を寄せ、班会体のために各自が最善を早くすように仕向けるならば、これがひいては、全員の人格、指導力そして一般的能力を伸ばす絶好の機会となるのだ。


●融通をきかせる

 しかし、何がなんでも1から10まで、今言ったような組織どおりに運ぼうなどという、融通のきかない考えはよすべきだ。そんなに四角四面にやらなくても、ほかにいくらでも方法がある。ただ何をするにつけても、ある程度組織的なやり方は必要である。だから、大筋の点を組織どおりにやるのは君の自由だが、そうでなければ、君の班独特の欲求とにらみ合わせて、君なりのやり方を案出してもよいわけだ。

 ただ、やり方はどうあれ、ますいちばん大事な仕事から先に手をつけ、しかも派手にやらないようにすることだ。

 君はまた、できるだけ早めに、君の片腕となる助手を見つけなければならない。そして記録係には班の日誌をつけさせ、会計係には班の台所のやりくりをさせる。これをきっかけに君がどんどん仕事を進めれば、いきおいほかの班員も自分で仕事をするようになるだろう。

 班をひとつの組織に乗せる秘訣は、後にも先にも、班員たちにある仕事を引き受けさせ、分担してやってもらう以外にない。そうすれば、班員たちはいつの間にか君の言いつけを待たすに、自分でその仕事をするようになるものだ。ここまで来たら、君の班の組織作りは、もう軌道に乗ったも同然である。

 結論を言えば、班の組織作りにあたって心得なければならない重要なことは、班員ひとりひとりに仕事を割り当て、班運営の任務を分担させることであることを忘れないことだ。班員すべてが、自分に与えられた務めを、効果的にしかも和気あいあいのうちに果たしながら、足並みをそろえて進むようになれば、君はそのうちに、立派な指導者として自他共に認められるようになるだろう。
君の班は、もう、ひとつのチームに育ったのだ。

班長のてびきを 読んで

 私たちはすでに班制度についてさまざまな知識を持っている。しかし、いざそれを展開するとなると、形にとらわれてほんとうに大切なものを見失っているような気がする。たとえば次の記述である。
  • 8名という数が必すしも理想的だというのではない。班にとって、もっと重大なことは、ほんとうに協力的なグループであるということだ。
  • 最初は6人から始めるのがいちばんよいだろう。
    そしてそれ以上扱えることがわかれば、8人に増やせばよいのである。また、6人あるいは7人がちょうどよいと思うなら、その数で押し通しなさい。
  • 少年たちがたくさん君の班に入りたいと希望するような時が来たら、君の班員はグングン増えて、10名あるいはそれ以上になってしまうかもしれない。そのときは、もうひとつの班を作って、もうひとりの者に班長になるチャンスを与えることだ。
 日本では教育規定により、班の人数は6〜8名とされている。そのため、継続登録のときに人数の調整のためにいわゆる「班替え」をすることがある。しかし、それはここに述べられている班制度の考え方と矛盾しているのである。人数が減ろうが、増えようが、指導者が手出しすることではない。新しい班員を獲得するときも、班を分割するときも、班で話し合って決める。班のことはすべて班で解決するのが班制度である。結果ではなく、プロセスを体験することが重要なのだ。

 この章には、いろいろなタイプの少年たちに対する接し方が具体的に述べられている。たいへんわかりやすく実際的である。班長の指導力が‥と悩む前に、このようなアドバイスをしたいものである。それこそが班長訓練である。

 班長が班員に接するときのポイントは次の通りである。
  • しんぼう強くあれ
  • 協力であって制裁ではない
  • いつも仕事をさせておく
  • 責任を負わせること
要するに班長の役割は、班(あるいは班員)のさまざまな活動をマネージメントすることである。

ところが実際には多くの隊で、班長が他の班員の仕事までひとりで抱え込んでいるように見受けられる。そのために手が回らなくなり、班の運営ができなくなっているということもあるのではないだろうか。班長の仕事は、班の仕事を班員に分担することである。このことをしっかりと認識させよう。

 班員のそれぞれの仕事については具体的な記述があるが、解説は必要ないだろう。忘れてはならないのは、スカウトが自分の役割を把握できるようにきちんと説明することである。もちろんこれも班長の仕事である。

 最後にこの一文を引用する。
 「班をひとつの組織に乗せる秘訣は、後にも先にも、班員たちにある仕事を引き受けさせ、分担してやってもらう以外にない。」