夏の安全を守りぬく!
日本連盟教育本部コミッショナー 井上 保
スカウティング誌 '07.06 より

 

●スカウティングをより充実させるための安全管理について

 

●安全というプログラムツール

 「安全」という言動から、「冒険的な活動を阻害する」という印象を受けてしまいがちですが、むしろこれを「日頃の活動を充実させてくれるプログラムツール」としてとらえたいものです。

 活動の場における危険への対処は、@中和、A分散・希釈、B回避、の3つで、状況により「回避」を選ぶ勇気も必要ですが、なるべく積極的な働きかけで安全を保ち、活動を実現したいものです。危険の中和や希釈とは、指導者・スカウトの安全能力を向上させ、活動の難度(危険度)をその能力に合わせていくということですが、オーソドックスなスカウトプログラムの進め方がこうした危険への対処を大きく助けてくれるものだということを見直してみましょう。


●冒険的な活動へのニーズを生かす

 スカウトたちがたとえば「夏キャンプでカヌーに乗りたい」といい出したら、チャンスです。まず全員が泳げるようになっておこう、きちんとした漕艇法も習いたい、救急法も身につけておきたい、用具類の点検も重要だ、というようにカヌーを楽しむために準備すべきことをスカウトたちと話し合います。そうして挙げられた課題を予定に組み込んでいくことで、年間プログラムが充実してきます。もちろん個々のスカウトの進級にも繋がるでしょう。

 こうした活動では、救急法や用具の整備などでもスカウトはモチベーションを持ってより積極的に取り組むものです。そしてスカウトの安全能力が高まるにつれ活動の現場での危険の「回避」率は低下し、また指導者が管理すべき要素も減ってさらに安全の精度が上がり、結果的に活動の幅は安全に広がっていきます。だからこそ、スカウトのニーズから始めるというスカウトプログラム本来の進め方が有効なわけです。


●早期の計画が好循環を生む

 多忙な隊指導者の皆さんには「活動計画書」の作成なども億劫な場合があるかと思いますが、スカウトのニーズを早期に引き出すことが指導者の負担を大きく減じてくれるものです。

 モチベーションを持ったスカウトたちにしっかりと計画書を書かせ、彼らと一緒に見直しながら安全面も詰めていき、早めに団委員会に回します。団委員会でたとえば「もうー人安全管理者が必要だ」となれば、その一人を見つけるのに団委員会の支援が得られますが、好施直前のチェックではそうもいきません。そして万一事故があった場合でも、団委員会できちんと計画書に目を通してもらっていれば、それは隊長一人の責任ではなくなりますし、何より「より多くの目で見る」ことで、より多くの潜在危険を事前に発見・解消できるという実質的な安全の向上が大事なのです。

 また、野外活動で欠かすことができない現地下見の日程や、雨天時の代替プログラムの立案などにも余裕を持って当たることができます。事故は下見の不足や急なプログラム変更などの際に起こりがちですから、この点のメリットも非常に大きいのです。そして状況に応じた代替プログラムに楽しいバリエーションを持た早ておくことができれば、「回避」を選択する際にも、潔い決断ができるという強みを持つことができるわけです。

 安全管理に限らず、スカウトのニーズから始まる早めの計画書作成は何かと隊指導者の負担を軽くしてくれることになるのです。


●スカウトプログラムのすばらしさを活用する

 このように、スカウトたちが自ら年間プログラムを立案し、夏の最盛期に向けて1年間様々な準備を行っていくというスカウトプログラム本来の進め方は、「目標達成」という大きな収穫をもってスカウトの自主性をさらに育て、より冒険的な活動の可能性を広げていくというすばらしいものです。  現代の多忙な子どもたちでは、班運営が思うようにいかないといいます。しかし、多忙な時間を割いて参加するスカウト活動だからこそ、彼らにとってより充実した、得るものの多い機会でなければなりません。

 まずはスカウトたちが「やりたい」と思うことを、彼らから引き出すこと。なかなか容易なことではありませんが、これこそが多忙な指導者各位にとっても、最大の力の入れどころであり、また活動の安全を守るための最善の策でもあるのです。

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●夏季の諸活動に向けて〜安全の再確認を〜

 

 各隊・各団・各地区・各県連盟においては、夏休みに向けて夏季の諸活動の準備が進められていることと思います。本年もスカウト活動における安全等の留意事項についてとりまとめたお願いが県連盟を通じて配布されます(6月中旬を予定)。先立ちまして、その概要を紹介します。

 スカウト活動における安全については、下記を参照のうえ、野外プログラム、特に水のプログラムにおいては危険予知を含めて、十分な配慮をした上での実施をお願いいたします。

 また、これから真夏に向けて、熱中症やO-157などの食中毒の発生が予測されますが、夏季の野外プログラムの実施にあたって、その予防に十分な対策を講じられるよう、併せてお願いいたします。


●安全について留意すべき事項

1.水のプログラム
 水のプログラム(川遊び、水泳等)を実施する際には、実施場所の事前および直前の調査、十分な指導・監視体制、また、水難救助の態勢を整えること。この態勢が整わない時は、水のプログラム(川遊び、水泳等)を実施しないこと。

2.安全管理の原則
 室内、野外を問わず、スカウト活動における安全管理の原則を忠実に守ること。特に安全に関する各レベルでの指導者の担当を明確にするとともに、相互に連携を密にすること。

3.事前調査と万全の準備
 野外活動の場所・気象条件等の環境の事前調査、および用具・資材等安全確認と万全の準備、ならびにスカウトや指導者に対して安全に関する必要な知識や技能の事前研修や準備訓練を確実に行うこと。また、これらの実施記録は必ず残すこと。

4.余裕のある計画
 スカウトの年齢、知識、技能、体力に適合した、余裕のある計画をもってプログラムの実施にあたること。

5.自己の健康管理
 指導者は、行事やプログラム活動中の自己の健康管理を責任をもって行い、スカウトの指導や対応にあたって判断に誤りがないようにすること。

6.「慣れ」を戒める
 指導者・スカウトともに、厳に「慣れ」を戒めること。これまで事故に至らなかったが、幸いにして、ことなきを得たことも多いと思われる。このことが、これからも事故がないとの絶対的な保証にはならないことを銘記すること。

7.中止する勇気
 指導者には、プログラムの実施にあたって、状況に応じてその活動を中止する勇気と決断をくだす責任があること。

8.安全管理者の設置
 行事や野外プログラムなどの実施にあたっては、安全管理者を置いて、活動中における安全に関して常に十分な配慮をすること。

9.保険の加入
 保険の加入について、今一度確認をしておくこと。

10.安全管理態勢を確立
 以下のよう鞍資料を参考にして、安全管理態勢を確立すること。
  1. ボーイスカウト安全入門
  2. コミッショナーハンドブック
  3. 団の運営と団委員会(第8章:スカウト活動と保・険)
  4. 日本ジャンボリー・ベンチャースカウト大会等の安全管理ハンドブック
  5. 指導者訓練コースにおける安全管理ハンドブック
  6. スカウティツグ誌平成11年6月号「事故に学ぶ」
  7. スカウティング誌平成17年5月号「夏の野外で食べる!〜食品衛生の再確認〜」
  8. 野外活動の安全 Q&A(T・U)
  9. 野外を中心としたスカウト活動における応急手当て
注:
(1)〜(7)日本連盟発行図書・資料
(8)大阪連盟発行図書
(9)奈良県連盟発行図書

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